INSIDE WEB

 

今だからこそJリーグを考える

140719_02.jpg
【中倉一志=取材・文・写真】
最近、Jリーグの原点を改めて考える機会が多い。
Jリーグに所属するクラブがプロサッカークラブである以上、より高い技術、戦術を用い、スポーツエンターテイメントとして、より質の高いものを提供する努力をしなければいけないことは当たり前のことであり、そこに関わる私たちが、チームがより強くなることを望み、勝利という結果を強く求めることは当然のことだ。また、スポーツは夢と感動を与えると言われるが、それは勝利を求めてあらゆる努力を重ね、より高い場所を目指し、すべての力を注いで戦う結果として生まれてくるもの。その姿勢を無くしたスポーツが夢と感動を呼ぶわけはない。

一方、町にサッカー(スポーツ)があれば、プレーする機会も増えていく。そして、観るだけではなく、プレーすることでも我々は様々な物を手に入れることができる。競技者としてプレーする者、趣味の一環としてプレーする者を問わず、技術の向上は人々に達成感を与えてくれる。仲間と一緒に汗を流すのは、この上なく心地よく、体を動かすことの楽しさに加え、プレーを通して生まれる責任感、連帯感、信頼感も教えてくれる。そして何より、年齢差、性別、社会的な地位等々、日常生活の中にある目に見えない壁を簡単に取り去り、あらゆる人たちの心をひとつにしてくれる。

もちろん、プレーすることだけがすべてではない。サッカーに関わることで新たな人たちと出会い、意見を交わし合う機会も増えていく。サッカーというスポーツには正解がないと言われるように「なんでもあり」がサッカーの魅力のひとつ。そこでは様々な意見が飛び交う。誰が正しいわけでも、誰が間違っているわけでもない。ひとつの意見が、違う意見を呼び、そしてまた新たな意見が生まれる。あっという間に過ぎ去る時間。けれど、話が尽きることはない。

そして、そこでは新たなコミュニケーションの場所が生まれる。集まってくるのは、学校に通い始めたばかりの子どもから、既に会社をリタイヤした人まで実に幅広いが、誰もそんなことは気にしない。必要なものは年齢でも、名前でも、地位でもない。お互いが1人の人間として認め合い、リスペクトしあう。その中で、子どもは大人になっていき、大人は子どもを、仲間を愛おしむ心を養なっていく。そしてサッカーは、サッカーがなかったら出会うことさえなかったであろう人たちの心をひとつにしていく。

また、地域の文化や風習を色濃く映し出すサッカーは、単なるスポーツの枠を超えた存在でもある。この町で生まれ、この町で育った人たちにとって、この町のサッカークラブは、自分たちの生まれ故郷そのもの。その名を叫び、そのチームを応援することで、自分が生まれた町、そして育った町を強く意識する。もはや、町のサッカークラブは応援するだけのものではなく自分自身だ。そして、クラブや、サッカーを通して知り合った仲間たちから勇気をもらい、支え合い、それは生きる力にさえなっていく。

それらはスポーツが本来持っている力。けれど、スポーツが体育という名に置き換えられ、軍事教練の一環として学校教育を通して広く国民に伝えられた日本では、いつの間にかスポーツは運動能力が高い限られた人だけのものになり、そして、苦しく厳しい鍛錬に耐え忍ぶことこそが素晴らしいとされてきた。その日本におけるスポーツを本来の姿に戻し、そして広く地域住民のものとして取り戻そう。それがJリーグが生まれることになった原点。それがJリーグの言う「スポーツ文化の振興」だ。

そして、私たちの町にはJリーグがある。掲げる2本の柱は「サッカーの国際競技力の向上」と「スポーツ文化の振興」。それを両輪にして活動していくことを理念としている。その存在はサッカーに関わる人たちだけではなく、この町を元気で幸せな町にする力をも持っている。そのクラブが自分の町にある喜びと、それを担う誇りと責任とは何か。アビスパ福岡が、この町に生まれて20年を迎える今年だからこそ、改めて原点を見つめる必要を感じている。


Comments

Body

123456789101112131415161718192021222324252627282930 09