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【なでしこリーグ第18節】取り戻したアンクラススタイル

111122_01.jpg plenusなでしこリーグ第18節
INAC神戸レオネッサvs.福岡J・アンクラス
日時/11月20日(日)13:00
場所/博多の森陸上競技場
結果/福岡1-4INAC


取材・文/中倉一志
写真/日高康智(air studio)

 いつもなら、試合前のミーティングは戦術確認の時間にあてる。だが、河島監督は戦術面に言及せずに、自らの想いを選手たちに伝えた。それは、様々な形で自分たちを支えてくれた人たちへの感謝の気持ちだった。

「最下位が決まっているチームを、ここまでして応援する意味はどこにもない。それなのに今日もサポーターが来てくれている。そして、運営に携わる人たちが、INACとの最終戦に向けて素晴らしい舞台を用意してくれた。今の私には感謝の気持ちしかない。しかも、今シーズンは東日本大震災があり、リーグ戦が開催されるのが危ぶまれたのに、今日、こうして最終節を迎えられたことは本当にありがたいことだし、その舞台でアンクラスの選手たちがプレーしていることは本当に素晴らしいこと。私も、こうして最後までみんなとリーグ戦を戦えたことを感謝している。だから、今日は支えてくれた人たちへの感謝、選手同士のありがとうという気持ちを感じて、それに応えるために力の限りに戦おうという想いを持ってプレーしよう。そうすれば必ずいい試合になる。多くのプレッシャーをパワーに変えて、この舞台で戦って来い」

 7人の世界チャンピオンメンバーに加え、なでしこジャパン、あるいは年代別代表経験者でチームを固めるINAC神戸レオネッサは予想通りの強さだった。自陣へ押し込まれる苦しい時間帯が過ぎて行く。力の差は否めなかった。しかし、この日のアンクラスは全員が戦っていた。ゴール前で体を張り、時には一方的にボールを支配するINACからボールを奪い返す。その中心にいたのは猶本光。AFC U-19女子選手権から帰国後、著しい進化を見せる猶本は、この日もピッチの中央で仲間を鼓舞し、対峙する澤穂希に物おじせずにぶつかっていく。力の差は埋められなかった。シュートは1本も打てず、15分にCKから先制点を許すと、21分、35分にも追加点を奪われた。だが、この日は誰ひとりとして下を向かない。相手を怖がるプレーもない。胸に抱く想いを、ただひたすらにピッチとボールにぶつけ続けた。

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「怖がらずにつなげ」。前半、奪ったボールを大きく蹴り返して簡単に相手に渡していた選手たちへ河島監督の檄が飛ぶ。そして、アンクラスは後半開始のホイッスルとともに前へ出た。そして、ここからは真正面から堂々とぶつかり合う展開に。なでしこジャパンのメンバーを見るためにスタジアムに足を運んだ観客の中からも、アンクラスの頑張りに大きな声援が飛ぶようになる。

 積極的に前へ仕掛けたことで、前半以上に危ない場面も作られた。しかし、集中力を切らさないアンクラスは、GK澤田法味を中心に体を張ってゴールを守る。その姿からは、今シーズン負けのない強豪INACに対して3点差をひっくり返そうとする気持ちが伝わってくる。持っている力を出し切る。最後のホイッスルが鳴るまで絶対にあきらめない。それは、アンクラスが忘れかけていた自分たちのスタイルだった。

 73分。INACは4点目を奪ってアンクラスを突き放す。しかし、アンクラスの態度に変化はない。必死にボールを奪い、必死にゴールを目指す。そして、その思いが結実した。時間はアディショナルタイム。右サイドから平田光が送ったアーリークロスに清原万里江が飛び込んでいく。「ボランチでプレーするようになってからも、あまりシュートを打っていなかったので、今日はチャンスがあれば前へ飛び出していこうと思っていた」(清原)。追いすがるINACのDFを振りきって頭を振る。次の瞬間、どのゴールよりも大きな歓声が博多の森陸上競技場に響き渡った。

 結果は1-4。「フィジカル面、最後の一発を決める力の差が、はっきり出た試合」と河島監督が話した通り、力の差がそのままスコアに表れた。しかし、戦いを終えたアンクラスの選手たちは堂々と胸を張る。胸に抱くのは、仲間とともにすべての力を出し切ったという想い。敗戦という結果と、力不足という現実を受け止めながらも、苦しみ抜いた今シーズンのリーグ戦の最後の試合で、自分たちらしいサッカーを展開した充実感だった。そんな選手を見ながら、河島監督は話した。「真剣勝負が出来たからだと思いますよ。選手1人ひとりが自分の力を出し切って真剣に戦えていたんだと思います」

 自分たちらしさを見失いかけていたチームが、最終節に見せた自分たちのスタイル。なでしこリーグの強豪と伍して戦うために、アンクラスが手に入れなければならないものは山ほどあるが、自分たちの原点を改めて見つめ直せたことは、これからのチームにとって、ひとつのきっかけになったことだろう。しかし、そのきっかけを次につなげるのも、これからの態度次第。まずは全日本女子選手権で変わらぬ戦いを見せることが必要だ。その初戦は12月17日。コカ・コーラウエスト広島スタジアムで行われる。

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