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終わり良ければすべて良し。なでしこジャパン、来年につなげる2連勝でシーズンを終える。


取材・文/西森彰

 オコン・エドウィン・エデム監督からして「親善試合では、楽しむことが第一」と発言していたくらいだから、対戦相手のモチベーションが低かったことは否めない。それを差し引いても、このナイジェリアとの2連戦は、シーズンを締めくくるに相応しい好内容だった。

 海外組は大儀見優季ただひとり。2試合続けて選ばれたのも、大儀見、宮間あや、川澄奈穂美の3人だけだった。試合までのトレーニング期間も長崎組が5日で、千葉組が3日。とても足りていたとは思えない。だが引き出しは少なかったが「全員がひとつの方向を向いていた」(大儀見)。初キャップの選手も含まれた手薄な2チーム編成でも結果が出た理由のひとつだろう。

 なでしこリーグ各クラブから選ばれた選手の多くには「なでしこジャパンとしてピッチに送り出されるのは、そんなに簡単なことじゃないんだよ」という佐々木則夫監督のメッセージは届いていた。そこには常連組の気配りもあった。

 キャプテンの宮間は「いきなり『世界はすごいんだよ』と言っても伝わらないと思う。自分が当たり前のことをきちんと当たり前にやる。プレーでもそうでない部分でも日本代表の選手としての行動、プレーを心掛けたい」。川澄も、前日練習では若手のボール回しに自分から入った。「先輩というか、常連の選手が引っ張ってくれた」(薊理恵)結果、常連組も「それぞれ自分の特徴を出したり、アピールする姿勢は感じた」(大野忍)。

 そして経験の浅い選手には、大観衆の後押しも大きかった。諫早の長崎県立総合運動公園陸上競技場の試合は1万5千人を上回った。スタジアムの360度から送られる拍手、手拍子にはプレーする選手も「『なでしこブームがまた来たんじゃないか?』と思った」(宮間)ほど。三連休の中日ということを差し引いても、素晴らしい雰囲気だった。

 また、平日開催で客足が心配されたフクダ電子アリーナの第2戦も、最終的に1万人を超えた。4日前の内容が良かったことも、多少なりとも影響していたのかもしれない。代表デビューを飾った、ジェフユナイテッド市原・千葉レディースの上野紗稀は「本当のホーム。知っている人もたくさん来ていたし、これまでやってきたことを見てもらえるチャンスだと思った」。久しぶりに、すべてのサイクルがうまく回った。

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 確かに、得点者の顔触れは変わらなかった。第1戦は、宮間のアシストで大儀見。丸山桂里奈のシュートをGKが弾いたところを川澄。第2戦も、大野のパスを受けた大儀見が倒されたPKを宮間が成功。宮間のFKから阪口夢穂。ここに名前を挙げた全員が、ドイツ女子W杯→ロンドン五輪組である。そこから「若手が伸びていない」という話になる。

 高校時代、故障明けの状態でフル代表に呼ばれ、最初からそこそこできてしまった大儀見。レギュラーの故障で抜擢され、そのままポジションを奪った岩清水梓。ほぼ未経験のサイドバックでいきなり結果を出した近賀ゆかり。そして澤穂希……。ただ、冷静に考えれば名前を挙げた面々は、世界大会で代表のレギュラーを複数回張っているモンスターなのだ。しかも、彼女たちは、世界大会での経験を糧にしながら、今なお、着実に成長している。

「(他国のレベルアップに対応するため)さらにチームとして連携、連動を確立していかないといけませんが、それができるのは世界を経験した選手だけなんです。そういう領域を経験をしていない選手には(それぞれの特長を出すことに加えて)その部分でもプラスアルファを求めていかなければいけない。来年以降の青写真は描けているが、そこに色をつけるだけの選手は、まだまだ若手からは出てきていない」(佐々木監督)。

 それだけ大きな経験値の差を考慮せずに「若手が伸びていない」もない。肩の力を抜いて見直せば、初キャップを刻んだ中にも、光る部分のある選手はいた。

「やっぱり浮かんできたのは課題の部分。自分はセンターバックとして声で伝えていかなきゃいけないポジション」と言っていた三宅史織は、最終的にゼロで抑えた。ナイジェリアの長身FW・ウチェチ・ロペス・サンデーに手こずったが「あの年齢で久しぶりに『出てきたな』という選手だと思う」とDFリーダーの岩清水も注目している。

 第2戦では「自分が一番、年齢も下だし、失うものはない」と開き直ってピッチに向かった上野が「以前に合宿で参加した時よりはできたと思う」。積極的な攻撃参加を見せて、あわやデビュー戦ゴールかというシーンも作り出した。佐々木監督は「後半途中で『もう無理かな?』と思った」と言うが、そこでも踏ん張り、85分までプレーを続けた。

 もちろん、思うようなプレーができなかった選手もいる。第2戦の前半32分でベンチに退いた後藤三知は「ゴールにつながるプレーをしよう」と考えるあまり、焦ってボールが足に付かなかった。「ゴールにつながるプレーをすることで、ボールの出てくる回数も増えるし、相手も脅威に感じるし、それがチームへの貢献にもなる。今、クラブは負けられない状態になっていますが、そこでもそうしたプレーを忘れずに貢献していきたい」。

 代表で浮き上がった課題への継続的な取り組みも、佐々木監督は見ている。

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 今シリーズで、なでしこジャパンの2013年は終了した。アルガルベカップに、東アジアカップ。内容はともかく、結果が出なかった英独遠征など、急激な右肩上がりを続けてきたなでしこジャパンだからこそ、足踏みの印象が強い1年だった。

「たくさんの選手が、ワールドカップのエンブレムをつけてプレーする責任感を感じながら、ピッチに入る経験ができたのは良かった。そうした中で、全てのゲームで勝利を目指したが、負けてはいけない相手に負けたりもしたし、試合内容が良くても勝ち切れなかった試合も多かった。選手はよくやっていたから、反省はある。どういう組み合わせで、どういう準備をしたらいいのかという分析をして来年につなげていく」(佐々木監督)

 来年は、チャレンジ合宿からアルガルベカップを経て、カナダW杯予選参加メンバーが固まる。予選終了後に、リーグで活躍した選手、年代別代表の選手を試す可能性は残すが、サバイバルの空気が満ちてくる。今年チャンスを与えられた選手も、今度は自らの力で勝ち取らなければいけない。そこから先こそ、言い訳の許されない真剣勝負の始まりだ。


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