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大波乱の最終節。栄冠は浦和レッズレディースから、岡山湯郷Belleのもとに。(3)


レギュラーシリーズ最終節、試合終了後、I神戸に敗れピッチに倒れ込んだ浦和・高畑を抱え起こす、同・猶本(左奥)

文/西森彰  写真/金子悟

 不運が重なった最終戦はひとまずおいて、浦和がタイトルを逸した最大の原因はどこにあったのだろうか。やはり、1試合平均2点を挙げていた前半戦から、ゴール欠乏症に陥った終盤の失速に触れないわけにはいかない。

「後半戦に入って、対戦相手が自分たちへの対策をしてきて、それを超えられなかったのが自分たちの実力不足。失点は去年に比べてかなり減ってきましたし、切り替えの速さもチームとして定まってきました。あとはボールをとった後にどうやって点をとっていくか。そこにチャレンジしていきたいと思います」(高畑志帆)

「去年よりも運動量が増えて、積極的な守備と動き出しの速さとやることがハッキリして、スタートできました。後半は、相手チームに研究されているのもありますが、そんな中でも訪れるチャンスで決められなかったこと。1点入れば試合運びも変わりますし、逆に決められないとこうなってしまう。『点がとれていないから、点がとれない』というのもあると思います」(加藤)

 ケガ人が出て先発メンバーが変わっていく中で生じる、ホンの小さな誤差も大きな意味を持ってきた。加藤が、それを一番強く感じたのは「ピッチ内の距離感」だった。

「周囲から『後半、勢いが落ちた』と言われましたが、ただ勢いが落ちたわけではありません。選手同士の距離感が良ければいい試合ができるのですが、後半、互いの距離が遠く感じてしまう局面が増えてきました。ケガ人が出て、それまでと人が代わればそれぞれの特徴も変わり、それに新しく合わせていく必要がありますから、それが影響したかもしれません」(加藤)

 チャレンジャーとして「ガンガン行こう! 引くことなくやっていこう!」と、前向きに戦った18戦を、浦和は3位で終えた。


レギュラーシリーズ第5節、日テレに競り勝ちサポーターの声援に応える湯郷の選手たち

 こうしてレギュラーシリーズ優勝の栄誉は、湯郷ベルのもとに転がり込んだ。もちろん、種田佳織監督以下チーム関係者は、優勝の可能性が残っていることを認識していたが、それほど高いものとは思っていなかった。浦和とI神戸の試合もチーム全員で観戦するどころか、ちりぢりばらばらの状態だったという。

 優勝へのターニングポイントを尋ねても「いつもの年なら『あそこでこうしていれば』『あれが大きかった』というのがいくつか出てくるのですが、今年はそういうのがあまりないんです。確かに日テレ(0-4)、浦和(1-4)のあたりは本当に苦しかったのですが、優勝のカギになった場面を問われると……。うーん……」(種田監督)。

 スタンドから見ているものとしては、第2節で喫した千葉戦の大敗が、ひとつの大きなきっかけだったように思う。前半途中で喫した4失点の屈辱をバネに「サッカー選手として最低限必要な闘争心」(福元美穂)が、チームに宿った。試合のたびに種田監督が「まだまだですから、あまりほめないでくださいよ」と釘を刺した守備は、上位リーグ進出6チーム中最多の25失点。それでもDF総入れ替えに近い中で「よく25点に抑えた」感は強い。

 このチームの場合、どうしても宮間あやのキックに注目は集まるが、それが全てではない。チームのベースは、質を重んじる練習だ。スローインひとつとっても、約束事と違う動きがあると、プレーを止めてもう一度確認する。万事がそれの繰り返し。徹底して課題を追求し、漠然とした問題を抱えたままゲームに臨まない。メンバーの半数が新加入、復帰選手でも、こうした突貫工事を続ければ、チームは短期間で(ひとまずのレベルまでは)完成する。

「日々のトレーニングの中で選手たちが常に高みを目指し、時にはぶつかり合いながら、同じ方向性を向いて戦ってくれた。新しく加入した選手についても、浅野(未希)、葛間(理代)、細川(元代)らが短い期間でフィットしてくれたし、一度は引退していた高橋(佐智江)もこうして頑張ってくれた。選手全員がそれぞれできることをやってくれた。本当に、チームのため、献身的に戦ってくれたと思います」(種田監督)


指揮を執る湯郷・種田監督

 今季もホームゲーム9試合で観客動員数が平均2,000人をキープする湯郷ベル。ブームが一段落してもなお「日本で一番平均年齢が高いサポーター」(野村雅之監督・作陽高校)の声援は絶えない。一夜明けた岡山県北の温泉町は、チームがもたらした「初めての日本一」で、大変な騒ぎになっていることだろう。
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