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なでしこリーグはいよいよ佳境に。


エキサイティングシリーズ上位リーグ第4節、試合終了後、湯郷に勝利しサポーターに挨拶する、浦和イレブン

文/西森彰  写真/金子悟

 なでしこリーグのエキサイティングシリーズは、アジア大会による中断期間を挟み、上位リーグが10試合の半分にあたる5試合、下位リーグは6試合中、三分の二にあたる4試合を消化した。
 
 ベガルタ仙台レディース、ASエルフェン埼玉、伊賀FCくノ一、吉備国際大学Charmeが残留を競った下位リーグは決着が早かった。「こうやって下位リーグに行くことへ悔しい気持ちはありますが、今年は7位で終えることを考えてやりたいと思います」と語っていた千葉泰伸監督のベガルタが4つ白星を重ねるいっぽう、最下位でレギュラーシリーズを終えていた吉備国大が4連敗。エキサイティングシリーズに入ってからも、立て直しのきっかけをつかめないまま降格が決定した。

 入替戦行きも伊賀に決まった。伊賀にとって痛恨のゲームとなったのが、下位リーグ初戦のAS埼玉戦。レギュラーシリーズでは4得点で連勝していた埼玉から先制点を奪う。ところが、理想的な展開から追いつかれ、ロスタイムに決勝ゴールを許した。許したシュートは僅かに4本だが、その中に伊藤香菜子と薊理絵のスーパーボレーが含まれていた。大一番で運に見放されたとしか言いようがない。AS埼玉、伊賀FCともに、下位リーグではもったいないような内容のサッカーを見せている。


AS埼玉で指揮を執る、松田監督

「伊賀FCもそうですが、どの対戦相手もしっかりとしたサッカーをしています。上位リーグに残れなかったからと言って、成長できる場がないというわけじゃありません。来年に向けての成長ではなく、今年の話。まだ、皇后杯も残っているじゃないですか」(松田岳夫監督・AS埼玉)。

「(『サッカーの内容がいいと言われているが』)私自身、やっているサッカーの方向性には自負もありますが、それはAS埼玉も含めて、下位リーグを戦っているどのチームも同じだと思います。ただ、サッカーの世界では試合結果や順位が強さをあらわしていると思うんです。上のチームと比べた時に、どこかで弱い部分や、欠けている部分があるから、下位リーグにいるんだと思います」(伊賀FC・浅野監督)


成績不振により辞任した、I神戸・前田監督

 勝てなかったと言えば、上位リーグで4連覇を目指したINAC神戸レオネッサも同じ。「監督には、ふたつ負けたらその時点で終わりと言われています」(澤穂希)と背水の陣で臨んだが、5試合を終えて1勝3敗1分け。エキサイティングシリーズ突入時の勝ち点差も響いて、次節にも優勝の可能性が消える。自分たちのペースに巻き込んできたチームの、相手に合わせるサッカーへのスタイルチェンジ。急過ぎた世代交代の失敗。そしてクラブ全体に漂っていた過信……。週半ばで辞任した前田浩二監督に敗戦の責はあるが、今季のI神戸には、それ以外にもたくさんのクエスチョンマークがあった。


エキサイティングシリーズで復調を見せる、日テレ

 結局、年間チャンピオンの座を占めるのは、レギュラーシリーズで覇権を争った3チームに絞られそうだ。日テレ・ベレーザは、今日行われる首位・浦和レッズレディースとのゲームに全てを賭ける。レギュラーシリーズでは、結果的にロスタイムのPK献上で優勝を逃した形になったが、尻上がりに調子を上げてきていた。それを考えると、エキサイティングシリーズでの2勝2敗1分けという成績には、やや意外な感もある。最大の要因は勝負所での決定力不足。ゴール数の多かったレギュラーシリーズでも上位相手の10試合では、被完封試合が5試合と半分を占めていた。試合を決めてしまえば、相手をもてあそぶように大量得点を奪う力はあるだけに、ゲーム序盤でいかに優勢を作り上げられるかだろう。


エキサイティングシリーズ上位リーグ第4節、中盤でボールを競り合う、湯郷・宮間(左)と浦和・柴田

 1位で抜けてきた岡山湯郷Belleも、対戦相手に研究され、苦戦が続いている。選手を固定して戦ってきたため、他チームに比べて上積みが乏しい。「(他と比べた選手層の差は)感じています。レギュラーシリーズでも接戦が続き、うまく若手を試すような場を作れなかったのが、響いているかなと」(種田佳織監督・湯郷ベル)。それでも選手は「時間はかかるかもしれませんが、日ごろの練習でひとつずつ積み上げていける部分、成長していける部分はあると思います」(高橋佐智江)。GK福元美穂が長くボールキープしてプレー時間を短くするなど、細かな工夫は健在。浦和との首位攻防戦には敗れたが疲労を最小限に抑え、中二日で臨んだI神戸戦の勝ち点3につなげている。


エキサイティングシリーズ上位リーグ第4節、途中出場ながら2ゴールを決めた、浦和・清家(右)

 悲劇的な3位転落でエキサイティングシリーズを迎えていた浦和だが、完全に復調した。「ジェフL戦にしてもそうですし、湯郷ベル戦でも、後から出てきた選手がいい働きをしてくれています。90分の試合で最後に試合を決めるという場面では、どの選手も疲れています。そこで、ああやってフレッシュな選手が動いてくれるのは本当に助かります」(猶本光・浦和)。ジェフL戦では大滝麻未、湯郷ベル戦ではこれまで控えに回ることの多かった和田奈央子が同点ゴールを挙げ、清家貴子が試合を決めた。「与えられた責任を結果につなげられました。ミーティングで監督が『途中から出た選手が試合を決める』と言っているので、それも大きいと思います」(和田・浦和)。終盤を迎えて、この選手層の厚みは大きなアドバンテージだ。

 ジェフユナイテッド市原・千葉レディースは3勝1敗1分けで浦和に続く好成績。「エキサイティングシリーズでは6位ではなく、優勝を目指したい」と強きに宣言していたキャプテン・櫻本尚子以下、絶好調・菅澤優衣香を活かして躍進中だ。レギュラーシリーズで負ったビハインドは大きいが、優勝戦線をかき乱す存在になりそうだ。また、アルビレックス新潟レディースは得点力不足で勝ち星から遠ざかっているが、ティファニー・マッカーティーが加入。「勝ち点3をとれなくはないゲームが続いている。ここから先はいい内容のゲームでどれだけ勝ち点3につなげられるか。悪い内容のゲームでどれだけ勝ち点を拾えるか。そして、ゴールをつなげられるかです」と能仲太司監督。昨年同様、皇后杯では楽しみな存在になりそうだ。


エキサイティングシリーズ優勝を手にするのは、どのチームか…。

 既に開幕から20戦以上を消化し、どのチームも完成度が上がってきた。試合内容もそれに比例して、濃厚になっている。ここから先、各チームがリーグの最終順位と皇后杯に向けて、どのような戦いを演じるか。それを、見守っていきたい。
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