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新潟L、奮戦及ばず。勝負強さを発揮し、I神戸、4連覇&4冠を達成

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西森彰=取材・文 金子悟=写真
日時/12月23日(月・祝)15:01キックオフ
会場/NACK5スタジアム大宮
結果/INAC神戸レオネッサ 2-2(前半0-1、後半1-0、延長前半1-0、延長後半0-1、PK4-3) アルビレックス新潟レディース
得点者/【新潟L】マッカーティー(42分、111分)、【I神戸】近賀(65分)、チ(93分)

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 大会4連覇と2013年度4冠制覇のかかるINAC神戸レオネッサ。そして2年ぶりにタイトルへ手をかけたアルビレックス新潟レディース。この2チームが、第35回皇后杯全日本女子サッカー選手権優勝を目指す。

 12月21日(土)の準決勝から中1日で迎える決勝戦。一見すると選手層の差で、I神戸が有利なシチュエーションにも見える。だが、I神戸はmobcast cup 国際女子サッカークラブ選手権 2013で2試合を戦っている。12月4日のモブキャスト準決勝から、この試合まで20日間で6試合を戦う強行軍なのだ。しかも、ひとつ落とせばそこで終わりになるノックアウト方式のゲームばかりだ。肉体、精神の両面で疲労は計り知れない。

 これに対して新潟Lは、3回戦から準決勝までは1週間1試合の理想的なスケジュール。準決勝の試合内容を比べても、3時間の試合開始時間の差を考えても、むしろ新潟Lに味方しているように思えた。それでも、I神戸の髙瀬愛実は、準決勝終了後、エクスキューズをきっぱりと否定した。

「正直、12月に入ってから明後日の決勝戦で6試合。自分たちが不利には見えますけれども、タイトなスケジュールをこなしてきたのは、自分たちのいい経験にもなっています。この中1日という状況も自分たちにとっては有利なんじゃないかなと思っています」

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 I神戸・川澄奈穂美、新潟L・上尾野辺めぐみと、幼い頃から互いを知っている両チームのキャプテンによるコイントス。その結果、新潟Lは、地元から駆けつけたサポーターを背に陣を構え、キックオフはI神戸に。

 準決勝同様、引いて戦うと思われた新潟は、まず普通に仕掛けていった。今シーズン、この試合を前に、I神戸と新潟Lは4回対戦していた。なでしこリーグでは4-0、6-1といずれもI神戸が大勝。リーグカップではグループAで2試合を戦い、どちらもスコアレスドロー。まったく異なる結果に終わっている。「前線からプレスをかけてI神戸のミスを誘えたゲームもありましたし、逆にボールを動かされて、振り回されて、失点を重ねたゲームもありました」とは新潟Lを率いる能仲太司監督の弁。

 それらを踏まえて指揮官は「今日は、まずチャンスがあれば前からプレッシャーをかけて、それが難しいと判断した時には、自分たちの距離感を保つ。それでもダメならば、ゴール前で体を張る」と令を発した。5分にティファニー・マッカーティーがチャンスを作り、9分にも上尾野辺めぐみのFKから山崎円美がヘディングシュートでⅠ神戸のゴールを脅かす。そして、相手がボールを動かし始めると、必要以上に食いつくことなく、守備ブロックを作った。

 新潟Lの左SB・高村ちさとは、決勝戦を前に「自分の守る左サイドには川澄選手が来たり、近賀選手が来たりすると思いますが、目の前の選手に負けないということをしっかりと意識して、それが勝ちにつながれば」と抱負を口にしていた。その言葉どおり「なでしこジャパンの中心選手」という看板にひるむことなく立ち向かった。球際では厳しく、少しでもつなげるチャンスがあれば、リスクを恐れず、つなぐ。準決勝の終盤とはまるで違う、勇気溢れるプレーをみせた。

 ティファニー・マッカーティーにも、こうしたチームメートの姿から感じるところがあったのかもしれない。42分、磯金みどりがボールの処理を誤ると、これを奪う。そのままペナルティエリアに入ると、甲斐潤子、海堀あゆみのブロックをすり抜けて、ゴールへ流し込む。新潟へ望外の1点が転がり込んだ。

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 1点をリードして迎えたハーフタイム、新潟Lのロッカールームは「まだ自分たちのサッカーをもっと出せるだろう」という話し合いになった。そして、後半、立ち上がりから決定機を作る。49分、相手DFを交わした山崎のシュート。54分、上尾野辺のカットからマッカーティーが迎えた決定機。さらに上尾野辺、マッカーティー、山崎とつないでポストを叩いたシュート。このどれかが決まっていれば、その先の展開も違ってきたはずだ。

「前半はI神戸のボールをなかなか奪うことができずに、チャンスを作り出すことができなかったのですが、キャプテンを中心に話し合って臨んだ後半は、気持ちを込めたダイナミックなプレー、攻撃ができた。そこに選手の成長を感じています」(能仲監督・新潟L)

 60分過ぎまでは完全に新潟Lペースだった。サッカーが難しいのは、チャンスが多くなったからといって勝てるものではないところだ。前半で得た自信を武器に、より積極的なプレーが出始めた新潟Lを見ながら、川澄は「前半は新潟の守備にやられていましたが、後半は相手の隙みたいなものが見えて『いけそうだな』と感じていました」。澤穂希も「前のほうに得点をとれる選手がいるから、心配はしていませんでした」。

