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大波乱の最終節。栄冠は浦和レッズレディースから、岡山湯郷Belleのもとに。(2)


レギュラーシリーズ最終節、前半、前線に駆け上がる浦和・猶本

文/西森彰  写真/金子悟

 8月17日(日)17時2分、浦和駒場スタジアムで優勝チームを決める戦いが始まった。浦和はこれまでどおりの4-4-2。対戦相手に応じて布陣を変える今季のI神戸は、4-2-3-1を選択した。浦和は左SBに臼井理恵、I神戸もトップ下に増矢理花、左SHに仲田歩夢と、開幕戦で好プレーを見せた選手が先発に入っていた。

 前半から、試合を支配したのはホームの浦和だった。吉田靖監督から「こういう機会はなかなかない。楽しんでやれ!」と送り出された選手たちは、引き分けでも優勝という好条件に甘んじなかった。I神戸のボールホルダーに前からプレッシャーをかけて、ペースを自分たちに引き込む。チーム全体としても、優勝のプレッシャーや緊張を感じさせない、いい出足に見えた。

「前半は攻守の切り替えが早く、前で奪えていた。仙台戦でシュートを外してしまい、そこで決めていればという部分があったので、自分でゴールを奪うという気持ちでやりました」(猶本光)


 だが、好事魔多し。開幕戦でもI神戸からゴールを奪っていた加藤千佳が、ボールの奪い合いから足を痛めてピッチの外へ。しばらく様子を見守ったメディカルスタッフから「×」が出された。

「最初、立ち上がった時は『軽い捻挫かな』と思ったんですが、そこから歩き始めたら痺れて、地面に着けるのも痛い状態でした。そんなことは今までに一度もなかったので『これは酷いケガだ』と……。でも、その後で足を冷やしていたら、どんどん痛みが引いてきて。チームメートに本当に申し訳ない」(加藤)

 優勝を争うゲームをひとり足りない状態で戦うには、タイムリミットがある。交代そのものは極めて妥当。大滝麻未がトップに入り、後藤三知が左に回った。それでも浦和の優位は動かず、前半終了時のシュート数は浦和9本、I神戸2本。レギュラーシリーズ制覇へ向けて、浦和は残り45分までたどり着いた。


レギュラーシリーズ最終節、後半7分、先制点を喜ぶI神戸・増矢(左から3人目)

 後半も、イニシアティブを握っているように見えた浦和だが、I神戸の一発を浴びる。「チームから得点源として期待を寄せられているのは感じています」という中島依美のFKが、これ以上ない弾道でゴール前に送られ、一度は弾き返した浦和守備陣だったが、これがI神戸のルーキーにこぼれた。「前に人がいなかったので、ゴールに流し込もうと」増矢がこぼれ球を右足で叩く。後半、I神戸のシュートは、この1本だけ。しかし、これが浦和のゴールネットを揺らした。

 失点の直後、浦和の吉田監督は、吉良知夏に代えて、ここ7試合8得点の半分を奪っているスーパーサブ・清家貴子を送り出す。そうして追撃態勢を作りかけたところで、岸川奈津希が接触プレーで起き上がれず、負傷退場。浦和は1枚目のカードに続き、3枚目のカードも強制的に切らされてしまう。齊藤あかねを右SHに入れて、柴田華絵をトップ下、猶本をアンカーと中盤をダイヤモンドに組み換え、最後の努力を試みた。

「前半のうちに点が入っていたら……。後半はリードを許した後、引いた相手に対してゴールを奪うのは難しかったです。(今後の課題も)得点をとれる選手、チームになる。それだけかなと思います」(猶本)


レギュラーシリーズ最終節、後半、ボールを競り合うI神戸・中島(左)と浦和・後藤

 前節、AS狭山を相手にあっけなく土俵を割ったのが嘘のような粘り腰を使うI神戸の牙城を、どうしても崩せない。結局、試合は0-1で終了。開幕戦で強烈に出鼻をくじいた相手に、これ以上ないリベンジを許してしまった。

「ホームで勝つのが一番大切なことで、このところ、そこで勝っていないことに関しては責任を感じています。ただ、選手たちが手を抜いているかといえば、決してそんなことはありません。全力を尽くしているのですが、まだまだ力が足りず、恩返しができないのは本当に申し訳なく思います」(吉田監督)


 このゲームでは、いくつか難しい判定もあったが、その話題を振られても、浦和の監督、選手からはいっさい不満、批判というものが出なかった。それは戦士としてのプライドだろう。

「私自身はレフェリーの判定に従いますし、何の不満もありません。たくさん試合をしていけばレフェリーに助けられることもありますし、近くで見ていたわけではないので、微妙な判定だったのかもわかりません。近くで見ている人の判断に従うのがルールですから」(吉田監督)

「サッカーはレフェリーの方と相手チームがあってできるものなので、そこに関しては選手として何も言えません。それ以上に、ゴールを引き寄せるプレーができなかったのが今の自分であり、チームであったと思います」(後藤)

 一方で、クラブは、なでしこリーグへの意見書提出を発表した。試合結果が覆ることを期待しているわけではない。それでも、チーム関係者の口に出せない想いや、最後まで優勝を信じて声援を送ったサポーターの気持ちを消化するため、これも必要な手続きだと思う。

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