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連勝を飾ったなでしこジャパン。“次の次の対戦相手”はまだ見えず。


後半、ドリブルで攻める大儀見

文/西森彰 写真/金子悟


なでしこジャパンのワールドカップ第2戦は、これまで世界大会で勝ち点、得点ともに挙げられていなかったカメルーンが相手。今大会の初戦でエクアドルとのワールドカップ初出場対決を制し、勢いがある。

 攻撃を最優先するカメルーンは4-3-3のシステム。キックオフから殴り合いを挑んできたが、なでしこジャパンは、オープンな打ち合いを受けて立つ。スピードで上回る相手のロングボールにも、必要以上の人数をかけず、最終ラインだけで対処。このあたりは、直前の国内合宿で繰り返していた、男子高校生相手に数的不利を想定した守備練習の賜物だろう。

 そして攻撃では、前回のゲームでベンチスタートに甘んじていた選手が活躍した。右SHで先発した川澄奈穂美のクロスを、やはり左SHで先発していた鮫島彩がきっちりと流し込んで先制した。ゴールの奪い合いを想定して起用されたであろう、ふたりの攻撃的SHが、佐々木則夫監督の先発起用に応えた。

この場面では大儀見優季の動きも目に付いた。ニアサイドでDFふたりを引きつけながら、GKを含めた迎撃態勢を確認すると、ファーの鮫島に仕事を任せた。4年前は自分の存在を認めさせようとするあまり、自分自身のゴールにこだわり過ぎていたが、今や誰が見ても、なでしこジャパンのエース。そんな周囲の信頼を感じているからこそ、すぐに鮫島を祝福に行けた。この気持ちの余裕が心強い。

「常に『自分が決めなければ試合に勝てない』という覚悟は持ってやってきたつもりで、そこにこだわってきたつもりです。ただ、振り返れば4年前は、多少、肩に力が入っていた部分もありました。今大会には平常心で臨めると思います」(大儀見)

 日本はさらに、17分にも第1戦ベンチスタート組が追加点を奪う。宮間あやがショートコーナーを挟んでファーに上げたボールを、かぶったGK越しに菅澤優衣香がヘディングシュートを突き刺し、2点目。打ち合いの展開でリードを広げ、前半を終えた。



 後半、佐々木監督は、ボランチの宮間を左に出した。鮫島が一列後ろに後退し、宇津木瑠美がボランチと時計と反対回りの配置転換だ。そして、海堀あゆみの長所である足技を使って、最終ラインでボールをキープに出た。積極的に前へボールを運ぶのではなく、雌ライオンの鼻づらでボールを動かし、これに食いつこうとする3トップのスプリント能力を奪った。

 トップ下のヌゴベレックをハーフタイムに下げていたカメルーンは、62分にヌゴノマニ、72分にはオンゲヌが交代でピッチを退く。前半から何回も日本ゴールを脅かしていた17番のエンガナムイも、試合終盤には足を攣って痛がるシーンも見受けられた。シュートらしいシュートが一本もなく、酷い数字が並ぶ後半のなでしこジャパンだが、途中までは間違いなく勝利への最短距離を進んでいた。

 暗雲が垂れ込めてきたのは、64分、阪口夢穂が退いてからだ。代わりに入った澤穂希は、相手のボールを奪ったり、得点をあげたりすることに長じた選手。チーム全体でゲームをコントロールしようという場面で使う選手ではない。佐々木監督にすれば、カメルーンの足が止まったところでもう1点奪えば楽に試合を終えられると読んでの交代だったのだろうが、ライオンはまだ闘志を失っていなかった。

 交代で入ったカメルーンの新手、ズーガ、エジャンゲ、ヌシューの3選手は、途中出場選手の鑑とも言うべきパフォーマンスを見せた。一方、カメルーンと十数分の時差を置いて、ようやく日本の選手にも疲れが見え始めた。ボールを奪っても本来、中盤でボールを散らすべき宇津木が、エンガナムイの対応に追われた前半のツケを払わされて、受け手の位置まで顔を出せない。

セカンドボールがカメルーンに奪われ、日本ゴールが脅かされる。カメルーンが幾度もゴールに迫りながら、淡白なミドルシュートで終えることが多かったのは、これも疲労によるものだろう。ヌシューのシュートで1点を返され、アディショナルタイムにはボール一個分だけ左外にズレたエンガナムイのヘディングシュートもあった。薄氷を踏むような思いをしながら、それでもなでしこジャパンはグループリーグ突破を決めるために必要な勝ち点3をその手に入れた。



 この原稿を書いている時点で、6グループ全てが2戦を終えている。16強進出を決めているのは、グループCの日本とグループEのブラジルのみ。グループBのドイツ、ノルウェーも2強2弱の構造で注文通りに引き分け、互いに勝ち抜きが決定的。混戦となっているグループA、D、Fも、既に勝ち点4を稼いで首位に立つ、カナダ、アメリカ、コロンビアが3位国の上位4カ国まで入れたラージグループには入ってくるだろう。

反対に、優勝候補で黄色信号が灯っているのは、やはり死のグループ。グループDのスウェーデンはアメリカ、ナイジェリアと引き分け、未だ勝ち点2。最終戦でオーストラリアに負けたら、ここで敗退決定。コロンビアに敗れたフランスはメキシコから、フランスに敗れたイングランドはコロンビアから、勝ち点を奪えなければ大会を後にする可能性が残る。

3位国の中で足切りの対象になりそうなのが、得失点差で大きくビハインドを背負うグループBのタイ。そしてブラジル以外のコスタリカ(勝ち点2)、スペイン、韓国(どちらも勝ち点1)がドロー地獄に嵌って、勝ち点を伸ばせていないグループEか。タイがドイツ、コスタリカがブラジルから勝ち点を奪い、スペイン、韓国の勝負が決着しない限りは、この形になる。前者の可能性は限りなくゼロに近いが、ブラジルが1位抜けを決めている後者は何かが起こる危険性はある。ベスト16からフランスやイングランドと戦いたいとは思わない。平穏無事な結果に収めてほしいが……。

 グループB、Eの3位が足切りされた場合、規定により、日本の対戦相手はグループAの3位になる。現在、グループAは開催国のカナダがプレッシャーから金縛りにあって勝ち点4。勝ち点3で並ぶオランダはカナダと最終戦を、中国は勝ち点1のニュージーランドと最終戦を戦う。カナダが3位まで落ちるとは考えにくいが、長丁場を考えてグループリーグでピークを作っていなければ、予断を許さない。



 事実上、1位抜けを決定的なものにしている日本にとって、組み合わせ面でできることはない。自分たちの都合で選手をうまくローテーションして大会で慣らし、決勝トーナメントを迎えるだけ。格下のエクアドルから流れの中で得点を奪い、自信をつけると共に、他国へのプレッシャーを積み上げたい。



日本
GK:海堀あゆみ
DF:近賀ゆかり、岩清水梓、熊谷紗希、宇津木瑠美
MF:川澄奈穂美(55分/大野忍)、阪口夢穂(64分/澤穂希)、宮間あや、鮫島彩
FW:菅澤優衣香(85分/上尾野辺めぐみ)、大儀見優季

カメルーン
GK:ヌゴヌドム
DF:チェノ、プージョウ、マニ、ルコ
MF:ヤンゴ、フェウジオ、ヌゴベレック(HT/ズーガ)
FW:エンガナムイ、ヌゴノマニ(62分/ヌシュー)、オンゲヌ(72分/エジャンゲ)
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