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前半戦のサバイバルマッチは、コノミヤが浦和を降して、今季初勝利を手に入れる。

取材・文/西森彰

■今季未勝利の2チームが対戦

開幕から1分け2敗の勝ち点1と、思わぬスタートを切った浦和レッズレディース。第4節の対戦相手は、3連敗中のコノミヤ・スペランツァ大阪高槻だ。どちらも、今季昇格したばかりのAC長野パルセイロレディースに敗れるなど、不調の極み。その原因は目指すサッカーを具現化できていないところにある。

浦和は、展開力のあるボランチから両サイドにボールを散らしていこうという狙い。だが、左右に振ろうとすれば距離が開きすぎ、かといってSHが中に絞れば、ボールを失いはしなくても、相手の寄せが間に合ってしまう。前節で負傷したボランチの猶本光がメンバー外になった。猶本の代わりに起用されたのが長野風花。「(バランサーの)栗島(朱里)も考えたが、点をとらなければ勝てないから、攻撃的に行こうと」(吉田靖監督・浦和)右SHの柴田華絵が、猶本の抜けた中央に回った。

前日の試合で、勝ち点1だったジェフユナイテッド千葉レディースが今季初勝利を挙げて、勝ち点を4に伸ばしていた。そのため、この試合に敗れたほうが暫定最下位となる。「ここまで勝利がありませんでしたし、昨日、ジェフが勝っていたので、ここで離されるときつい。『絶対に勝ちに行こう』とみんなで話し合っていました」とコノミヤの成宮唯。

この日の丸山桂里奈はボランチとしてプレーした
この日の丸山桂里奈はボランチとしてプレーした。

本並健治監督は、長くなでしこジャパンのストライカーとして活躍してきた丸山桂里奈を、この日、ボランチで起用した。背水の陣はこちらも同じだ。


■ワンチャンスを活かしたコノミヤが、追い風に乗る

とにかく勝ち点3を目指すチーム同士らしく、序盤からチャンスが生まれる。キックオフから1分も経たないうちに、浦和は、北川ひかるのクロスに後藤三知がヘディングシュート。コノミヤもすかさず巴月優希からボールを託された成宮がシュートを放つ。一瞬肝を冷やした浦和だが、7分、柴田のパスから吉良知夏がシュート。3分後にも加藤千佳のクロスに吉良が頭を合わせる。

「最初のチャンス、柴田の横パスからのシュートは練習でもやっていた形。ボールの置き所がうまくいかなくて決まりませんでしたが、序盤でシュートを打てたことで自分でも流れを掴めた。その後にすぐ、加藤のクロスから決定的なチャンスも作れた。あれを決めなきゃいけない。それに尽きる」(吉良)

コイントスで風上を選び、序盤から押し気味に試合を進める浦和。だが、勝利に近づく先制点を奪えないのはここ2試合と同じ。浦和は高い位置から2トップへのクロスを狙うが、3-4-3で布陣するコノミヤのウイングバックにうまく対応された。「サイドに展開した時に、相手の守備にかかって奪われてしまう場面が何度かあった」と後藤。駒場スタジアムに、嫌なムードが垂れ込めてくる。

連敗中のコノミヤは、3-4-3での戦い方に、磨きをかけてきた。相手のサイドアタックを消す守備だけではない。「システムは守備的に見られがちなんですが、対戦相手にかなり攻められることは想定内。そこでボールを奪ってから、前の3人でどう攻めるか。お互いの距離感の調整や、決め事の確認を、この1週間、繰り返しやってきました」と成宮。ポジションを上下左右に変える3トップに、浦和はマンマーク気味な対応を強いられた。

強烈なヘディングシュートで流れを引き寄せた佐藤楓。堅守で無失点にも貢献
強烈なヘディングシュートで流れを引き寄せた佐藤楓。堅守で無失点にも貢献。

そんな中で得た20分の左コーナーキック。キャプテン・虎尾直美の蹴ったボールは、風に揺すられて絶好のスペースに落ちていく。浦和のDF陣を割るように飛び込んだ佐藤楓が、値千金の先制ヘディングシュートを決めた。「前半は向かい風でしんどかったんですが『とにかく続けろ』と監督、コーチから言われていた。佐藤が前半に1点とったのが大きかった」と丸山。コノミヤの士気は上がった。

「インスイングのボールが風に乗って、嫌な形で落ちた。ああいうところで守り切れないのが今シーズンかなと思います。失点するまではいつもいいんですが点がとれなくて、失点しまうというのが今の悪い流れ。試合全体でも、相手より先にボールに触り、そして個々の所で勝っていかないとチームとしてもよくないと感じました」(高畑志帆・浦和)

