INSIDE WEB

 

ピッチの向こう側 その10


【中倉一志=文・写真】
席種割とサービスの重要性 その2
メインスタンドで最も深刻なのは「アビスパシート」の取り扱いだ。現在は、ひとつの席種として販売されているが、かつては年間シートとして取り扱われ、食事・飲食のサービスが付いていたことから類推すれば、元々はプレミアシート的な要素で販売されていたものだったのだろう。メインスタンドSS指定席が4100円(前売り3600円)であるのに比べ、5700円(前売り5200円)という値段は、単に「真中の席だから」という理由だけでは説明がつかないように個人的には思う。

こうしたプレミアシートは各クラブにも存在する。多くの場合は専門の案内係がおり、飲食のサービスが付随しているもので、スタジアムによっては入場口が分かれているところもある。また、軽食と飲み物のサービスを提供する部屋につながる入口が用意されており、そこへ自由に出入りして飲食を楽しめるスタジアムを見たこともある。単なるサッカー観戦だけではなく、その席種だからこその特別感を提供している。他の席種と比較して、法人格の購入者が多いのも特長のひとつだろう。

私見ではあるが、現在のアビスパシートは、その存在を見直す時期にあるのではないかと思う。様々な商売があるように、必ずしもプレミア感が必要なわけではない。庶民的な値段で、多くの人たちにサッカーを楽しんでもらうという考え方も選択肢のひとつ。サービスを最低限に抑え、その代り値段も見直し、多くの人たちにアビスパシートで観戦してもらってもいい。アビスパシートだけで見れば収入は減ずることになるかも知れないが、SS指定席、あるいはS自由席から席種を変更する人が増えれば、全体の収入はアップする。

あるいは、富裕層を対象にして徹底したサービスを提供することも選択肢のひとつだ。その場合は料金を上げてもいいのではないか。不景気とはいえ、どんな時でも富裕層は存在し、付加価値に対して料金を支払うことを惜しまない人たちはいる。むしろ、その席種に座れるのだという、ある意味の優越感のようなものを提供することによって、アビスパシートがプレミアシートたる価値を持つことになり、それがアビスパシートの存在を肯定する理由にもなる。

また、プレミアシートは法人格での購入者が多く、この場合、取引先や従業員、あるいは友人・知人を招待することも多い。そうしてスタジアムに足を運んだ人たちが特別感を味わうことは、購入者である法人に対して好印象を与えることにつながり、それはサッカー観戦とは別の意味での付加価値になる。あるいは、購入者を対象にした異業種交流会のようなものを開催し、それぞれの企業にPRの場所を与え、事業に有効な情報交換の場所を提供することも試みとしては面白いように思う。

当然、チケット営業の形も変わってくるだろう。「スタジアムで一番いい席」というコンセプトではなく、そこに付随する様々な付加価値をトータルとして売り出すことで、新たな客層の獲得や、新たな展開が生まれてくる。不景気と呼ばれる時代ではあるが、そこに最高の付加価値があれば、十分に利用者が確保できることは、JR九州が提供する「ななつ星in九州」が爆発的な人気を誇っていることからも証明されている。付加価値を考えずに値段だけを気にするのであれば、アビスパシートが埋まることはあり得ないように思う。
<その3に続く>


Comments

Body

12345678910111213141516171819202122232425262728293031 10