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金メダルならず。しかし、戦いはまだまだ続く

120907_09.jpg 取材・文/西森彰

FIFA U-20女子ワールドカップ日本2012
準々決勝 U-20日本女子代表(ヤングなでしこ)vs.U-20ドイツ女子代表
2012年9月4日(火)19:30キックオフ 国立霞ヶ丘陸上競技場
U-20日本女子代表0-3(前半0-3)U-20ドイツ女子代表
得点者:ロイポルツ(1分)、マロシャン(13分)、ロッツェン(18分)

 この年代で初めてのメダルマッチに進んだU-20日本女子代表=ヤングなでしこ。その前に立ちふさがったのは、前回女王のU-20ドイツ女子代表だった。2008年チリ大会の3位決定戦以後、3世代をまたいで、ここまで11連勝中。次から次に新しい選手が出てくる女子サッカー大国である。日本は、その実力の前に自分たちの課題を痛感することとなった。

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 開始直後の攻防が、ドイツに勢いを与えた。猶本へボールが入るとここへ2枚、3枚がかりで襲い掛かる。そしてボールを奪うと、右サイドへ展開。日本もこれを奪い返そうと人数をかけるが、このプレスを外され、最終ラインの裏にボールを通された。そこに左サイドハーフのロイポルツが、持ち前のスピードを活かして襲い掛かる。
「『行ったよ』。そう、声をかけるべきだった」と悔やんだ高木ひかりは、そこへ走りこんだのが、自分がマークにつくべき相手だということにも気づいていなかった。何故なら、ドイツがこの日に限って両サイドハーフのポジションを変えてきたからだ。これまで右サイドでプレーしてきていたロイポルツが左サイドに回り、空いた右サイドハーフにはフォワードでプレーしていたロルサーが入った。
「一番スピードがあるのは8番(ロイポルツ)と聞いていたので、『自分のところが狙われたのか』と思い、裏をとられないように気を付けました」と高木。高いポジショニングからウイング然としたプレーを見せるチョイノウスキと、サイドバックとの連携を取りながら組み立てるヘゲナウアー。マッチアップが予想されたふたりへの対応策はしっかりと頭にあった。自分のところにロイポルツが回ってくるとわかっていたなら、試合開始からそれなりに対応できただろう。開始直後の混乱状態を巧みに利用したドイツの勝負強さが際立った。

 だが、大会無失点を続けているドイツと違い、超攻撃的スタイルを貫く日本は、これまでの4試合も1点ペースで失ってきた。“失点慣れ”もしている。「1点なら取り返せるチャンスがあった」と田中美奈が口にしたように、この時点では致命傷にはいたっていなかった。本当に痛かったのは、その後の二の矢、三の矢だった。
 2点目はサイドの攻防から、ドイツが蹴りこんだアバウトなクロスに、バックステップを踏みながら対応しようとした木下栞がかぶる。これをマロシャンが右足ですくい上げて、池田咲紀子の頭上を抜いた。1点とった後も、普通にゲームを進めていたドイツだったが、ここで2点のアドバンテージを活かすべく、自陣に引きこもり、ブロックを作って防ぐ。その結果、スケジュール上有利な日本との消耗戦を防げた。

 ドイツの守備が綻びを見せなかったのは、日本をよく分析し、この試合用の準備をしていたからだ。前述した選手起用の他にも、これまで攻撃の起点となっていたダブルボランチへのパスコースを徹底して切ってくる。さらに縦に強いDFが、西川明花、柴田華絵がボールを受けた瞬間、潰しに入り、日本は前にボールを運べなかった。
 出しどころがないため、苦しい横パスを続けさせられた木下は「ドイツは、わざとマークを空けて、パスを誘っていた」という。日本の女子選手の筋力では、欧米の選手のようにスピードのあるボールが蹴れないため、ボールが上空を飛んでいる間に動き出しても、ドイツの選手は間に合ってしまうのだ。
 そうやって、前にかける人数を減らしてもチャンスを作れるのがドイツの強みだ。スピードに乗ったカウンターで得たコーナーキックから、ロッツェンがヘディングで3点目を叩き込んだ。今大会のドイツチーム内得点王がフリーになってしまったのは、日本の戦術変更も影響していた。ドイツの高さとスピードを意識してこれまでのマンマークからゾーンディフェンスへ切り替えていたのだ。この場面では、それが裏目に出てしまった。前半は一方的なゲームだった。

 さすがに3失点は重くのしかかったが、ヤングなでしこの面々も心を折られたわけではなかった。後半に入ると選手間で工夫を施し、反撃の狼煙をあげた。ボランチの位置で受けようとするところを潰しに来ていることに気付いた猶本と藤田のぞみは、横の関係から縦に並び方を変えた。
「フォワードに直接入れてもらおうとも思いましたが、センターバックから反対の声が出ました。『ドイツのDFは縦に強い』と。そこで、私が前に出て、後ろはノンさん(藤田)に任せて」と猶本。トップ下に近い位置に入った猶本をドイツの選手は捕まえられず、ここが日本の攻勢地点になる。上がり目にポジションを取った。

 さらにセンターフォワードの西川、左サイドハーフの田中陽子、右サイドハーフに入っていた横山久美がそれぞれポジションを入れ替える。横山は左サイドのほうが得意で、西川も吉備国際大学では右サイドでプレーすることが多い。選手がそれぞれ、自分の持ち味を発揮しやすいポジションに移り、それが、ドイツの守備陣にマークの混乱をもたらした。ドリブルとショートパスを織り交ぜ、得意の地上戦で勝負に出たヤングなでしこは、数多くのチャンスを作った。
 惜しまれるのは、吉田弘監督が常識的な采配をふるったこと。柴田、田中陽と小兵が並んだ中央を気にして、新たなポスト役として道上彩花を入れたのだ。ターゲット役の投入は、ドイツにも目標を与えてしまった。前半、西川が完封されたように、道上も74分のワンチャンス以外は抑え込まれた。“この試合限定での正解”は選手たちが選んだ方法だったのではないだろうか。

 結局、日本はドイツからひとつもゴールを奪うことができず、準決勝での敗退が決まった。「金メダルを目指していたので残念」という猶本をはじめ、多くの選手は試合終了後に泣き崩れた。超攻撃型チームとという特徴を考えれば3点失ったことよりも、得点を挙げられなかったことが直接の敗因である。
 それ以外にエクスキューズを探せば、ここまで4試合、対戦相手に同格以上の相手がおらず、それがドイツの存在を必要以上に大きく見せた可能性はある。この日の敗戦を通じて、自分たちよりも身体能力で上回る相手の倒し方はインプットした。「もっと判断を早くすれば、全然やれると思う」(猶本)。優勝は消えたが、次のナイジェリア戦は、彼女たちにとって、本当に大切なゲームになる。

【U-20日本女子代表】
  GK: 池田咲紀子
  DF: 高木ひかり(86分/中村ゆしか)、土光真代、木下栞、浜田遥
  MF: 藤田のぞみ、猶本光、田中美南(25分/横山久美)、柴田華絵、田中陽子
  FW: 西川明花(62分/道上彩花)
【U-20ドイツ女子代表】
  GK: ラウラ・ベンカルト
  DF: レオニー・マイアー、ルイサ・ベンシンク、ジェニファー・クラマー、アンナベル・イェガー
  MF: カトリン・ヘンドリッヒ、ラモナ・ペッツェルベルガー、ニコル・ロルサー(64分/アニャ・ヘゲナウアー)、メラニー・ロイポルツ(74分/カロリン・シモン)
  FW: レナ・ロッツェン(80分/リナ・マグル)、ゼニファー・マロツァン


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