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【J2第9節 群馬-福岡】チーム一丸 それがアビスパスタイル

2013Jリーグ Div.2 第9節
日時/2013年4月17日(水)
19:04キックオフ
会場/正田醤油スタジアム群馬
結果/群馬 0-1 福岡
取材・文・写真/中倉一志

 提示されたアディショナルタイムは5分間。長いとか、短いとか、そういう感覚は一切なかった。ハードワークに徹し、勝利を目指してゴールを守るだけ。ピッチに立つ10人の選手は、ただそれだけに徹していた。その想いは彼らだけのものではない。それは、ベンチに控える監督、コーチ、選手、そしてゴール裏から力の限りに声援を送るサポーターにも共通した想い。全員がひとつになり、立ち上がり、力の限りに戦った。やがて5分が経過。相手陣内の右サイドで、ボールがラインを割ったところでホイッスルが高々と鳴り響く。スコアは0-1で福岡の勝利。チーム一丸で手に入れた勝利だった。

 試合は福岡のペースで進んだ。中2日で迎える試合も運動量に衰えは感じられない。そして、いつものように高い位置からアグレッシブにボールにプレッシャーをかけ、奪った瞬間に「守」から「攻」へ切り替えて、縦に速いサッカーでゴールを目指す。ここまでの8戦では、自分たちが目指すサッカーを表現できない試合もあったが、勝利の時も、敗戦の時も、常に自分たちと向きあってきたチームは、日々のトレーニングを通して小さな変化を積み重ねてきた。勝利を目前にして勝点2を失った水戸戦、終盤に追い込まれながらも1点差で逃げ切った北九州戦。それらの経験を経て、この日の試合では、自分たちのやるべきことを徹底して繰り返す姿があった。

 その流れのままにゴールが生まれたのは15分。福岡は自陣でボールを奪うと素早く前へ展開。右サイドから仕掛けた石津が右サイドを突破してゴール前にボールを送る。そこへ飛び込んだのは金森武志。おとりの動きでDFを引きつけた城後寿の背後からゴール前へ顔を出し、右足インサイドで合わせた。GKとDFの間に送ったグラウンターのクロスも、城後の動きも、そして金森のファーサイドからの飛び込みも、何度も練習で繰り返してきた形。狙い通りのゴールだった。

 もちろん課題もある。奪ってから攻撃に転ずる時にミスが多いことだ。この日も主導権を握っていたとは言え、中途半端なところで群馬に引っ掛けられてショートカウンターを仕掛けられる場面が目立つ。特に群馬の左サイドでは、群馬の小柳達司、加藤弘堅に何度も仕掛けられた。しかし、個々の役割が明確になっている福岡は、決してゴールを許さない。4連敗から脱しようとアグレッシブにプレーする群馬に対し、ここと言うところでは激しくボールに寄せて奪い返し、あるいは的確なカバーリングでピンチを凌いでいく。前半のスコアは1-0。課題はありつつも、福岡が目指すサッカーを表現した前半だった。

 そんな福岡にサッカーの神様が試練を与えたのは60分。金久保順が2枚目のイエローカードを受けて退場処分を受ける。しかし、福岡は慌てない。布陣を4-4-1に変更すると、ここから驚異的な粘りを発揮して群馬の攻撃を防いでいく。「チームとしての役割、個人のとしての役割は、監督からはっきり指示が出ているが、それが10人になってから、さらに明確になった」(古賀正紘)。ボールを一方的に群馬に支配されながらも、ここぞというところでは激しくプレッシャーをかけて群馬に攻撃のリズムを作らせない。
 決定的なピンチもあった。しかし、88分に平繁龍一に裏を取られてGKとの1対1のシーンを作られた場面では、堤、中原が懸命に戻ってクリア。90+1分に夛田凌輔が放ったシュートは水谷がはじき返し、さらに平繁がニアに飛び込んできたシーンでは、再び水谷がクロスボールを右手一本でボールに触って、シュートタイミングを狂わせた。

 そんな選手たちを、ベンチに控えるメンバー全員が立ち上がって声援を送る。交代選手もロッカールームに下がらずに、最後までベンチの中でともに戦い続けた。そして、5分のアディショナルタイムを経てホイッスルが鳴る。城後寿は話す。「ベンチにいる選手も悔しい想いをしているにも拘わらず、ずっと立って、声を枯らしながら応援してくれた。本当にうれしい。そうやって陰で支えてくれている選手がいるからこそ、チームはひとつになれるし、今日も勝てた」。チーム一丸。その言葉を実践して手に入れた勝利だった。

「選手たちを誇りに思う」。試合終了後の記者会見で、そう話したプシュニク監督。「少しずつ、少しずつ、私がやろうとしていることを選手たちが理解してくれている」とチームの変化を話す。しかし、それはまだ大きな変化への過程に過ぎない。それを1日も早く実現すべく、選手たちは同じ気持ちで次節の千葉戦へと向かう。


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