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夜明けを信じて ~浦和レッズレディース

130510_01.jpg 取材・文/西森彰
写真/金子悟 西森彰

 混戦と言われていた今季のなでしこリーグも、ゴールデンウィークを終えて流れができつつある。本命INAC神戸レオネッサは、ただ1チーム、開幕から白星を7つ並べた。川澄奈穂美が攻守で目を引くプレーを続け、中島依美らがケガ人等で欠けたポジションを器用に埋める。2位の日テレ・ベレーザとは勝ち点5差。石原孝尚監督は「次のゲームをベレーザが落とせば、そこで今季はジ・エンド」といたずらっぽく口にする。

 2位の日テレ・ベレーザは、得点力不足が深刻で第5節、第6節と2試合連続で無得点で、勝ち点を5つ落とした。「その前のゲームもPKだけですから、実質的には3試合連続ノーゴール。もちろん、そこが最大の課題だと思いますし、前のポジションにいる若手には、練習の時から『やってくれないと勝てないよ』と言っているんですが……」と岩清水梓。流れの中からに限れば、383分ぶりに生まれた田中美南のゴールで、ジェフユナイテッド市原・千葉レディースに勝利。直接対決に望みをつなげた。

 3位以下には、ベガルタ仙台レディース、伊賀FCくノ一、千葉Lと連敗を回避したチームが、それぞれ名前を連ねている。

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 泥沼に足を突っ込んでしまったのが、浦和レッドダイヤモンズレディースだ。開幕戦で白星スタートを切った後、第2節のジェフユナイテッド市原・千葉レディースに敗れると、そこから0-1、1-2、0-1、1-2。同じスコアを交互に繰り返す。自分たちのエンジンがかかる前に、相手チームに先手をとられ、動揺。後半に入って、システムを変更してゴールに迫るが、届かない。これは、千葉戦以降4試合続いた負けパターンであった。

 とりわけ、キックオフからの戦いぶりがもどかしかった。きちんとボールをつないで相手を走らせれば、後半にチャンスが生まれる。机上の計算では、そうなる。ただ、つなぐことに意識が行き過ぎて、ゴールへの執着心が欠けていたのではないだろうか。この千葉戦を含めて、後半は、同点、逆転を目指して相手ゴールを幾度か脅かしている。対戦相手の上村崇士監督は「私が他のチームのことを言うのは、おかしなことですが……」と前置きして、次のように語った。

「(浦和は)お世辞抜きに良いチーム。あれだけのタレントも揃っていますし、上位に行けるチームだと思います。そのチームに勝ったから嬉しい。いろいろなところで『今季の浦和はあんまり……』という話も聞こえてきますが、うまさは去年以上ではないかと思います。『もう少し怖さが欲しいかな?』とも思いますが」

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 第3節の岡山湯郷Belle戦は、後半、同点に追いつき、そのままの勢いで逆転するかに見えた。そして、残り数分でPKを得る。そこで、岸川奈津希のキックが相手GK・福元美穂にセーブされる。PK失敗のダメージを引きずり、それまでの優勢は失われ、ロスタイムに勝ち越しゴールを許す。勝利を目前にしていたチームは、あまりにも脆く、崩れた。後から振り返れば、ここが地獄の一丁目だった。

「(PK失敗は)起きてしまったことだし、それをどうこう言っても仕方がありません。そこから何ができるか。長いリーグ戦、ましてアウェーであることを考えれば、あそこで最悪でも勝ち点1をキープする。確実にあと数分を逃げ切る。それができないのが、今の力であり、課題です」(後藤三知)

 そのあたりのゲーム運びの稚拙さも含めて、若さなのだろう。今季は、これまでチームを引っ張ってきたベテラン、中堅がチームを離れ、平均年齢は一気に下がった。これまでリーグ戦では1度も勝てなかった湯郷ベルの選手にも「だいぶメンバーが変わりましたし、以前のようなイメージはありません」(宮間あや)。キックオフ以前の精神的優位が失われている。

