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オープンマインドが支えるプレー

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【中倉一志=取材・文・写真】
アビスパの取材を始めたのが1999年。あれから15年が経つが、今だに初対面の選手に声をかけるのは緊張する。いい加減に慣れろと心の中で呟く自分がいるが、こればかりはどうにもならない。そんな私でも、中には、初対面の緊張感を感じずに話せる選手もいる。武田英二郎もその1人。第一印象は、オープンマインドでクレバーな選手。その思考が私の緊張感を取り除いてくれたのだと思う。

本来のポジションは左SB。「元々は安全につないで組み立てるタイプ」と自らのプレースタイルを話していたが、宮崎キャンプで見せたのは、高い位置取りからガムシャラに前へ仕掛ける姿勢。これでもかとばかりにサイドを駆け上がって、積極的に攻撃に絡んだ。「安全につなぐことは監督は求めていない。無理にでも前へ行こうとしている」とは当時の武田の言葉。「自分はあまり深く考えないタイプ。やれと言われたことをやっているだけ」とも話していたが、まずは、言われたことを先入観なしに受け入れ、求められていることを整理し、それをプレーに反映できる力こそ、武田の最大の能力なのかも知れない。

それは複数のポジションをこなすことにもつながっている。福岡では、すっかりボランチとしてのプレーが定着したが、実は、鳥取に所属していた2013シーズン後半に、ボランチの位置に入ったのがサッカー人生で初めての経験。だが、そこで新しい自分を発見する。「自分の中ですごく楽しくて、自分の新しい可能性に気づけた1年だった。鳥取には感謝している」。そして、福岡に移籍してきてからも、ポジションにこだわらずに柔軟な姿勢で準備を重ねた。「ポジションをひとつに決めずに柔軟にやっていきたい。まずは試合に出ることが今の自分には大事だし、それを求めてマリノスから出てきた。監督に求められることを表現したい」。その想いは1シーズンを通して感をることはなかった。

そして、第4節磐田戦で今シーズン初出場。プシュニク監督から与えられたポジションは3ボランチ気味の左サイドだった。福岡は高い位置からのプレスがはまらず、5分、19分と立て続けに失点を喫する苦しい立ち上がり。しかし、ここから福岡は反撃に転じる。その中心にいたのが武田。中盤を激しく動き回って磐田にプレッシャーをかけ続け、セカンドボールを拾い、そしてボールを味方につなげた。さらに持ち味である左足の正確なキックも披露。30分にはCKから、イ グァンソンのゴールをアシスト。2-3と1点のビハインドで迎えた82分には、ゴール前で得たFKを直接ゴールにつなげた。以降、ボランチの位置に定着。シーズン前、中盤の層の薄さが懸念され、中原秀人の相方を見つけきれなかった福岡だが、武田の活躍がそれを埋めた。

終盤はチーム事情で左サイドでプレーする機会も増えたが、ほぼ1年を通してボランチでプレーしたことで成長を実感する1年だったと振り返る。だが、J1昇格を逃した悔しさは強い。そして、自身が絶対に譲れないと言っていた目標にも届かなかったことへの悔しさが募る。それは、去年の成績を上回るということ。「自分が入って順位が落ちたとか、弱くなったと言われるのが一番嫌。絶対に去年を超えたい」。これは、武田がシーズン中に何度も口にした言葉だが、残念ながら、チームは昨年の勝点を下回った。

だからこそ、最終戦にかける想いは強い。
「最終戦の熊本に勝てば、最大で11位(昨年は14位)まで上がれる。チームにとっては、非常に重要な試合であることに変わりはない。まずは勝利を目指して戦う」
サイドでプレーするのか。それともボランチでプレーするのか。それはプシュニク監督の采配に委ねられている。しかし、どちらでプレーするにしても、監督に求められた役割を全うすることに変わらない。それが武田英二郎のスタイルだ。


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