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浦和、お待たせ、初白星。連戦最終日に伊賀FCを降す。

取材・文/西森彰 写真/金子悟

なでしこリーグ第8節初日が、駒場スタジアムで行われ、伊賀FCくノ一を降した浦和レッズレディースが、今季の公式戦で初勝利を挙げた。この結果、勝った浦和は勝ち点を4としたが、依然として最下位。敗れた伊賀FCも勝ち点8の7位で足踏みとなった。


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ホーム駒場で、浦和はようやく白星を掴んだ

■連戦最終日は、疲労との戦い

この日の浦和は、前節のベガルタ仙台レディース戦とほぼ変わらないメンバー構成。そのベガルタ戦で負傷退場した猶本光のあとを受けた筏井りさがそのまま先発した。前々節から前節にかけてスターティングメンバーが変わったのはGKだけだ。「結果が出ないので、チームに刺激を与えなければいけない」と口にし、実際、新しい選手にチャンスを与えてきた指揮官だが、今回は試合間隔が短すぎた。大幅に選手を入れ替えても、連携をあわせるだけの練習時間がない。

ただ、駒場スタジアムに乗り込んできた伊賀FCも、いっぱいいっぱいの状況は同じ。日テレ・ベレーザと1-2、ベガルタに1-0、そしてAC長野パルセイロレディースに0-0。上位陣との3連戦をイーブンの成績で終え、試合内容も良化の一途を辿っていたが、体力面でのお釣りはほとんど残っていなかった。

「(上位相手の連戦で)コンディションはキツイかなというのはありました。『問題は運動量かな』と。暑さも確かに影響しましたが、相手もそのせいでスタートはゆっくり来た印象がありました。運動量で相手を上回れれば、結果はついてくるなとは思っていました。ここ2戦はホーム。バス移動も含めて、この試合に、多少影響があったかもしれません」(那須麻衣子・伊賀FC)。

第7節を終えて、浦和、伊賀FCともにゴール数は僅かに3。2試合で1点とれないほどの、得点力不足に喘いでいる。どこから切っても、少ないチャンスの中での「1点勝負」だった。



■得点力不足を打開したセットプレー

フィジカル面で問題を抱えながらも、両チームイレブンは「勝ち点3が欲しい」という気持ちを発散させながら、ピッチをよく走った。猶本不在の中、筏井りさ、栗島朱里のダブルボランチは「攻めは筏井、守りは栗島」(吉田監督)が基本的な役割分担だったが、「セカンドボールを拾い、プレスバックもかける。前には行けるほうが行く」(筏井)と互いの作業を補完しながら、好守両面でチームを支えた。

「これまで、チームとしてなかなか攻撃に力をかけることができていなかったので、ボールを奪ったら、ゴール前に抜けて攻撃の枚数を増やせと言われていました。私が前に行くことでサイドの選手が高い位置をとれたり、攻撃参加ができたりということもあるので、タテの揺さぶりというのを続けたかった」(筏井)

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ミッドフィールドで労を惜しまぬプレーが光った筏井りさ

これが、浦和のサイド攻撃を効果的なものとした。「今日は失うものがなかった」という北川ひかると、乗松瑠華の両SBが、高い位置でプレーできるようになる。中でも、北川は、試合開始5分の左クロスで触れば1点というシーンを演出。その後も、再三、効果的な攻め上がりを見せる。守っては、40分、相手のセットプレーから招いたピンチにひとり対応し、事なきを得た。

そして70分、試合を決める1点が生まれる。自ら蹴った左CKが長船加奈から戻され、北川がこの日、何度目かになる決定的クロスをゴール前に送る。GKの鼻先でコースを変えたのがキャプテンの髙畑志帆。軌道を変えたボールはファーサイドのポストに当たり、伊賀FCのゴールに転がり込んだ。「自分自身、久しぶりの得点ですし、こういう形でチームに貢献できたのは嬉しい」と髙畑。