 ふたりの言葉どおり、I神戸が一瞬の隙を突く。際どいジャッジでもらったFKをチ・ソヨンが壁の裏に落とす。そこに走り込んだのが近賀ゆかり。攻め続けられた15分あまりで追加点を許さず、たったワンチャンスで試合を振り出しに戻す。さらに、延長に入った93分、セットプレーからのこぼれ球をチが決めて勝ち越し。今シーズンすべてのタイトルを手にしてきたⅠ神戸の勝負強さが出た。

 新潟Lは74分、児玉桂子を下げて、大石沙弥香を投入。大石を前線に上げて、山崎を右SHに降ろしていた。能仲監督は、延長後半から平井咲奈を入れて、ゴールを奪いにいく。すると、111分、高村のクロスを平井が体に当ててつなぎ、最後はマッカーティー。再び同点とし、新潟からやって来たサポーターを熱狂させた。

 Ⅰ神戸の石原孝尚監督は、最後まで選手交代のカードを切らなかった。

「控えの選手もすごく優秀で、いつもだったら替えていました。ただ決勝独特の雰囲気の中で、理屈じゃない部分です。選手のコンディションを考えれば、リーグ戦や準決勝だったら替えていました。ただ、決勝で何が起こるかわからないということを考え、理屈ではなく、選手たちに『このメンバーでやるんだ』というメッセージを伝えました」(石原監督・Ⅰ神戸)

 ケガ明けの澤穂希は、皇后杯に向けて調整されてきたが、準決勝で久々のフル出場。中1日の先発出場でコンディションが心配されたものの、足の使いどころを見極めた省エネサッカーで対応。要所はきちんと押さえるベテランの仕事が光った。

「自分も準決勝まで1ヶ月以上90分フルにやっていなかったので、ちょっと心配だったのですが、準決勝の試合後、しっかり交代浴をするなどスタッフにケアしてもらった。それで今日の120分も戦うことができた。ケガ明けでしたが、それなりにプレーできて、最後までグラウンドに立てたというのは嬉しかったです」(澤・I神戸)

 結局、PK戦では、Ⅰ神戸が4-3と新潟Lを退けた。疲労と緊張の中で、セーブされたゴーベル・ヤネズを含め5人全員が枠内に蹴ったI神戸。経験値を買った石原監督の辛抱が結果につながったというべきか。

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 敗れた新潟Lは、現状の力を出し切った。リーグ戦終盤から皇后杯にかけて、攻守のバランスのとり方をマスターした。決して、主導権を握るサッカーを諦めたわけではなく、それができない時のやり方を身につけたのだと能仲監督は言う。

「今現在でも自分たちの時間を長くするようにしたいと思っていますし、攻撃においても、じっくりと攻めるところと、相手がボールを持っているところでも、チャンスがあれば前から、相手のゴールに近い位置で奪いたいというところはあるのですが、今シーズン、戦ってきた中で、他のチームもレベルアップしてきているので、やりたいことをやれる時間がそれほど多く作れなかっただけで、今年も、来年も、シフトチェンジは考えていません」

 サポーターの後押しを含めて、いくつかのポジティブな要素があったにせよ、I神戸をあと一歩のところまで追い詰めた。それは自信になるだろう。

「皇后杯でチームは成長したし、まだまだ伸びしろがあります。今日の段階でここまで戦えたというのは、今後、INACに勝利を収めることもできると思うし、INACを追い越すところまで可能性を秘めたチームだという印象です」(能仲監督)

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 そして、4冠を達成したI神戸。4連覇のスタートを切ったあの時と同じように、最後のキッカーは川澄。落ち着いてこれを決めて4冠を呼び込んだ。

「5人目のキッカーというのは最初にこの全日本女子サッカー選手権で浦和Lに勝って優勝した時も、女子ワールドカップの決勝もそうでした。今日は回ってくるかなと思っていましたが、全然緊張はありませんでした。シーズンが始まる前から『4冠』を目標にしてきましたが、実際、こうして達成してみると『こんなに嬉しいものなんだな』という気持ちです」(川澄)

 ゴーベル・ヤネズ、ベッキーがアメリカに復帰。アメリカ移籍が囁かれる川澄を含め、オファーを受けている選手は少なくない。来年は、チーム編成が大きく変わる可能性がある。追う者と追われる者の差は、確実に狭まってきている。今シーズンは、最後の場面で経験値の差がモノを言った。だが、それが次の成功を約束してくれるわけではない。

「このメンバーでやれるのも最後。嬉し涙が流せてよかったと思います。試合に出ている選手と、出ていない選手で習得している部分も違うし、もっと若い選手が出てきて、レギュラー争いをしたほうがチームとしても強くなると思います。レギュラーでもやれる実力を持っているのに、たまにシュンとなったりしている。そうしたメンタルの強さも鍛えれば、もっとチームは強くなれるし、切磋琢磨していきたいです」(澤)

【INAC神戸レオネッサ>】
 GK:海堀あゆみ
 DF:近賀ゆかり、甲斐潤子、磯金みどり、渡辺彩香
 MF:澤穂希、中島依美、チ・ソヨン
 FW:川澄 奈穂美、ゴーベル・ヤネズ、髙瀬愛実

【アルビレックス新潟レディース】
 GK:一谷朋子
 DF:小原由梨愛、北原佳奈、中村楓、高村ちさと
 MF:児玉桂子(74分/大石沙弥香)、斎藤友里、上尾野辺めぐみ、佐伯彩(延長後半開始/平井咲奈)
 FW:山崎円美、ティファニー・マッカーティー


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