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なでしこ開幕 そしてチャレンジリーグ

130329_01.jpg 取材・文・写真/西森彰

 なでしこリーグの2013年シーズンがいよいよ開幕。昨季の女王・INAC神戸レオネッサは、ノエビアスタジアムでジェフユナイテッド市原・千葉レディースを迎え撃った。  千葉Lは、3か月前の皇后杯ではコンディション不良のI神戸に対し、走り勝つサッカーを選択した。再戦にあたり、今度は前線から最終ラインまでの距離をコンパクトに保ってきた。皇后杯で走るだけのサッカーに限界を感じた上村崇士監督が、開幕に向けて取り組んできた新しいスタイルである。澤穂希、南山千明、チ・ソヨンの3人は、人口密度の濃い中盤で、ボールを受ける場所を探し、グルグルとポジションを変えたが、なかなかうまくいかない。

 千葉Lのディフェンスは機能し、ボールを取るところまではうまくいった。千葉LのFWは、I神戸のCBをスピードで上回る。ここに目を付けた上村監督は、速い攻撃をイメージしていた。「早く前にボールを送りたい気持ちがあった」と新潟から加入した川村優理。開幕戦の緊張やケガ人で経験不足の若手がいたこともあり、奪ったボールを前線につなぐ過程で、パスの精度を欠いた。

 ハーフタイムに落ち着きを取り戻したI神戸は、ゴーベル・ヤネズが自ら獲得したPKを前後半に1本ずつ決め、守っては試合終了間際の深澤里沙の1点に抑えた。キャプテンの川澄奈穂美らは、ミックスゾーンでは笑顔をほとんど見せなかったが、まだまだ完成途上。新加入選手が「まだ自分のことでいっぱいいっぱい」(途中出場の磯金みどり)の中、きっちり勝ち点3をとるあたり、昨年の勝負強さは残っている。
 敗れた千葉Lも櫻本尚子が「最後のほうに出た若手がチャンスを作ってくれたし、次節はケガから戻ってくる選手もいるので」とショックは小さい様子。ホーム開幕戦につながる内容ではあった。

 その他の会場では、日テレ・ベレーザがFC吉備国際大学Charmeを、浦和レッドダイヤモンズレディースがスペランツァFC大阪高槻をそれぞれ下した。新監督と前年から指揮をとる監督の対決は、I神戸と千葉Lの試合を含めて、全て新監督に軍配があがった。アルビレックス新潟レディースと伊賀FCくノ一の新監督対決は仲良く、スコアレスドロー。
 そしてなでしこリーグ開幕節で最大の驚きは、ベガルタ仙台レディースがアウェーで岡山湯郷Belleを降したこと。昇格チームに滅法強い湯郷ベルから奪った勝ち点3は、ベガルタのスタッフ、選手に大きな自信を与えたはず。やはり、これまでの昇格チームとは、全く違うチームだ。

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 さて、4月7日には、なでしこリーグの下部リーグにあたるチャレンジリーグの開幕を控えている。昨年よりも4チーム増えて全部で16チームが参加。まず、二つに振り分けられたリーグ戦を2回戦総当たりで戦い(14試合)、その後でもうひとつのリーグと1回戦総当たりを行う(8試合)。22試合の結果で最上位のチームはなでしこリーグへ昇格。次位のチームが入替戦に回るのは昨年と同じだ。

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 昇格争いの大本命は、ASエルフェン狭山FCだ。ベレーザを率いてなでしこリーグで優勝を重ねた松田岳夫監督が、女子サッカー界に復帰。行き先として選んだのが、この狭山だった。「(ベレーザの頃と比べて)何もないところから作りあげていく楽しさがあります。一からスタート? いや、ゼロからのスタートですよ(笑)」(松田監督)。

