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京都戦の勝利が意味するもの


【中倉一志=取材・文・写真】
福岡市内の最高気温は20度。穏やかな空気が雁の巣球技場を包みこむ。けれど、それは何も気候だけの影響ではない。京都戦の勝利がチームに落ち着きを与えているのは間違いない。いつもなら、大きな声で選手たちに檄を飛ばすマリヤン・プシュニク監督も、穏やかな表情でトレーニングに臨む選手たちの姿を見つめている。決して緊張感が緩んでいるわけではない。リラックスした空気と緊張感が程良く混じった空気。チームの状態が良くなっていることを窺わせる。

アビスパを取材するようになってから16年目、雁の巣球技場に毎日通うようになってから11年目を迎えるが、勝負の世界に身を置く者にとっては、何よりも結果が大事なのだなと改めて実感する。もちろん、9カ月に渡って繰り広げられるリーグ戦のすべてに勝利できるわけではない。どんなチームでも勝つ時もあれば、敗れる時もある。しかし、チームをいい状態に保つには結果が必要。どんなにいい内容の試合を続けても、結果が出なければ自信にはならない。「勝点3は最大の良薬」とは、けだし名言だ。

ただ、雁の巣球技場の雰囲気が変わったのは、単に強豪相手に勝利したという理由だけではないだろう。試合後のミックスゾーンで、あるいは、それ以降の練習で、選手たちがそれぞれ口にしているように、京都戦は、自分たちの現状と正面から向き合い、細部に渡ってどのようにすればいいのかを話し合い、何をすべきかを整理して、徹底して意思統一を図って臨んだ1戦。「自分たちが共通意識を持って戦えば、いい試合ができると感じた試合」。試合後のミックスゾーンで発した城後寿の言葉は非常に意味深い。

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 金森のコンディションも上がってきた
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 作戦ボードを見ながら話し合う
サッカーを知っている者なら、あるいは団体競技をしている者、さらに言えば組織として仕事をしているサラリーマンにでも、共通意識を持つことが大事だというのは当り前のことかも知れない。しかし、知っていることと理解することは違う。理解することと実行することも別の問題。そして彼らは、京都戦へ向けての準備、京都戦でのパフォーマンス、そして京都戦での結果を通して、その言葉を昇華させた。「頭の中を変えるのは簡単なことではない」とはプシュニク監督が口癖のように使う言葉だが、京都戦は彼らの心の中に変化を与える試合になった。

物事は一歩ずつ。この勝利ですべてが解決したわけではない。しかし、戦いながら、少しずつ、少しずつ、変化を遂げて来た選手たちは、またひとつ、次に向けての変化を手に入れたことは間違いない。そして、J1昇格争いとは、技術、戦術だけを争っているのではなく、サッカーの捉え方、サッカーに対する考え方、勝負に対する姿勢を争うもの。それは「勝者のメンタリティ」を手に入れる戦いでもある。そういう意味で、京都戦は今までとは違う一歩を踏み出した試合になった。その一歩が、どのような次なる変化をもたらすのか。簡単にいかないことは分かっているが、チームとともに歩くことが、また、楽しくなってきた。


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