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J2第37節 福岡vs.群馬レポート


【中倉一志=取材・文・写真】
アビスパ福岡は19日、ホーム・レベルファイブスタジアムでザスパクサツ群馬と対戦。6位以内進出に向けて残された可能性にかける福岡だが、立ち上がりの6分に先制点を献上。その後は、チームの糸が切れてしまったかのようなプレーを繰り返すだけの展開。後半は強引に前に出たものの、単調な攻撃を繰り返すだけで決定機を作ることができなかった。86分に途中出場の坂田大輔が同点ゴールを奪ってドローに持ち込んだものの、チーム状態が最悪であることを改めて露呈した。アビスパ福岡は次節(26日)、アウェイ・栃木グリーンスタジアムで栃木SCと対戦する。

バラバラになってしまったチーム
福岡が深刻な状況にあることが改めて浮き彫りになった試合だった。注意力が散漫で簡単に失点する。クロスやラストパスも含めて、ひとつ、ひとつのプレーの質と精度が低い。プレスが機能しない。本来の運動量が発揮できない。チームのパフォーマンスが低調な理由はいくつも上げられるが、その根底にある理由は、チームとしての共通意識が感じられないというもの。何をするのか、何をしたいのか、という点で共通意識が感じられない以上、チームとして機能するはずもなかった。

そんな福岡とは対照的に、群馬は攻守に渡ってチームとしての狙いが明確だった。コンパクトなゾーンを形成して相手に攻撃の機会を与えず、マイボールは細かくつなぎながら前へ出る。そして、両サイドを起点にして、ダニエル・ロビーニョ、小林竜樹、平繁龍一らがゴールを狙う。もちろん、群馬に課題がなかったわけではない。それは、シュートに持ち込む回数が少なすぎるというもの。ほぼ1試合を通して狙い通りの戦い方をしながらも、前半は2本、後半は6本と、福岡と同数のシュートしか打てていない。

シュート数が同数であったことを見れば、1-1のドローという結果は妥当なものとも言えるが、チームの意思統一、チームの成熟度という点においては、両チームの間には大きな差があったことは否定できない。得意満面な表情で記者会見に臨んだ秋葉忠宏監督と、うつむき加減で静かに試合を振り返ったマリヤン・プシュニク監督。その違いは、互いの間にある順位差によるものでも、互いが背負っているものの違いでもなく、それぞれが表現したサッカーの質の違いによるものだった。

何を最優先にしてきたのか
様々な壁にぶつかりながらも、その都度、自分たちを見つめ直し、「高い位置からプレッシャーをかけアグレッシブに戦う」という自分たちのサッカーを表現することで、目の前の壁を乗り越えてきたのが今年の福岡。ピッチの上の結果はもちろん、様々な問題と直面しながらも、常に自分自身と向き合い、何をすべきかを自分の問題として捉えてきたチームは、決して強いチームでも、上手いチームでもなかったが、どこかに芯の強さのようなものを持っていた。そして、それが今シーズンの福岡を支えていた。

しかし、今の福岡からは、その姿は全く想像できない。勝てないことでバランスを欠き、やがては統一感をなくしていくチームを見たことがないわけではない。むしろ、意思や目標が希薄なチームが、勝てないことで簡単に崩れていく姿は何度も目にしてきた。だが、「6位以内に入る」という強い意志で様々なものを乗り越えてきたチームが、目の前にチャンスが転がっている状況の中でバラバラになっていくとは想像ができなかった。統一感を失った今のチームに、かつて感じられた芯の強さはない。

チームが置かれている環境に様々な問題があること。チーム編成上に問題があること。さらにいえば、クラブがチームに対して何を求めているのかも明らかにされていないこと。そういう状況の中で戦うのは簡単ではない。しかし、それらはシーズン前から分かっていたこと。そして、それらを跳ね返してプレーオフに進出するという強い意思で戦ってきたのが今年の福岡だったはず。選手1人、1人には様々な想いがあるだろう。しかし、自分たちが何を最優先にしてきたのか、それをもう一度思い出してほしいと思う。

坂田大輔のプレーが伝えること
「ゆっくりと調整するということも考えられたが、チーム状況が良くない中で、長い時間は無理でも、やれないことはないと監督には伝えた。使うか使わないかは監督が決めること。けれど、駒のひとつとして数えられる準備はしてきた」。群馬戦を前に、坂田大輔は話していた。復帰は監督との話し合いで決めたこと。しかし、その決断の裏には、チーム状況を何とかしたい、自分のプレーで何かを伝えたいという、坂田大輔の強い意志があったことは想像に難くない。

そして群馬戦では、15分という当初の予定を超えて29分間プレー。痛みが残る中、誰よりも走ることで試合の流れを変えた。そして86分の同点ゴール。何としてでもゴールを取るという気持ちで投げだした足が、福岡に貴重な勝点をもたらした。上手くいかない理由など数え出したらいくらでもある。そもそも、すべてが思い通りに行くことなどない。その中で、自分たちは何のために戦っているのか。それを伝えるゴールであり、勝点であり、そのための29分間だった。その想いがチームに届いていることを願っている。


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