 常勝監督の手腕を慕って、なでしこジャパンなどで活躍を見せたベテランが集まってきた。浦和Lから山郷のぞみ、荒川恵理子、ベレーザから伊藤香菜子。勝つために、強くなるために何が必要なのかを知っている選手の存在は、松田監督にとっても心強いはずだ。昨シーズンまでなでしこリーグを戦っていた既存戦力も薊理恵を筆頭に充実している。死角は見当たらない。

 もうひとつの前・なでしこリーグ所属チーム、福岡J・アンクラスは戦力ダウンをいかに補えるか。今季は内堀律子が引退、磯金みどりがI神戸、澤田法味が伊賀FCに移籍。守備の要となる3人を筆頭に、昨年の主力が相次いでチームを離れた。湯郷ベル、浦和から勝ち点3を奪った、昨季後半の陣容はない。川村真理、田頭陽子らを中心にチームを立て直せるか。八木邦靖新監督の手腕にかかっている。

 スフィーダ世田谷は、なでしこリーグのチームとも積極的に練習試合を組んできた。川邊健一監督は、自チームの練習試合が終わると、寸暇を惜しんでそのままライバルチームの練習試合視察に向かう。「良くも悪くも結果は事前の準備次第ですから、1つ1つの試合に備えて丁寧な準備を続けることが目標です」というコメントそのままの行動だ。昨年は3位。今季は当然、昇格が大目標だ。

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 今季から、チャレンジリーグに挑むJリーグの下部組織チームが、セレッソ大阪堺レディースだ。育成組織として設立されたのが2010年のこと。そこから3年でチャレンジリーグに昇格した。心身ともに成長途上の中学生が主体のチーム。大人が相手の90分間は厳しい戦いになるだろう。昨季までC大阪堺で彼女たちを指導した狭山の原歩コーチは「このステージで戦えるのは、いい経験になると思います」とエールを送る。

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 C大阪堺とともに地域リーグから入替戦を勝ち上がり、一緒に昇格したのはノジマステラ、清水第八プレアデス、HOYOスカラブFCの3チーム。清水第八を除く3チームは初昇格である。ノジマは、ライバルチームから狭山に次ぐ上位候補のひとつに挙げられている。指揮官は東京電力女子サッカー部マリーゼを、優勝候補に育て上げた菅野将晃監督。神奈川県下の企業からも支援を受けるこのチームは、旋風を巻き起こすかも知れない 。

 既存チームの中にも伏兵候補はゴロゴロいる。そのひとつがバニーズ京都SC。ここ最近は、なでしこリーグから遠いポジションでくすぶっているが、今季はチームへのバックアップ体制を強化。新潟から豊田奈夕葉を獲得するなど、なでしこリーグのチームからも選手を獲得してきた。積極的な補強で昨季以上の戦力は整った。今季は、楽しみな存在だ。

 松田監督、菅野監督同様、なでしこリーグで指揮を執った本田美登里監督が、今年から、チャレンジリーグで采配を振るう。昨季11位、入替戦で地域リーグ降格を危うく逃れた長野パルセイロレディースが、新たな挑戦の舞台だ。「狭山クラスには一目置きますが、3位を争うグループには1年目から入って行きたい。チャレンジリーグはそれほど差がないと思います」と自らを鼓舞する。

 昇格の資格がないチームは、なでしこリーグへの道に門番役と立ち塞がる。常盤木学園高校は堅守を武器に、今春の全国高校女子サッカー選手権で優勝。阿部由晴監督は「また、なでしこリーグでプレーできる選手をひとりでも多く育てたい」と目標を口にする。インカレで大学日本一に輝いた日本体育大学は昨年4位。その下の5位にJFAアカデミー福島、6位に常盤木学園。昇格を狙うチームにとってこのあたりが壁になるだろう。

 ベガルタの活躍を見ればわかるように、チャレンジリーグのレベルも1年ごとに上がってきている。今季はどのような結末が待ち構えているか。なでしこリーグ同様に注目したい。


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