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高い完成度を誇る中国。韓国とともにグループAを突破。

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西森彰=取材・文・写真

U-16女子アジア選手権 タイ2017はグループAの最終戦が行われ、中国がタイを6-1で降して2勝1分け。ラオスを破って、同じく勝ち点7に伸ばした韓国と共に準決勝に進出した。中国、韓国は、既に2連勝でグループB突破を決めている日本、北朝鮮と、たすきがけで対戦する。

初戦の韓国戦を2-2の引き分けでスタート。続くラオス戦に7-0と大勝し、引き分けでも準決勝進出が決まる立場で、地元・タイとのゲームに臨んだ。育成年代強化にも力を入れるようになってきた中国は、トップにつながる女子のU-19年代では、アジア選手権の開催を続けている。

昨年のリオ五輪予選では、なでしこジャパンを破り、オーストラリアと共に久しぶりの五輪出場を果たしたが、こうした努力が実を結んだ結果と言えなくもない。今大会に臨んだチームは、(正式な選手データの発表はないが)長身の選手が目立っており、将来的に自分たちよりも大きな欧米の選手と伍してやれる体格の持ち主を選んだのかも知れない。

前半6分にコーナーキックからOU YIYAOが得点を奪うと、30分にもコーナーキックから相手ゴール前で生まれた混戦の中にOU YIYAOが潜り込んで2点目を奪った。35分にもライン裏に抜け出した8がGKと交錯したこぼれ球をYANG QIANが決めて3点目。早々に試合を決めたかに見えた。

バックスタンドの一角に陣取った「タイランド、タイランド、ウィー、アー、タイランド!」という声援に後押しされ、タイも健闘を見せた。アップセットの可能性が見えたのが、後半の立ち上がり。早々に訪れたピンチをしのぐと、降り出した雨を味方につけて、攻勢に出る。そして49分、左サイドで仕掛けたPATTARANAN AUPACHAIのチャンスメークから、最後はハーフタイムに投入されたPLOYCHOMPOO SOMNONK が、ニアサイドを破るシュートで1点を返した。

沸き上がるスタジアム。直後にもPLOYCHOMPOO SOMNONK は、ゴール正面で中国DFに競り勝ち、GKと交錯しながらシュートを放った。これが、ポストの脇をかすめるように、わずかに外へはずれたのだが、ここで1点差にしていたら、試合はさらに盛り上がったことだろう。雨が止んだ後、中国の反撃にさらされて2失点。65分過ぎから、強いスコールがピッチを襲うと、スタジアムの期待も高まったが、すぐに6点目を奪われて万事休した。

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タイは、韓国、中国に敗れてグループリーグで姿を消した。「前半は守備的に戦い、後半勝負」というSARAWUT SUKSAWANG監督のゲームプランは妥当だったし、実際、それがハマりかける部分もあった。

また、地の利も活かしていた。多少、強引な物言いをすれば、トータルスコアでは大差をつけられたが、雨の降っていた25分間に限れば1-1。体格で上回る中国を相手にしたハードコンタクトでも、タイはヒケをとらなかった。もちろん、中国の選手に「準決勝以降を考えてもケガだけはしたくない」という気持ちはあったはずだが、濡れたピッチコンディションへの対応力でタイが上回っていたのも事実だ。

男子のワールドカップ予選でも、ホームでは健闘していたタイ。「(アジアのトップレベルに追いつくためには)テクニック、フィジカルをはじめ、いろいろ必要なものがある」とSARAWUT SUKSAWANG監督。スタジアムで最後まで声援を送り続けたサポーターのためにも、アジアの列強入りが待たれる。

勝った中国は、5点差での勝利でグループA1位の座を手にした。「スコアではなく内容が問題。そして、ここから先が重要」とGAO HONG監督は、勝って兜の緒を締めた。

この日の6点の内訳は、コーナーキックから2点、中央突破から2点、そしてサイドを起点に2点。フォーメーションも基本の4-4-2だけではない。時間帯によっては、サイドバックのXU TING 、LI YINGHUAを上げ、両センターバックの間にボランチのSHEN MENGYUが落ちた3バック。選手同士の位置を変えての4-3-3も見せた。付け焼刃というレベルではなく、ほとんどの選手が複数の役割をこなすことができるようだ。

GAO HONG監督は、初戦の韓国戦から、このタイ戦まで3試合連続で同じスターティングメンバーを起用している。連携の良さは、固定メンバーで戦うことで生み出されている。育成年代のチームとしては高い完成度を誇り、準決勝以降で対戦の可能性を残すリトルなでしこにとっても、侮れない相手と言えるだろう。

楠瀬直木監督率いるリトルなでしこ、アジア制覇へ挑む。

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今日、U-16女子選手権の初戦を迎えるリトルなでしこ。タイでも、ウルグアイでもこの笑顔が見たい。

