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浸透したスタイルの使い分け。新潟L、2年ぶりの決勝進出

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西森彰=取材・文 金子悟・中倉一志=写真
日時/2013年12月21日(土)11:04キックオフ
会場/NACK5スタジアム大宮
結果/岡山湯郷Belle 0-1(前半0-0、後半0-1) アルビレックス新潟レディース
得点者/【新潟】上尾野辺めぐみ(61分)

夏のなでしこリーグカップで逃した、日本一に再び挑む岡山湯郷Belle。2年ぶりの決勝を目指すアルビレックス新潟レディース。第35回全日本女子サッカー選手権皇后杯の準決勝第1試合は、この2チームの対戦となった。

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これまで、湯郷ベルは新潟Lをお得意様にしてきた。前から果敢にボールを奪いにいく新潟Lのプレスを外し、湯郷ベルがカウンターを見舞う。前がかりになる新潟Lは、針の穴を通すような宮間あやのパスに、幾度も沈められてきた。

しかし、能仲太司監督就任後、新潟Lは変わった。時間帯や試合の状況によって、積極的にボールを奪いにいくだけでなく、リトリートする選択肢も生まれた。シーズン序盤こそ、長年染み付いたプレースタイルが出てしまっていたが、徐々に攻守のバランスが体感できるようになった。

なでしこリーグ終盤、降格争いに巻き込まれてからは、むしろ、まずゴール前を固めてゲームをスタートさせる姿勢が目に付いた。決して先手を奪われない。この皇后杯でもスペランツァFC大阪高槻、日テレ・ベレーザを相次いで零封。結果がついてくると、選手の自信も深まっていった。

この試合でも、湯郷ベルのロングボール攻撃を想定し、新潟Lはペナルティエリア付近に人数をかけて、強固な守備ブロックを作ってきた。

「湯郷ベルは、力強さと粘り強さがあるチーム。難しい戦いになるとは思っていました。守備では前から行くところと、コンパクトに守るところを使い分けようとミーティングで伝えました」(能仲監督・新潟L)

「新潟Lの監督は能仲さんだから、相手の一番嫌なことをやってくるのはわかっていたけれど」という宮間をはじめ、湯郷ベルはやや面食らった。新潟L陣内でゲームが運ばれたが、ペナルティエリア付近に林立する新潟LのDFがパスやシュートのコースを狭める。横山久美らのシュートがポストを叩くなど、いくつかの得点チャンスは訪れたが、スコアは動かなかった。

「相手の新潟Lは前からのボールに強いというイメージがありました。そこで、最初は裏に蹴って相手の最終ラインを下げて、そこからFWの足下にグラウンダーをつけるという狙いでした。それでも相手のディフェンスに引っかかってしまうところが多かった。裏のところでキープができれば、もう少しは違ったと思います。もうちょっとスペースで受けるように外へ逃げてプレーできれば良かったかも知れません」(有町紗央里・湯郷ベル)

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コンパクトなディフェンスで、相手にスペースを与えず、自軍選手のスタミナを残す。表面上は劣勢でも、新潟Lとしては悪くない試合展開だった。この日も出色のデキだったのが、上尾野辺めぐみだ。これまでの攻撃的ポジションから、ボランチへ異動したが、高いレベルでパフォーマンスはキープされている。

「正直、前に行きたい気持ちはあるのですが(笑)」(上尾野辺)、まずは引き気味のポジショニングで、最終ラインの守備を助ける。そして、ゲームの流れを読みながら、好機を捉えるとそこに顔を出す。28分、佐伯彩のドリブルからパスを受けてのシュート。35分、ティファニー・マッカーティーへ合わせた右CK。前半、新潟Lのチャンスはどちらも上尾野辺が絡んだ形だった。

そして、61分、3度目のチャンスで新潟Lの決勝点が生まれる。左サイドで相手のクリアボールを拾った上尾野辺がシュート。利き足の左で打ったシュートは、コースを消しに来たDFに当たり、上尾野辺の右足にこぼれてきた。「相手のゴールが見えたので」と、普段はほとんど使わない右足で掬う。敵味方の選手がブラインドになったこと、そして意表を突く右足でのループシュートは、福元美穂が懸命に伸ばす手の先に落ちた。

