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アビスパ福岡シーズンプレビュー No.3

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【中倉一志=取材・文・写真】
いよいよ明日、J2の2014シーズンが始まる。今シーズン中に創立20周年を迎えるアビスパ福岡にとっては、次の20年に向けてのスタートの年。あらゆる意味で、J1昇格を具体的な目標として口にするにふさわしいクラブになるための第一歩を踏み出すことになる。そのために求められているのは、現在置かれている状況から目をそらさず、自分たちの力を正確に捉え、目指すものとの差を把握し、その差を埋めるために100%の努力を積み重ねていくこと。その繰り返しの中で、クラブとチームは力を付けていく。

その基準となるのはJ1昇格。まずは、そこを目指してクラブも、チームも進んで行く。最初から勝たなくていい勝負など存在しない。最初から「この程度でいい」と思えば、そこに辿り着くことさえも出来ない。様々な条件が不足していたとしても、それを補い、解決する手段を常に追い求めること。それ以外にクラブとチームが成長する道はない。「我々がJ1昇格を口にするのは現実的ではない。しかし、我々に野心がないわけではない」。プシュニク監督が口にする言葉はそういうことだ。

注目したい森村昂太のプレー
そのシーズンを戦うメンバーのうち、先発に名を連ねるであろう選手たちには、個性豊かなメンバーが揃う。そして、プシュニク体制の下で2年目を迎える選手たちは、自分たちがチームをリードしようという意識が高く、新たに加わった選手たちも、プシュニク監督が求めるサッカーを積極的に取り入れようとしている。開幕前のトレーニングマッチでは、思うような結果を得ることはできなかったが、コミュニケーションの深まりとともに完成度は高まっていくだろう。

そんな中で注目したいのは、ギラヴァンツ北九州から完全移籍で新たなメンバーに加わった森村昂太だ。キャンプイン当初は「今までのサッカー観と根本から違う」と話していながら、驚くほどの早さでアビスパ福岡のスタイルに馴染んで行ったのは、既に紹介した通り。おそらく、サッカーIQの高さはチームでも1、2を争う。加えて、森村にとっての新しいサッカーに取り組む中で、慣れるだけではなく、自身のプレーの幅も広げつつある。はたして、公式戦で何を見せ、どのように変わっていくのか。1年を通して注目したい選手だ。

そして、昨シーズンから在籍している選手では、城後寿、石津大介、中原秀人の3人の関係性に注目したい。「去年からいた自分と城後さん、そして(中原)秀人で、試合の時も、練習の時も、すごく気を使って、ずっとコミュニケーションを取っている」と話すのは石津大介。トレーニングマッチでも、日々の練習でも、3人のうち誰かがボールを持てば、他の2人が必ず反応し、そして、ボールを持った者も、必ず残りの2人を見る。そして互いに呼吸を合わせたプレーから、チャンスを作り出すことも多くなっている。その関係性の高まりが、チームに結果に大きな影響を及ぼすことは言うまでもない。3人が、個として、どこまでの高まりを見せるのかも大いに注目すべき点ではあるが、その関係性の深まりは、チームの力をひとつも、ふたつも上へ押し上げることになるはずだ。

リザーブ選手のプレーが成績を左右する
その一方で、「正当な競争ができていない」というプシュニク監督の言葉通り、ここまでで最大の課題は、リザーブ選手と先発組との間にある歴然とした力の差だろう。怪我で出遅れた選手はもとより、コンディション的に問題がない選手でも、先発メンバーの立場を危うくさせるような選手は数名しかしない。練習を見る限り、それを理由に先発組のモチベーションが緩んでいるようには全く見えないが、サッカーはレギュラーの11人、あるいはベンチ入りメンバーを含めた18人だけで戦うものではない。全員が高い意識で、常に競争状態にあることが、チームとして結果を出すためには欠かせない。

そういう意味では、今シーズンの成績は、リザーブ組が何をするかによって決まると言っても過言ではない。先日、選手層が薄い中ではプシュニク監督の采配が注目されると書いたが、それだけでは限度がある。豊富な運動量と、アグレッシブな戦いをベースにするサッカーの中では、交代で入る選手が、先発組と遜色ないプレーをしなければ成り立たない。試合に出ないから責任を負わないのではなく、試合に絡めないことが、チームに所属する選手としての責任を果たせていないのだということを理解する必要がある。ポジションを取る、あるいはポジション争いを演じることは、自身だけの問題ではなく、チーム全体の問題でもある。求められているのは意識の変革だ。

さて、3月2日、42試合に渡る激しい戦いの幕が切って落とされる。アビスパ福岡にとっては決して簡単なシーズンではない。しかし、それにチャレンジして、自ら道を切り開くのがプロとしての姿勢だ。「シーズン前、昇格候補には挙げられていなかったが、それを自分の手で覆すことが出来るのもプロの醍醐味」。これは2010年にJ1昇格を果たした時の、ある選手の言葉。現状を変えるのは他の誰かではなく、自分自身。それを表現してくれるシーズンになることを願っている。

(終)


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