西森彰=文・写真

9月10日(日)にAFC U-16女子選手権が開幕した。楠瀬直木監督率いるU-16日本女子代表=リトルなでしこが、FIFA U-17女子ワールドカップ ウルグアイ大会の出場権、そして、アジアの頂点を目指す。

2世代前のチームが、現・INAC神戸レオネッサの杉田妃和らを擁してU-17女子W杯優勝。1世代前のチームも、浦和レッズレディースの長野風花らを中心にまとまりをみせて決勝に進出、PK戦で負けたものの銀メダルを獲得している。しかも、杉田、長野と2大会連続で日本の選手がU-17女子W杯のMVPに選出。この世代で、日本の活躍は目をみはるものがある。

前回は、先発メンバーを入れ替えながら、「レギュラーなき準優勝」に導いた楠瀬監督。指揮官の目から見て、今回のメンバーはどう映るのだろうか。

「ちょっとおとなしいな。自分たちで『勝ちたいからこうやる』『負けたくないからこうやる』とやってほしいんですが、おとなしいので私たちの指示を待ってしまうところが気になりますね。(声の部分も)物足りない部分があります。自分たちでチャンスを無にしてしまわないように頑張らせなきゃいけない」

育成年代のチームだから結果にこだわり過ぎるのは良くないが、さらに広い世界での戦いを経験するためには、アジア予選は突破しなければならない。チームの仕上がりはどうなっているのか。

「比べていいものかどうかはわかりませんが、アジア予選を迎えるタイミングが前回は10月、今回は9月。その日程差の分だけ、完成度が足りていない気がします。攻撃と守備のバランス、チームとしてやろうというところが、ようやく見えてきたかなと言う感じになったのが、(8月中旬の)キャンプ最終日。前回は、こうなってから、何試合か揉んでいけたんです」


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今回のチームの核となる松田紫野(日テレ・メニーナ)。ビルドアップのカギを握る。


去る、先月22日にアジア予選に臨むメンバーの発表後、最後の国内キャンプを静岡県内で終え、9月5日に日本を出発。開催地のタイで、チーム力アップの作業にとりかかっている。重要な初戦は今日、9月11日(月)、相手はオーストラリアだ。

「初戦がオーストラリア。どこまで力を入れてきているのか情報は少ないが、パワー、スピードはあると思いますので、そこに向けてキャンプをしてきました。具体的な対策というよりも、自分たちの力を発揮していいスタートを切れるようにしていきたいと思います」(楠瀬監督)

高さでオーストラリアと渡り合える、神谷千菜(聖カピタニオ女子高校)の戦線離脱は痛いが、追加招集した岩井蘭(JFAアカデミー福島)を含めたメンバーで、勝ち点3をとってくれると信じたい。

グループリーグはA、Bの4チームずつの構成で上位2チームが準決勝へ進出する。日本と同じグループBに入ったのは、オーストラリア以外に、バングラデシュと北朝鮮だ。バングラデシュは、今年になってから、2回、堺でキャンプを張って、チーム強化に努めてきた。そして、北朝鮮は、前回のチームがアジア予選、本大会で3度対戦し、一度も勝てなかった最大のライバルだ。

「バングラデシュはおそらく、欧州のコーチがスタッフに入っていると思うが、組織的な、いいチームになっている。前線にスピードのある選手もいる。北朝鮮は、正直、今回のチームも強い」(楠瀬監督)

グループリーグを突破すれば、来年開催されるU-17女子W杯ウルグアイ大会への出場権を賭けた戦いが待っている。1日早く開幕したグループAは、韓国、中国、タイ、ラオスの4国が入っているが、初戦を引き分けた韓国、中国が、ラオスを下したタイを最終的には退けてくると予想される。中国は、夏の遠征で対戦し、2対2のスコアで引き分けている。日本戦になるといつも以上に力を発揮する韓国も、もちろん侮れない相手だ。


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2回目のAFC U-16女子アジア選手権に臨む、楠瀬直木監督。


「去年のU-17女子W杯で準優勝。アジアでも準優勝だったので、優勝を目指す。最大の目標は女子W杯へ出場するための3位以内の確保。選手たちを世界大会に連れて行って、その先のU-19、なでしこジャパンと伸ばしていきたい」(楠瀬監督)

苦しいアジア予選を突破し、ロシア行きを決めたハリルホジッチ監督と男子日本代表=SAMURAI BRUEに続いて、楠瀬監督とリトルなでしこの面々も、ウルグアイへの切符を持ち帰ってくれるはずだ。

2017チャレンジリーグの昇格争いはクライマックスを迎える。

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ゴールを狙う源間葉月(十文字10)と、体を張って守る平野麻美(静産磐田24)。

西森彰=文・写真


昨秋の参入決定リーグ戦を勝ち抜き、今季からチャレンジリーグに籍を置くFC十文字VENTUS。初参戦のチャレンジリーグEASTで15戦を戦い、9勝3敗3分け。堂々のトップ通過でチャレンジリーグ1~4位決定戦にコマを進めてきた。

