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兆しから変化へ

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【中倉一志=取材・文・写真】
サッカーとはつくづく面白いものだ。自分たちのサッカーが思うように表現できない。戦い方に波があり、前後半で別のチームになっしまったかのような試合を繰り返す。それがリーグ序盤戦の福岡の課題だった。そんな中で、マリヤン・プシュニク監督が施したのは、最終ラインを4枚から3枚にすること。ただそれだけでチームは劇的に変わった。3バックで戦った試合は4勝2分1敗。4バックで戦った時の成績は5勝3分5敗。その差は歴然としている。

戦い方そのものを変えたわけではない。ベースとなるのは豊富な運動量とハードワーク。すべては高い位置からのプレッシングで始まり、ボールを奪うと「守」から「攻」に素早く切り替えてシンプルにゴールを目指す。ロングボールを多用せず、グラウンダーのパスをつなぐことが基本で、サイドアタックを中心にして得点を狙う。最終ラインを高く保って陣形をコンパクトにすることも、両サイドを高い位置に押し上げてることも同じ。あらゆることが、プシュニク監督就任以来、何も変わっていない。

しかし、最終ラインを3枚にするだけで、いままではまらなかった高い位置からのプレスが面白いように機能するようになり、弱点だったアンカーの両脇と、高い位置取りをする両サイドバックの背後のスペースをカバーできるようになった。では、なぜ、それほどまでにチームが変わったのか。その理由を中原秀人は次のように話している。
「3バックにしてやり方を変えたから良くなったということではない。変わったのは、個々の役割が明確になったということで、チームとしてやることは何も変わっていない。今まで積み重ねてきたものが、3バックに変えたことでマッチしたということ」

縦100メートル、横64メートルのフィールドを11人で守り、そして攻めるサッカーでは、いくら個人技に優れていても、11人の連携なくしては何も始まらない。それぞれが自己の役割を確実にこなし、それが点ではなく線として繋がることで、はじめてチームが成り立つ。逆に言えば、どこかに小さな綻びがあれば、チームは持てるポテンシャルを発揮することはなく、小さなズレは水面の波紋のように大きくなっていき、やがてチーム全体に影響を及ぼすことになる。

福岡の変化は、何か新しいものを導入したことで生まれたものではない。今まで持っていなかった能力を身につけたことで生まれたものでもない。小さな綻びを繕うことで全員の役割がつながり、本来持っているポテンシャルを余すことなく発揮できるようになったことで生まれたものだ。そして、それを可能にしたのは、プシュニク監督就任以来、ぶれることなく追い求めてきたチームスタイルと、それを可能にするための継続的なトレーニングにあることは間違いないだろう。

福岡が見せてきた変化の兆しは、いま変化に変わり、進むべき方向が明確に見えてきた。あとは、どんなことがあっても自分たちを見失わずに突き進むだけだ。「この6か月間で学んだことをしっかりと心に刻まなければならない」(プシュニク監督)。それが福岡のさらなる変化を生む原動力になっていく。


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