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【フットボールな日々】アビスパの変化

取材・文・写真/中倉一志

 アビスパの何が変わったのか?  すべてが上手く行ったわけではありませんが、東京Vとの開幕戦は、そのエッセンスが随所に見られた試合だったと思います。最も印象に残ったのは、マリヤン・プシュニク監督の采配でした。シーズン前に取り組んでいた高い位置からハイプレスを仕掛けて、奪ったボールを素早く前へ運ぶという戦い方を変更。「相手の両サイドからの攻撃を封じるため」(プシュニク監督)という狙いで宮本卓也を右ウイングで先発起用し、併せて、高い位置からのハイプレスを封印して、ラインを下げてブロックを敷く戦い方に変えたことでした。

 私も含め、福岡を取材しているメディア、クラブ関係者、ファン、サポーター、そして、東京Vまでもが驚いた戦術変更にも「プレスをかけることが有効だと思えばかけるし、そうでないと判断した時にはプレスを書けないこともある。J2は異なる戦術を使うチームが多い。対戦相手によって、我々も帰る必要があるかも知れない」とプシュニク監督は何食わぬ顔。アウェイの戦い方というのではなく、相手を研究し、自分たちの良さを把握し、勝利を手にするために何をすればいいかという分析から導き出した采配でした。

 さらにハーフタイムには「10分たったら行け」と坂田に指示。そして、坂田、西田を立て続けに投入して主導権を奪回すると、その流れのままに勝負を決めてしまいました。「試合によっていろんな選択肢を持っている監督。あれだけ前から行く練習をしながら、試合では全ての場面でプレスをかけるわけではなかった。いろんな選択肢を持っていて、しかも何の躊躇も見せずに、それを使ってくる。まだまだ、いろんな引き出しを持っていると感じさせる監督」と話すのは古賀正紘。プシュニク監督の懐の深さが見えた采配だったように思います。

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 ただし、チームのベースを変えたわけではありません。変えたのはプレスに行く位置と、タイミング。自分たちが狙いとするゾーンにボールが入ってくると、ファーストディフェンダーが激しくボールにプレッシャーをかけ、それに連動して2人目、3人目が相手を囲いこんで数的優位を作ってボールを奪うのは、アビスパがこれまでに取り組んできた形。「ピンチらしいピンチと言うものはなかった」(尾亦弘友希)と言うように、前半は、ほぼ狙い通りにボールを奪っていたように思います。言わば東京V戦の戦い方は、自分たちのベースを応用したもの。突然の戦術変更にも選手たちが違和感なく対応できたのは、そう言った理由からでした。

 一方、攻撃面では縦に速くという意識が強すぎて、簡単にボールを失うシーンが多く課題が残りました。それでも、データを見ると、縦方向への意識が非常に高かったことが分かります(Football Lab http://www.football-lab.jp/fuku/report/)。これも昨シーズンとは大きな違い。チームの意識が確実に変化していることが窺えます。それが形になって現れたのは、決勝ゴールにつながったCKを産んだシーン。攻撃の始まりは、自陣右サイドの低い位置で宮本と堤が中島翔哉(東京V)を挟み込んだところから。そこへ坂田大輔が加わってボールを奪い返すと、流れるようにつないで決定機を作り出しました。関与したのは6人。出し手と受け手、さらに3人目の選手が連携しながら東京Vの左サイドを完璧に崩した形は、まさにプシュニク・アビスパが狙いとする形でした。

 併せて、運動量という点でも東京Vを上回っていたように思います。後半、東京Vのリズムになった時には、勢いを持って前に出てくる東京Vにスピードがあるように見えましたが、90分間を通してフィフティボールをものにしていたのはアビスパ。とにかく休みなく動いている日常のトレーニングは、フィジカル強化という点でも効果が感じられたように思います。総合的に見れば、まだまだ、プシュニク監督が目指すレベルには到達していませんが、確実に変化が感じられた試合。そして、東京Vがどう感じているかは別にして、アビスパが狙い通りに東京Vをはめて勝利を手にした試合であったことは間違いありません。

 さて、今日は山形を迎えてのホーム開幕戦。ホームでは積極的に仕掛けて勝ちに行くものという見方もありますが(もちろん、私もその1人)、開幕戦は東京Vに勝つためのサッカーをしたのであって、アウェイだからという理由で戦術に手を加えたのではありません。山形戦でプシュニク監督が見せるのも、開幕戦同様に山形に対して勝点3を奪うためのサッカー。新体制記者発表会の席で「戦術と実践のバランスを考えるタイプ」と自らを評したプシュニク監督が、果たして、どんなサッカーを見せるのか。勝敗はもちろん、そのサッカーの内容にも大きな関心が寄せられる1戦になりそうです。

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