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横浜FM、苦しみながらも92年以来の元日決勝へ

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貞永晃二=取材・文・写真
第93回 天皇杯全日本サッカー選手権大会 準決勝
日時/2013年12月29日(日)13:06 キックオフ
会場/日産スタジアム
結果/横浜F・マリノス 2-0 (前半0-0、後半2-0) サガン鳥栖
得点者/【横浜FM】兵藤慎剛(86分)、中村俊輔(90+4分)

 J1クラブが2回戦に登場した9月上旬からおよそ4ヵ月。サッカー日本一を決める大会、天皇杯は横浜FM、鳥栖、広島、FC東京という4強が勝ち残った。日産スタジアムでの準決勝では、その中の横浜FMとサガン鳥栖が対戦した。

 横浜FMはJ1優勝を最終節で取り逃がしてしまっていた。それだけに、失意のどん底から這い上がり、今季最後のタイトルにかける気持ちは強い。一方、鳥栖は今季前半戦の不振が嘘だったかのように、終盤戦では昨年の大躍進時を髣髴とさせる勢いを取り戻し、九州のJクラブとしては初の決勝進出に挑む。

 スタメンを見ると、横浜FM側では出場停止の右SB小林祐三に代わって奈良輪雄太が入っただけ、それ以外の21人はともに準々決勝のメンバーがそのままピッチに登場した。

 序盤は前線から激しいプレスで横浜FMのパスワークを阻もうとする鳥栖がペースを握ったが、ボールを奪取しても、攻撃へとスイッチが切り替わるタイミングでのパスミスが多発し、DFライン背後のスペースを狙うロングフィードも精度を欠いていた。鳥栖の尹晶煥監督は、「力が入りすぎていた」と語ったが、タイトル奪取への渇望感から過緊張状態になってしまっていたようだ。

 一方、中村を必ず経由させるビルドアップから虎視眈々とチャンスをうかがう横浜FMも、鳥栖の守備ブロックをこじ開けられず、シュートを打てない時間が続く。それでも18分の奈良輪のシュートから横浜FMがボールを支配する時間が増えていく。齋藤学、中村俊輔が連続して鳥栖ゴールを襲った。しかし、何度かあったFKのチャンスは中村らしくないキックでチャンスにはつながらないまま、前半が終了した。

 後半開始から、横浜FMは右足首を痛めた栗原がファビオに代わる。そして、前半以上に横浜FMがポゼッションで上回るが、両サイドの局地戦からなかなか抜け出せず、決定的な場面を作るまでには至らない。時折鳥栖が繰り出すカウンターも迫力を欠く。そして、残り20分となって交代で右サイドに水沼宏太が入るが、攻め込む回数こそ増えたがチャンスには結びつかない。

 ジリジリする展開が続き、スタジアムには延長戦突入なのか、という空気が漂い始めた86分、横浜FMが鮮やかな展開から鳥栖ゴールをこじ開け先制する。左サイドの齋藤が逆サイドへ振る。受けた奈良輪がゴールエリア近くに位置取りした藤田祥史に速いボールを当てると、その落としを兵藤慎剛がダイレクトで左足シュート。鳥栖GK林彰洋が精一杯長い手を伸ばしたが届かなかった。歓喜の横浜FMの選手たちがトリコロールのサポーターの元へと走り寄る。

 残り時間も少ない中、選手交代で同点を狙う鳥栖だったが、経験豊かな横浜FMの選手たちは、鳥栖の焦る気持ち利用して、巧みなボール回しで時間を使っていく。しかし、ただ逃げ切ろうとするのではないところが、今季の横浜FMの強さなのだろう。アディショナルタイムに入り、富澤清太郎のパスを中央右寄りで受けた中村俊輔がドリブルでゴールへ向かう。DF菊地直哉と正対しながらも、タイミングを外すように左足を振った。ここでも再びGK林には止めるすべはなく、ボールは左ポストをヒットしゴール内へ転がりこんだ。この場面の直前にはボールキープの中心となっていた中村だったが、チャンスと見るや、隠していた牙を剥いた。試合を決着させる美しいゴールで試合はタイムアップの笛を聞いた。

 鳥栖の夢、九州勢の大願は決勝を前についえた。尹晶煥監督も、「実力が顕著に出てしまった」と完敗を認めた。トータルシュート数がわずか4本ではやはり勝利を呼び込むのは難しい。得点源であるエース豊田陽平が中澤佑二とのマッチアップに抑え込まれたことが響いた印象だ。しかし、リーグ終盤戦からの鳥栖の快進撃は、一昨年巻き起こした鳥栖旋風の再現を来季に期待させるものだったことは間違いない。

 苦しみながらも結果を出した横浜FM。決勝進出は前身の日産自動車が読売クラブを降して優勝を果たした第72回大会(1992年度)以来のこととなった。樋口監督は当時を懐かしみながらも、ファン、サポーター、チームOBたちを決勝の舞台、国立へ連れて行ける喜びを素直に口にした。

 横浜FMが元日に相まみえる相手はJ1リーグ戦で逆転で優勝を奪われた広島に決まった。今どのチームよりも倒したい相手であることは明らかで、モチベーションが最高レベルだろう。しかし、この日1-0でリードしていたアディショナルタイム、ホイッスル後にシュートした藤田祥史が遅延行為で警告を受け決勝は出場停止。チームを離れたマルキーニョスの穴を埋めてきた彼の欠場は痛いが、こんなときほど問われるのが本当のチーム力だ。Jリーグ開幕前に「天皇杯の日産」と呼ばれたチームが再び頂点を極めるか注目したい。

【横浜F・マリノス】
 GK:榎本哲也
DF:栗原勇蔵(HT/ファビオ)、ドゥトラ、中澤佑二、奈良輪雄太
MF:兵藤慎剛、中町公祐、齋藤学(90+1分/小椋祥平)、中村俊輔、富澤清太郎
FW:藤田祥史(90+4分/端戸仁)

【サガン鳥栖】
 GK:林彰洋
 DF:磯崎敬太、坂井達弥(90+1分/岡田翔平)、丹羽竜平、菊地直哉
 MF:金民友(82分/金井貢史)、藤田直之、早坂良太、高橋義希
 FW:豊田陽平、池田圭(71分/水沼宏太)


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