前半は、コノミヤが1点のリードで折り返した。


■成宮が獅子奮迅の活躍。2得点で試合を決める

「相手に追加点を与えてしまう前に、1点取って追いつければ勝てる可能性は高まっていた。ハーフタイムにそういう意識を高くして臨んだ」(後藤)浦和だが、今度は、前半にも増して強くなった風に苦しんだ。

「風上の時は裏に抜けるチャンスもありましたが、ピッチが試合開始前の雨でスリッピーになっていて、なかなかボールに追いつけなかった。風下になって、前半みたいなプレーをしていたら、そういうチャンスもできるという話をしていたが、それ以上にボールが前に進まなかった。ピッチの中でやっている印象では、前半みたいに蹴っても風で戻るということがあり、つないで進もうとした」(吉良)

対戦相手がリードを意識してガードを固めれば、浦和も落ち着いて攻めることができただろうが、この日のコノミヤは攻守に積極的だった。「このチームは1点のリードじゃ厳しい。2点取っても逆転されることがあったし、いかに3点目を奪って、相手を精神的に追い込めるか」(成宮)を命題に、イレブンは走り続けた。

経験の浅い浦和の若手が、コノミヤのプレッシャーに負けてしまった。ボールを受けると一刻も早く自分の足下から離そうと、精度を欠いたパスを出しては、それを奪われる。低い位置で何とかボールを奪い返し、コートの中央まで押し返しても、そこからまたコノミヤの逆襲を受ける繰り返し。完全に、悪循環に嵌ってしまった。

そして62分、コノミヤに追加点が生まれる。成宮が、まずは丸山、次いでニュージーランド女子代表のサラ・グレゴリアスと立て続けにワンツー。ゴール前に切り込み、右足でのシュートを決める。勢いに乗った成宮は、71分には左サイドの巴月に預けて、再びゴール前に侵入。リターンを受けると、再び右足で決定的な3点目を挙げた。

大勢を決する3点目を奪った成宮唯(7)をチームメートが称える
大勢を決する3点目を奪った成宮唯(7)をチームメートが称える。

「この1週間話し合っていったことが、試合でうまく嵌ってよかった。得点の場面では、うまくボールがつながってゴールまで良い形でいけた。2点目は、前半から監督にシュートの意識について言われていたので、あそこで打ちました。3点目も狙い通りでした」(成宮)

FW起用に応えた成宮だが、浦和の攻勢時にはペナルティエリア内まで戻って、守備陣を助ける活躍。マン・オブ・ザ・マッチを選ぶなら、この日は文句なしにコノミヤの7番だった。


■勝利こそが自信回復の特効薬だが……

コノミヤに0-3で敗れた浦和には、スタンドのサポーターからも厳しい声が飛んだ。開幕から4試合未勝利で、とうとう最下位に転落。僅かに見えた光明は途中出場の清家貴子、山守杏奈の強引とも思われる突破力だった。

だが、チーム全体に漂う自信の喪失は、それ以上に深刻だ。歯車が狂うと途端に「互いの距離感が遠くなっていく」というセリフを、幾たびも、選手の口から聞かされた。おそらく「これ以上、ミスをしたくない」という意識が、知らず知らずのうちに戦いの場から身を遠ざけさせているのだろう。

「もちろん『先制点をとる』という意識で練習からやっています。それがとれないのが今のチームの現状。そこで悲観的になるのではなく、もう一度、チーム全体で『先制点をとる』というところに向かって行き、守備陣は『それまで失点しない』というところを含めてやっていきたいと思います」(高畑)

現在、選手が置かれているメンタルを考えると、積極的にアクションを起こすサッカーよりも、昨季、苦境を乗り切ったリアクションサッカーで勝ち点を積むことが必要にも思われるが……。

セットプレー時には高畑志帆も攻撃参加した浦和だが、この日もゴールは遠かった
セットプレー時には高畑志帆も攻撃参加した浦和だが、この日もゴールは遠かった。

一方、今季初の白星を手に入れたコノミヤの選手からは、笑顔がこぼれた。

「素直にうれしいです。なかなか勝てない試合が3試合続いていましたが、試合内容は一戦ごとに、どんどん良くなっていました。昨年と比べて手応えも感じていましたし、まずは『失点しない』ということだけに集中していましたし、ある意味で開き直ることもできました」(成宮)

この日2得点の後輩について、丸山は「若いけれど頼もしさがある。よくチーム全体を見ていてくれるし、いろいろ教えていけたらいい」と語る。自身は、この日、ボランチでプレーしたが「相手を見てシステムも変更できたらいいと思う」と言うあたり、「やっぱり、前目でやりたい」という意識が見え隠れする。それでも、掛け値なしの笑顔をふりまくあたり「チームの勝利が最優先」ということなのだろう。

勝利という良薬を手に入れたコノミヤ。未だに特効薬を手に入れられない浦和。ミックスゾーンで見せた対照的な表情は、次の試合を終えてどう変わっているだろうか。
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