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日テレ、開幕からの連勝は4でストップ

前半、ボールを競り合う長野・坂本(左)と日テレ・田中(左から2人目)
前半、ボールを競り合う長野・坂本(左)と日テレ・田中(左から2人目)

西森彰=文 金子悟=写真


■開始早々のワンパンチが、首位日テレにダメージを与える。

前半5分、先制点を決めて喜ぶ、長野・齊藤(中央)
前半5分、先制点を決めて喜ぶ、長野・齊藤(中央)

開幕から4連勝と今年もなでしこリーグを引っ張る日テレ・ベレーザ。第5節は、多摩陸上競技場にAC長野パルセイロ・レディースを迎えた。AC長野はここまで2勝2敗と五分の星。日テレの連勝が続くかと予想されたが、その雰囲気は、前半5分のゴールで霧散した。

高い位置からボールを奪いに行ったAC長野の守備が、日テレのボール回しを引っ掛け、ゴール前のエース・横山久美に届ける。対応しようと日テレのDFが集まったところに、齊藤あかねが前線に駆け上がった。

「横山がボールを持ったら、必ず、誰かが横を並走する」というチームの約束事を果たそうとする齊藤に、横山がパスを送る。自分のタイミングで打ったシュートはヒットしたわけではなく、勢いも今一つ。しかし、気持ちの乗り移ったボールは、日テレのGK・山下杏也加の手を弾き、ゴールに転がり込んだ。

前線からの連動的な守備で対戦相手を圧殺し、失点ゼロで抑えるというのが、昨年以来、積み上げてきた日テレの勝ちパターン。「内容は今一つだったが、ゼロで抑えてくれたから、後半は何とかなると思った」というのが森栄次監督の口癖だ。その勝利の方程式が、いきなり崩された。開幕戦でも再昇格したばかりのちふれASエルフェン埼玉に先制を許し、思わぬ苦戦を強いられていた日テレ。この失点で選手もナーバスになった。

これまでボールを奪いにくる相手をパス交換で振り回し、フリーの選手を作り出していた日テレだったが、この日は勝手が違った。AC長野の守備は自陣をミッドフィルダーとディフェンダーの4枚×2列でブロックを作り、日テレのアタッカーにスペースを与えない。壁を突破しかけてもキャプテンの坂本理保らがもうひとつの壁になり、シュートを打つことすらままならない。手詰まりになってくると、今度はディフェンシブハーフの國澤志乃らがボールを奪いにくる。

前半、パスを送る、日テレ・籾木(中央)
前半、パスを送る、日テレ・籾木(中央)とマークする、長野・國澤(右)

「早い時間帯に失点してビハインド。点をとりにいかなければいけない展開になってしまいました。苦しくしてしまった原因は、失点だと思います。相手が積極的にボールを獲りにくるわけでもなく、全体でズルズルと下がっていく。それでもゴール前には人がいる。回せるけれど、シュートが打てない。ゴール前のコンビネーションやクロスなど、攻撃パターンを増やさないと」(籾木結花・日テレ)

後半、ボールを競り合う、長野・國澤(左)と日テレ・田中(左から2人目)
後半、ボールを競り合う、長野・國澤(左)と日テレ・田中(左から2人目)

AC長野も國澤がボールを奪った後に効果的な攻撃を繰り出せない。去年のタテに速いサッカーでしみついた癖が出て、選手全員が一斉に前へ駆けだしてしまうのだ。これでは、横にはたいて一度、落ち着かせるといった選択肢がなく、日テレの守備陣もタテ一本に絞りやすい。泊志穂が裏を狙って、ボールを収めるなら横山久美という役割分担だったが、横山にもいつものキレが見られず、岩清水梓に封じられる場面が多かった。

「こういう展開になると予想はしていた。ブロックを作って守ろうという今年のサッカーにはいい練習になった。チーム全体でいい守備ができたし、國澤(志乃)がボールを奪うシーンも多かった。しかし、そこでもう一度ロストしてしまった。それは、もちろん國澤だけの問題ではないのだけれど、これから彼女が代表に残るため、そしてこのチームのためにも、苦しいところで彼女がボールを持てることが重要になっていく」(本田美登里監督・AC長野)

ハーフタイムを迎えて、日テレ0-1AC長野。このまま終わるゲームにはとても思えなかった。


■ともに勝機を逸して、痛み分け。

後半、ドリブルで攻める、日テレ・植木
後半、ドリブルで攻める、日テレ・植木

前半のシュート数はどちらも2本ずつ。ボール保持率からしたら、日テレのシュート数は少なすぎる。チーム全体でボールを動かしていくのが、本来の攻撃スタイル。だが、森栄次監督は、この局面を打開するためには荒療治が必要と判断した。