 その喪失を際立たせたのが、今季からなでしこリーグに昇格したばかりの吉備国際大学Charmeにも初勝利を献上した試合。吉備国大戦は、風下でシュート本数11対2という劣勢を同点で折り返した。しかも、後半はゲームを完全に支配しかけていた。これまでなら、貫録勝ちに持っていけるところだ。しかし、そこで競り負けてしまう。

「これまでの4試合は『なでしこリーグのチーム』と戦うことを必要以上に意識して、私も、選手も、対戦相手をリスペクトし過ぎていました。今日は、大学生らしい自分たちのサッカーをしようと言っていました」と吉備国大の太田真司監督。昇格したばかりの大学生に最後まで伸び伸びとプレーさせてしまうのだから、もう「浦和」という看板だけで勝てるチームはない。

 主力を務めるべき選手のケガ人にも悩まされている。開幕前に負傷した吉良知夏は、しばらく時間限定での出場が続いた。猶本光も第5節のFC吉備国際大学戦で、ようやく戦線復帰したばかり。そのゲームでは、昨年の新人王・高畑志帆が負傷退場した。チームがベースを掴むのに手こずっているのは、それも大きな原因だろう。

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 だが、結果は同じとは言え、試合内容は徐々に良化を見せている。第6節のアルビレックス新潟レディース戦は速攻から2本食らって逆転負け。その一方で、開幕戦以来となる先制点を奪い、前半はリードで折り返している。そして久しぶりのホームゲームとなった第7節のI神戸戦は0-3。I神戸を今季初めて前半無得点に封じ、退場者含みのPKなどアンラッキーな一面もあった。

 フォーメーションでは、ここ2試合採用している1トップとの相性がいい。「これまで、FWとボランチの間にあるスペースのこぼれ球を、相手チームに拾われるという課題があったので」(安田)。2トップの1枚をこの位置に落とす修正で、こうしたシーンが目に見えて減った。まだこれを攻撃で活かせるレベルには持っていけてないが、守備は明らかに良化した。やはり、去年までの距離感が使える1トップのほうが、現状はやり易いのではないだろうか。

「そういう、何も考えなくても体が動くくらいの、染みついた距離感というものを作っていかなければいけないと思います。やっぱりチームとしての土台がないと何をやっても上手くいきませんし、それを今はしっかりと作っていかなければ」(後藤)

 I神戸戦では前半をスコアレスで折り返した。これまでピッチに入ると途端にチームのギアを引き上げた吉良知夏を、後半開始から投入するのではと考えたのだが、手塚監督は「ハーフタイムの時点では守備がうまくいっていたので、もう少し堪えて次の段階でと考えていました」。ここ2戦で何かが生まれつつある手応えを感じており、選手たちにそれを掴ませたかったからなのだろう。この試合の結果だけを見れば、60分の岸川退場で、投入の機会を逸することになってしまったのだが……。

「それもサッカー。運も含めてそれが今の状況です。今日の試合でできた部分もあるから、そこを続けてやっていくしかありません。勝ちたい気持ちは毎試合積み重なっていますが、それをどうパワーに変えていくかは自分たち自身。しっかり結果につなげていけるようにやっていきたい」(後藤)

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 これで6連敗。チームのワースト記録を更新し続けている。現在の順位は、最下位のスペランツァFC大阪高槻を辛うじて得失点差で上回っての9位だ。ここ数年、常に上位戦線を争ってきた名門は、今、難局を迎えている。だが、選手は凛として、前を向く。

「(『連敗が続いて、気持ちの持ち方が難しいのでは?』)皆さんにそう言われますが、毎試合、私たちは気持ちを切り替えて戦えています。そんなに下を向いてもいませんし、前向きに取り組めていると思います」(安田有希)

 今が一番暗い夜明け前であることを信じて、すぐ次の試合に目を向けている。


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