昇格を狙うこのチームにとって不安要素はその開催日程だ。リーグ前半戦の快進撃を支えてきた小林一歩や蔵田あかりら高校生プレーヤーが、この昇格を賭けた戦いと並行して、高校女子サッカー選手権の東京都予選に臨まなければならない。さらに瀧澤千聖は、U-16日本女子代表=リトルなでしこのアジア選手権に招集されている。この試合でも、小林、蔵田ら高校組は、前日の選手権都予選の修徳戦に出場したばかり。ベンチで試合のキックオフを迎えた。

柴山桂監督は、彼女らに頼り過ぎるチームにならないよう、レギュラーシーズン中から選手起用には十分、配慮してきた。15試合で23ゴール(チャレンジリーグEAST3位)と、上向かない得点力にも目をつぶり、チームの核となるべき大学生、社会人選手たちに経験を積ませてきた。

対する静岡産業大学磐田ボニータはチャレンジリーグWESTの所属。近年、昇格争いに絡んできたチームだ。今季序盤は調子が上がらず、下位争いに巻き込まれていた。立ち直りのきっかけとなったのは、6月18日に行われた、チャレンジリーグWESTの第10節、JFAアカデミー福島とのゲームだったという。J1仕様のヤマハスタジアムに1,000名以上の観客を集めた試合で勝利し、「ここからはトーナメント戦と思って戦おう」という指揮官の檄に選手が応える。

これを機にリーグ最終節までの6試合を5勝1分けの無敗でフィニッシュ。NGUラブリッジ名古屋を勝ち点差1で退け、なでしこリーグ2部昇格を賭けた1~4位決定戦に3年連続で進んできた。もちろん、調子は上昇一途を辿っている。村松大介監督も「WESTでは、バニーズ京都SC(静産磐田に勝ち点差10)に独走されちゃいましたから」と言いながら「プレーオフではいつものようにコツンとやってやろうかと」笑みを湛えていた。


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シュートを放つ三輪玲奈。静産磐田にも勝負のカギを握る高校生がいる。

昇格を賭けたグループリーグの重要な初戦は、静産磐田が十文字の良さを消す形で展開。キックオフ直後こそ、慣れない人工芝でのプレーに気をつかって主導権を奪われていたが、時間とともに落ち着きを取り戻していく。

後ろから組み立てようとする十文字のビルドアップを許さず、司令塔・源間葉月から供給されるパスの道筋を寸断しにかかる。さらに、時おり蹴り込まれるロングボールには最終ラインがきっちりと対応。16時キックオフとは言え気温26.7度の中、チーム全体でプレッシャーをかけ続け、ペースを自軍に引き寄せた。

そして31分、相手ゴール前の混戦から、平野麻美が先制ゴールを奪う。さらに33分、河原崎希がコーナーキックを蹴ると、長身の堀江美月がニアで競って、ファーに流れたボールに寺田玲子。セットプレーに合わせて上がってきていた長身CBが追加点を挙げた。狙い通りの展開に持ち込んだ静産磐田は、後半も、蔵田、小林ら高校生組を投入した十文字に自由を許さず、そのまま2対0のスコアで逃げ切った。

ゲームプランに自信を持って走り切る静産磐田の選手たちの顔が印象的だった。

「自信が見えましたか? 今日のゲームについては『やろう』と言ったことが、しっかりとやりきれていた。きっと『自分のやりたいサッカーとは違うな』と感じている選手もいるはずですが、それでも、チームのために、その気持ちを殺してやってくれている。そこがウチの強みです」(村松監督)。

それも、こうして結果が出続けているからだろう。

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寺田玲子の追加点で、自信を深める静産磐田の選手たち。

次節は、磐田スポーツ交流の里ゆめりあ球技場で、バニーズ京都SCとのWEST同士の対戦となる。「ホームで試合ができるのは大きいですね。グループリーグは3試合ありますが、次の試合に勝てば、もうそこで決まるくらいの気持ちで臨みたいと思っています」(村松監督)。狙うは、もちろん、なでしこリーグ2部への自動昇格だ。

もちろん、大和シルフィードを3-2で破って勝ち点3を得ているバニーズも、次のゲームの重要性は認識している。このゲームを観戦していたバニーズの千本哲也監督は「いや、これは手ごわいですね」と静産磐田への警戒を強めている。

「それでも、いつもどおり、落ち着いてバニーズらしくサッカーをできれば、勝てる確率は上げられると思います。監督は頼りないので『攻撃は選手にお任せ』(笑)。守備の声かけだけしっかりしたいと思います」(千本監督)

「次の試合もパスワークの得意な相手ですからね。レギュラーシーズンが2敗1分けなので、(借りを返せるように)楽しみにしています」(村松監督)

大一番になりそうだ。


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