リードを奪った新潟Lは、完全に逃げ切り態勢に入る。前半、残していた推進力を発揮し、ゴールへの道を切り開こうとする湯郷ベルに、決して自由を与えない。「前半も後半もボールは支配していたが、最後まで新潟Lの堅守を崩せなかった。相手にあった2チャンスのひとつを決められてしまい、追いかける展開の中でプレーの精度を欠いてしまった」と湯郷ベルの種田佳織監督。3枚の交代選手を有効に使った能仲監督の采配も当たり、新潟Lは最後まで1-0のスコアを守り通した。

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リーグ3位、リーグカップ2位、そしてこの皇后杯ではベスト4。湯郷ベルは、今季もタイトルに手が届かなかった。

「前に急ぐのが遅かったのかなと思います。今までのように、ラインを高めに設定して攻めていたら、先に点がとれていたのかなと。新潟Lのように守備ブロックを低く構えるチームとは対戦してこなかったので、そこだけは準備不足だったのかなと思います」(宮間)

第2試合に出場するチームに比べれば数時間のアドバンテージがあるとは言え、湯郷ベルは、決して選手層の厚いチームではない。それを考えれば「先手をとられないことに気をつけながら、前半を静かに戦い、後半勝負」のプランは間違っていない。

「やりたいことを意識して、ひとつずつできるようになって結果もついてきた。ただ、相手も私たちがどうやって戦ってくるか研究するようになった。そういう今までとは違うやりにくさもある中で、もっと自分たちのできることを考える。そんな繰り返しの1年だったように思います」(有町)

今後は、挑戦を受ける立場で、どんなサッカーを見せられるか。前線にはタレントが揃っており、選手交代を含めて、戦い方のバリエーションを身につけられるかにかかっている。

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1-0で逃げ切った新潟Lは、2年ぶり2度目の決勝進出を果たした。クリア一辺倒になった終盤の戦いには課題が残ったが、戦略的には十分満足のいく結果と言えるだろう。こちらも湯郷ベル同様、選手層が厚いとは言えないチーム。深刻な負傷者や、カードでの出場停止者を出すことなく、2日後のファイナルに臨むことができたのは大きい。

「キャプテンに任命した時に『これまでの経験を出すことで周りを引っ張っていってほしい』と伝えました。今シーズンは苦しい戦いがリーグ戦から続いていたので、キャプテンとしてその責任を辛く感じたりする部分も多かったと思う。そういった意味でこの大会に賭ける気持ちが強いと思います」(能仲監督)

キャプテン・上尾野辺が、指揮官の信頼に応える活躍を見せた。リーグ2位の日テレ戦に続き、リーグ3位の湯郷ベルを相手に、値千金の決勝点を挙げ、その他のプレーでもチームに勇気を与えた。

「なでしこリーグでは日テレ・ベレーザや湯郷ベルに勝てなくて、それ以外にも苦しい試合が続いていた。ようやく最後のほうで、だいぶできるようになりましたが、やり切れていないと思っている選手が多かったので、それが皇后杯につながっています」(上尾野辺)

リーグ戦上位チームを連破し、決勝に進んだ新潟Lは、決勝でも、女王・INAC神戸レオネッサを相手に、素晴らしいゲームを見せることになる。

【岡山湯郷Belle】
 GK:福元美穂
 DF:加戸由佳、布志木香帆、宮﨑有香、津波古友美子
 MF:横山久美(82分/中川千尋)、高橋悠、宮間あや、中野真奈美
 FW:松岡実希、有町紗央里(89分/山口麻美)

【アルビレックス新潟レディース】
 GK:一谷朋子
 DF:小原由梨愛、北原佳奈、中村楓、高村ちさと
 MF:児玉桂子(90+2分/山本亜里奈)、斎藤友里、上尾野辺めぐみ、佐伯彩(84分/平井咲奈)
 FW:山崎円美、ティファニー・マッカーティー(78分/大石沙弥香)


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