ハーフタイムに、ベテランの上辻佑実を下げて、10代の植木理子を投入する。「ボールはある程度持っていたけれど、シュートが少なかった。『これはどこか変えなくちゃ、このまま行っちゃうな』と思って、少し早いタイミングでしたが植木を入れました」と森監督。

スピードと高さがある植木は、指揮官が「ひとつのパーツ、ひとつの戦術」と語る、日テレの異分子。最終ライン裏へ飛び出し、ゴールを狙ってくるストライカーの投入で、日テレのシュートが増えてきた。後半のシュート数は全部で8。その半数が植木だ。

守備一辺倒になってしまったAC長野も、積極的なプレーが減りはしたが、日テレに自由なプレーを許さない。五嶋京香や小泉玲奈といった若手が女王を恐れず立ち向かい、そして望月ありさ、木下栞は古巣に一泡吹かせようと粘り強く守った。

「日テレ時代にやっていたセットプレーの練習を思い出したりしながら、プレーしていました。『阪口(夢穂)さんは、ヘディングシュートではコースを狙ってくる。だからギリギリまで飛ばないで我慢する』といったふうに」(望月・AC長野)

それでも日テレは72分、清水梨紗のクロスに植木が高いジャンプからヘディングシュート。この日、再三好セーブを見せてきた望月の牙城を破った。絶対的な個の能力に賭けた森監督の采配があたった。

「1点取って『よしよし』では終わらせてくれないところが、やっぱりベレーザ。前半の選手だけなら特徴にも慣れて守り切れるかなと思っていたら、後半、植木理子が入ってきた。身体能力のある選手。その高い能力に対応できず、入れられてしまった」(本田監督・日テレ)

その後、タイムアップ寸前に息を吹き返したAC長野が前に出て、日テレとノーガードの打ち合いになりかけたが、1-1のスコアは動くことなく、試合終了。同点に追いつかれる前に、AC長野にもPK獲得かというシーンはあったが、日テレの決定機はその数倍あった。どちらにとっても勝ち損ねたゲームであり、負けずに済んだゲームだった。


■産みの苦しみを味わうAC長野。包囲網の影を感じる日テレ。

この日は不発に終わった、長野・横山
この日は不発に終わった、長野・横山

「昨年はサポーターをハラハラドキドキさせましたが、今年はハラハラを少し減らしたい」と語っていたAC長野の本田監督。その戦術改革にはある程度メドが立った。一方でチーム戦術を守るあまり、攻撃時の迫力が落ちている。部外者の目には、それが強豪に伍して戦いながら、昨年度下位のチームにも結果を出せない原因に見える。「押していたジェフ千葉戦でも少ないチャンスでやられていたから、それだけではないと思います」と國澤。今のサッカーへの信頼、手応えだろうか。

同じ疑問を本田監督にぶつけると「そのとおり。ただ、今は、こっちをやろうとするともう一方ができなくなる。対戦相手や試合展開によって、完璧に使い分けができるようになればいいんですけれど」。本当の力を手に入れるための転換期。目の前の結果を追って、急いては事を仕損じるといったところか。


試合終了から時を置かず、多摩陸上競技場に雨粒が降ってきた。「この雨がもう少し早く降ってくれれば」と冗談交じりで口にしたのが日テレの森監督だ。普段、日中に働き、あるいは学校に通う日テレの選手は、夜に集合して練習する。すると、日中の乾燥したボールが転がらない芝でプレーすると、テンポが狂ってしまうのだ。どこも似たような条件だが、コンビネーションに長けているチームほど、そのストロングポイントを出しにくい。

「試合時間の中だけで慣れるというのはやはり難しいですし、ゲームと同じ環境で練習できたらいいのですが、無理を言っても始まりませんから」(籾木)

そうした問題は別にして、女王を取り巻く他チームの抵抗も激しさを増している。前節の浦和レッズレディースは、オールコートに近いプレスをかけてきた。この日のAC長野は、縦深陣地を構築してきた。

「ウチが勝ち続ける中で、他のチームもしっかりと戦術を研究し、対策をとってきている。簡単なゲームはありません」と森監督。「今日に関しては勝てなかったというより、負けなかったことを収穫と捉えるべきだと思います」と籾木。リーグ3連覇への道のりは、周囲が考えるほど、たやすくはない。
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