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アビスパ福岡 2014シーズン総括 その6

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【中倉一志=取材・文・写真】
プシュニク監督との2年間
様々な事を考えさせられた日々。傍らで取材を続けていた自分にとって、マリヤン・プシュニク監督と過ごした2年間は、そんなイメージを伴って思い出される。何事に関しても自分の意見を真正面からぶつけてくるプシュニク監督との毎日は非常に刺激的で、その問いかけに対して、自分は何をすべきなのかを、いつも考えさせられていたように思う。そして、この2年間を整理することがメディアとしての仕事なのだと思う。それは、プシュニク監督と交わした最後の約束でもある。

成績という点で言えば、その数字が表わしているように、結果をアビスパにもたらすことはできなかった。それはプシュニク監督本人も認識していることであり、今シーズン限りでチームを去ることを決断した理由のひとつになっている。また、今シーズンの最後の2か月を見ると、選手個々に対する影響は別にして、彼が残そうとしたものが、チームとして残ったのかという点については、疑心暗鬼にならざるを得ない部分もある。最終的な成績と試合内容に限って物を言うのであれば、プシュニク監督を評価しないという意見を私は否定しない。

しかしながら「プロは結果がすべて」と言われる中で、2年連続で下位に低迷しながら、これほどまでにファン、サポーターから愛され、別れを惜しまれた監督を私は知らない。そこには、アビスパが、経営上で最も困難を極めた2年間にチームの指揮を執ってくれたことや、経営上の問題を抱えるクラブが、監督としての力を発揮できる環境を十分に整備することができない中で、チーム再建に心血を注いでくれたことに対する感謝の気持ちがあったことは間違いない。

そして、プシュニク監督の最大の功績は、プロサッカークラブとは何かということを、ファン、サポーター、そして福岡の人たちに発信し続け、それを自らの行動で示し続けたことにある。初来日から1週間後、プシュニク監督は私の取材ノートに氷山の絵を描いた(「プシュニク監督が伝えたかったこと」参照)。チームに所属する選手は水面上に出ている氷山の一角。水面下に隠れているのは、クラブフロント、クラブ職員、ファン、サポーター、メディア、そしてアビスパに関わる様々な人たち。チームが大きくなるためには、水面下の部分が大きくならないといけないし、選手たちには多くの人たちから支えられている責任を持ってプレーしなければならないと説いた。

プロサッカークラブと、それに関わる人たちは、ひとつのファミリー。それぞれに、それぞれの責任と役割があり、それぞれが責任と役割を果たすことでクラブは大きくなっていく。それを2年間に渡って説き続けた。そして大事なことは相手をリスペクトする気持ちと信頼関係。それを自らの行動で示し続けた。単なるサービスとしてファン、サポーターと近かったわけではない。そうした理念と行動があったからこそ、近い関係が生まれ、多くのファン、サポーターからの支持を受けた。そして、最終戦終了後のセレモニーではスタンドに大きなダンマクが掲げられた。「Thank you God Father MARIJAN」。それが、彼と過ごした2年間のすべてを表していた。

選手たちに対して、プロとは何かを徹底して説き続けたことと併せて、プシュニク監督が発信し続けたことは、プロサッカークラブとしての原点。プシュニク監督は改めてそれを福岡と、アビスパに関わる人たちに示したと言える。そして、昨年、契約を更新した際に「私はいつかクラブを去る時が来る。だからこそ、自分が築いたものがクラブに残り続ける仕事がしたい」と話していたプシュニク監督。それを現実のものにするために、この2年間を単なる思い出にせず、この別れを感傷的なものせず、彼が残した精神を、アビスパとアビスパに関わる人たちが、将来に向けてつないでいかなければならない。

※このレポートは、有料WEBマガジンfootball fukuokaに掲載されたものを転載したものです。前後の記事はfootball fukuokaでお楽しみください。


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