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なでしこジャパン、女子ワールドカップ連覇へ白星発進。


試合終了後、相手選手と握手をかわすGK山根

文/西森彰 写真/金子悟

 なでしこジャパンが女子ワールドカップ連覇に向けて、初戦を飾った。グループリーグ最大のライバルへの勝利は、決勝まで西海岸に居座れる1位抜けに向けた大きな一歩。ノックアウトラウンド以降にも影響を与える、大きな勝ち点3だ。



 対戦相手のスイスは、ワールドカップ、オリンピックを通じて初出場の新興勢力。チームの平均年齢は25歳を下回る。2012年、U-20女子ワールドカップでは、U-20日本女子代表=ヤングなでしこに0-4と敗れている。この時、ヤングなでしこのコーチをしていたのが、現在、長野パルセイロレディースを指揮する本田美登里監督だ。当時は、対戦相手国のチームと選手のスカウティング作業をおこなっていた。

 アメリカでプレー歴のある宮間あやからも、この年代の選手の情報を集めていた。その時に「20歳以下かどうかわからないけれど」という前置きで名前が挙がったのが、スイスのラモナ・バッハマンだ。アトランタ・ビート所属時に、ルームシェアをしていたひとりで、「当時の監督からは、ふたりでワンセットのように考えられていました」(宮間)。

「向こうでは『次のマルタ』って呼ばれているらしいですよ」という本田コーチ(当時)の言葉に、こちらも慌ててプロフィールを調べた。何しろ、マルタと言えば、ブラジル女子代表のエースで、毎回、女子バロンドールの決勝に残ってくるプレーヤー。これが出られるかどうかで、状況は全く違う。調査の結果、既に年齢制限を超えており、U-20の大会には出場できないということがわかり、胸をなで下ろした。

 そのバッハマンが、3年経って、今度は逃げ場のないフル代表の対戦相手として出現した。プレーの特徴は「とにかくうまい。なでしこジャパンで言えば、ぶっちー(岩渕真奈)。自分で突破するだけでなく、周りも使える」(宮間)。映像で見たスウェーデン戦でも、ドイツ戦でも確かにその片鱗はあった。さて、どうやってバッハマンを止めるか。そこがスイス戦最大のポイントと言えた。



 他の選手からバッハマンへのパスコースを消す。ボールを持ったら、複数の選手でかかる。なでしこジャパンは、きっちりとバッハマン対策を練り上げていた。さらに前半12分、勝敗を決するプレーが出た。巧みに日本の最終ラインの裏をとったバッハマンがフリーでシュートチャンスを迎える。ここに飛び込んだのが、今大会もっともサイズの大きい選手のひとり、山根恵里奈(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)だった。「スーパーGKプロジェクト」という昭和の匂いを漂わせる日本サッカー協会の大型GK発掘プロジェクト出身。恵まれた体でバッハマンからシュートコースを奪い去る。

 これでバッハマンに、山根への苦手意識が刷り込まれたようだ。前半終了間際の44分、ドリブルからのシュートも枠を外す。後半に入った55分にも、日本のディフェンダーを3人立て続けに交わしながら、山根のところで引っかかる。78分に迎えたシュートチャンスも逸し、極めつけはアディショナルタイムの場面。日本DFのクリアが足下にこぼれる絶好機で、無人のゴールへのシュートを吹かしてしまった。山根を中心としてバッハマンを封じる一方、攻撃では少ないチャンスをモノにした。27分、安藤梢が負傷退場する代償を払いながら得たPKを、宮間がきっちりと沈める。

 結局、この虎の子の1点を守り切ったなでしこジャパンが、グループC事実上の決勝戦を勝ち切った。



 福元美穂、海堀あゆみの両先輩を身長で大きく上回りながら、山根は、なかなかレギュラーを確保できなかった。その理由のひとつが、飛び出しの少なさだ。所属するジェフLでは、それなりに裏のスペースもケアしているのだが、代表ではDFに任せきりになっていた。これには「ある程度までDFに任せる」という約束事もあったようなのだが、クロスへの対応を含めて消極的な印象が目立っていた。

 今季はジェフLの快進撃を支えることで自信をつけた。リーグ戦9試合でわずかに1敗。その最終戦の4失点にしても、守備を完全に崩されてのもので、明らかにGKの責任と言える失点はなかった。その自信を支えに丸亀合宿へ乗り込み、先発したニュージーランド戦でもミスはあったが「とにかくチャレンジしよう」という姿勢が、ディフェンスリーダーの岩清水梓らに「なら、こっちもやってやろう」と意気に感じさせた。

「昔は、自分のミスで失点するとすぐに泣いていた」(佐々木則夫監督)。取り返しのつかないことを気に病むあまり、その後のプレーで二次災害を引き起こしていた。代表に残り続けることで、そうしたメンタルも強化。このスイス戦でも、クロスを一度ファンブルしたが、これを引きずることなく、気持ちを切り替え、次のプレーにつなげた。

 今大会のなでしこジャパンは、丸亀合宿から4-1-4-1、5-4-1にトライしてきたが、その意識が浸透している。後半途中には疲れの見えた澤穂希から、川村優理へ交代。ボールに食いついていく澤よりも、相手の仕掛けを待てる川村のほうがブロックを作っての守備に向いている。同時にシステムはそのままに、籠城戦へ切り替え。山根の存在が相手に強引な放り込みを逡巡させ、ボール保持時間では劣ったが、ペナルティエリア内への侵入は数えるほどしか許さなかった。



 気が付けば、ニュージーランド戦からイタリア戦、そしてスイス戦と3試合連続の「ウノ、ゼロ(1-0)」。なでしこジャパンは、先行逃げ切りの形をしっかりと身につけた。グループリーグの残り2試合は、格下のカメルーン、エクアドルが相手。ここから先は、しっかりと攻撃力も披露してほしい。

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