ベガルタ戦後、この伊賀FC戦に向けて、吉田監督はセットプレーに多くの練習時間を割いていた。ここ数試合、相手のセットプレーで失点していた選手たちも、その重要性を再認識し、高い意識を持って取り組んだ。即効性の高い得点力アップの方法。これに取り組んだことが、見事、結果につながった。


■なりふりかまわない守備固めで初白星へ

伊賀FCの金鐘達監督は、失点直後、サラ・ジャクソンを投入して、ローレン・ボハボーイとアメリカ人をふたり前線に並べた。同時にそれまで最前線でチャンスメークしていた杉田亜未をボランチに回し、那須とふたりでボールを拾って、波状攻撃を生み出す。

これに対して浦和の吉田監督は、故障の乗松を諦めて、上背のある臼井理恵を最終ライン中央に投入し、システムを5バックに変更。15分を残して早々に守り切ることを決断する。さらに、残り時間が僅かのところで、キープ力のある後藤三知を入れる。メンツをかなぐり捨てて「勝ち点3獲得」を徹底した。

もちろん、吉田監督の頭には、伊賀FCの得点力不足もあっただろうが、浦和は大幅に負けが込んでいる上に、ここまで無失点試合もゼロ。こうした状況で安全策を選ぶと、かえって大惨事を呼び込むものだ。

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先制ゴールを挙げ、完封にも貢献した髙畑志帆

「自分としても『5バックにする時間帯が早かったかな』という気持ちはありましたが、やるべきことがハッキリしました。最終ラインの5人とGKで、それをしっかり再確認できたし、監督の意図をくみ取ってプレーできたのかなと思います」と髙畑。GKの平尾も「後ろの5人は大きいし、競り負けるとは考えられなかった。抜けてくるボールをしっかり処理しようと」頭を切り替えた。

最終ラインがしっかりと守りながら、途中出場の塩越柚歩が2回のチャンスを作るなど、狙い通りのサッカーで、タイムアップにこぎ着けた浦和。前半はチャントを封印し、好プレーに拍手を送り続けたサポーターと、今季初勝利の喜びを分かち合った。



■遅すぎるスタートだが、レースはまだ中盤

敗れた伊賀FCは、浦和に3倍するシュート9本を放ちながら、ゴールに結びつけることができなかった。

「点はとられましたがシュートは9本。そこで攻撃陣が2点取るくらいのチームになっていかないといけない。相手をゼロに抑えても、得点がとれずに引き分けという試合もありましたし、攻撃陣の得点力不足がいちばん悔しいところ。守備陣があれだけ頑張ってくれているので、悔しさはすごくあります」(杉田)

前節までの失点数5は、日テレと並んでリーグ最少。それでいて、勝ち点が伸び悩んでいる理由は、誰の目にも明らかだ。「今後は、選手間でいくつか攻撃パターンや約束事を作っていくべきなのかもしれません。その時間はあるはずなので」と那須。きっかけひとつで、さらに上を目指せるはずだ。

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ゴールデンウィークも終盤、ようやく手に入れた歓喜

なかなかトンネルを抜け出せなかった浦和が、苦しい連戦の最終日にとびっきりのご褒美を手に入れた。殊勲の髙畑は「初勝利がこんなに遅くなり、申し訳ない。でも、ひとつ勝ててホッとしました。のですが、これまでの戦いには課題がたくさんあります。もう一度、しっかり反省するべきところはしたいと思います」。

髙畑の決勝点をアシストした北川も、強い責任感の持ち主。結果が出なかったこれまでのことも含めて尋ねると、思いをこらえきれずに、目から涙があふれた。

「負け続けていることで、チームのみんなも気持ちが落ちていく。『次があるんだから、そこで頑張らなくっちゃ』とは思うんですが、そうやって6敗していたし……。私は、自分ではメンタルが強いほうだと思っているのですが、本当に『このままじゃ、おかしくなっちゃうんじゃないか』というくらいになっていました。今日勝てたことでスッキリしましたし、チームとしても次につながると思います。必ず、次の試合も勝ちたい」

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北川ひかるの視線は次へ向けられた
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