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国立を目前に散った履正社。四中工粘りの4強入り

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第92回 全国高校サッカー選手権大会 準々決勝
日時/2014年1月5日(日)14:10 kick off
会場/浦和駒場
結果/履正社 1-1(前半0-0、後半1-1)、PK5-6 四日市中央工
得点者/[履正社]石川玲(62分)、[四中工]後藤凌太(80+2分)

3回戦で北の名門、青森山田を退けた履正社。その試合では、大阪や関西の公式戦で見ることの少ない「赤」のユニフォームを身に着けての勝利だった。それだけに、験(げん)を担ぎ、かつ対戦相手四中工の「白」に配慮したかのように、この日も履正社は「赤」を纏(まと)って登場した。

履正社・平野直樹監督は奇しくも四中工OB。母校との対戦であり、先輩である四中工・樋口士郎監督との対戦でもある。平野監督自身は高校時代に選手権に出場し、準決勝まで勝ち進んだのだが、その年は決勝のみが国立開催で、準決勝は駒沢競技場開催だったという不運な経験をもつだけに、ことさら「国立」へのこだわりの気持ちは強い。

1回戦から勝ち上がってきた両チーム。四中工のここまでは3-2矢板中央、2-0帝京第三、1-0桐光学園。履正社の方は2-0秋田商、1-0徳島市立、1-1・PK5-4青森山田。1日休養したとはいうものの、ともに6日間での4試合目。心身両面で疲労は相当なはずだが、今日は「国立」という大きな目標が手を伸ばせば届くところにある試合。その思いが最後の最後にドラマティックな展開を生むことになる。

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試合は、履正社が序盤からペースを握る。石川玲、多田将希のドイスボランチが、丁寧なパスを両サイドへ、トップの瀧本高志へと展開した。しかし、四中工は坂圭祐を中心とするDF陣が集中を切らさない対応でチャンスを作らせない。

履正社最初のチャンスは8分のFKから石川のシュート。さらに12分には高い位置で奪い、MF川畑隼人と石川のコンビプレーから、川畑がGKの位置を見極めてコースを狙ったシュートを放つが、ボールスピードが足らず四中工GK高田勝至がファインセーブ。15分にも左サイドからMF牧野寛太が深い切り返しのドリブルで進みシュートするが、四中工DFが立ちはだかる。

その後、やや盛り返した四中工だが、ボールポゼッションで上回る履正社が36分、39分と左クロスからのチャンスを作るがシュートで終われず、前半はスコアレスのままで終了。 公式記録の前半シュート数は履正社2、四中工はゼロ。四中工はチャンスそのものが少なく、履正社はシュートを四中工DFに粘り強くブロックされた印象が残った。

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後半立ち上がりは、やはり履正社が押し気味。4分、左CKからMF林大地のヘッドはワク外。9分にも左CKから林が頭で折り返し川畑がシュートするが、これも大きく左へ飛んだ。

ようやく四中工がチャンスを、それも特大のチャンスを作ったのは10分だった。中盤からスルスルとドリブルで進んだ小林颯。井手川純が巧みな動きで空けたスペースに持ち込み右足シュート。履正社GK安川魁がなんとか弾くと、交代したばかりのMF服部雄斗がこぼれダマを見逃さずシュート。GK安川がわずかに触れたボールは、クロスバーを痛打しゴールラインを割った。

得点にはならなかったが、この場面を機に四中工はスムーズなパス&ムーブを見せ始め、主導権を奪いにかかる。そして14分には、井手川が抜け出してシュートするが、ワクをとらえられない。押され気味になった履正社は54分、田中駿太を投入しボランチに、川畑をトップへ、石川をトップ下へと中盤、前線の組み合わせをより攻撃的にシフトさせる。

さらに履正社は22分にもトップへ菅原大空を送り込む。すると、これが奏功する。左タッチから小川明がロングスロー。入ったばかりでファーストタッチの菅原がバックヘッド気味にゴール前に送ると、ワンバウンドしたボールへカバーに入ったDF坂が間に合わず、石川がうまくコントロールし左足ループで右スミに蹴り込んだ。3回戦同様、小川のロングスローが得点を呼びこんだのだ。

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先制された四中工はもう攻めるしかなくなった。26分、右CKから交代で入っていた服部雅斗がフリーヘッド。しかし、ゴールラインギリギリで履正社・多田がクリアする。さらに押し込む四中工、耐える履正社、という展開が続き、34分のFKをDF大辻竜也が蹴ると、前に出た履正社GK安川がこぼすが、近くに四中工の選手はおらずクリアされる。37分の左からのクロスにも誰も合わせられない。

守備に追われた履正社だったが40分、牧野にビッグチャンス。しかし、確実に決めようとしたのか、GK高田をかわそうとしてストップされてしまう。その直後の四中工は右CKも活かせず、万事休したと思われた。

しかし、やはりタイムアップまで何が起こるかわからないのがサッカーだ。アディショナルタイムに入り、ハーフラインを越えた左サイドからのFK。履正社・平野監督は「何か起こりそうな予感」があったという。大辻のキックに、守る履正社も、攻める四中工も、誰も触れられず、ワンバウンドしGK安川がキャッチ・・・したかに思えたがこれをファンブル。あわてて押さえようとするが、猛然と突っ込んできたDF後藤凌太が身体もろとも押し込んでしまう。平野監督は「(ファンブルは)安川のミスではない。起こりえる事だった」とかばった。あと数分、数秒で国立行きが決まるという、そんな状況下で冷静に普段どおりのプレーをすることはとても難しいことなのだろう。四中工の諦めない気持ちを後藤が体現した同点ゴール。国立行きはPK戦決着に持ち込まれた。

先に蹴った履正社の3、4番手を連続して止めた四中工GK高田。一方、履正社・安川も四中工の4、5番手を止めて、3-3のタイに持ちこむ。そして結局、履正社は8番手が高田に止められ、国立へのキップは四中工が手にした。

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3本PKを止めた四中工・高田も見事だが、自分のミスで手中から勝利がこぼれ落ちた直後のPK戦で、気持ちを切替えた履正社・安川を讃えたい。劣勢の2-3となり、これを決められると敗戦決定となる状況に追い込まれながら、自分を見失うこともなく、やるべきことをやりきった気持ちの強さには驚かされた。

試合内容で上回りながらも、涙を呑んだ履正社。「四中工なんだから、簡単に勝たせてくれるはずがない」と平野監督は悔しさを押し殺しながら、母校が積み重ねてきた伝統の力をかみしめているようだった。

笑顔がはじけた四中工・樋口監督は、「四中工はPK戦で負けたことがない」と言って選手を送り出したという。しかし、実際には過去PK負けの試合もあったが、そんな言葉が四中工の選手の心の支えになったことは間違いない。PK戦に運、不運はつきものなのだが、ここでも「伝統」が四中工に味方をしたということなのだろう。

試合後のミックスゾーンに、樋口監督を称え、平野両監督を慰める人物がいた。四中工サッカーを築き上げ、強豪に押し上げた元監督、城雄士氏だった。「1-1からPK戦になると予想していたんですよ」と笑顔で自らの予想的中を語りながらも、目は赤く涙がにじんでいた。氏にとって、目の前で教え子が見せてくれた激戦は、指導者冥利に尽きる幸せを感じた試合だったに違いない。

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