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貴重な経験とともに決勝トーナメントへ

120901.jpg 取材・文/西森彰

FIFA U-20女子ワールドカップ日本2012
グループA U-20日本女子代表(ヤングなでしこ)vs.U-20スイス女子代表
2012年8月26日(日)19:20キックオフ 国立霞ヶ丘陸上競技場
U-20日本女子代表4-0(前半1-0)U-20スイス女子代表
得点者:田中陽(30分、47分)、西川(52分)、猶本(84分)

 グループAを1位で抜けたチームは決勝までの全試合をナイターで戦える。ニュージーランド戦で引き分けに終わったU-20日本女子代表=ヤングなでしこは、第2戦を終えて1勝1分けの勝ち点4。勝利を絶対条件に、スイス戦に臨んだ。チームを救ったのは、左右両足を自由に使える田中陽子のFK。スイスのヤニック・シュベリー監督をして「(あのFKを止めるために)何もできることはないと思います」と脱帽させたそのキックは、金メダルへのタイムテーブルを定時に戻した。

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 ヤングなでしこを率いる吉田弘監督は、本来、できるだけ多くの選手にチャンスを与える傾向がある。だが、地元開催でかかる優勝への期待とプレッシャーは大きい。第2戦でグループ突破が決まっていれば行っていたというターンオーバーを控えて、主力組を起用してきた。夏場の連戦による疲労と、1位抜けできなかった場合のスケジュール。ふたつのリスクを天秤にかけた結果、後者を重く捉えたのだろう。
 一方、既にグループリーグでの敗退が決まっていたスイスのシュベリー監督は「若い選手たちにチャンスを与えたい」と大きくメンバー変更をしてきた。フォーメーションは、これまでの2試合と同じ、中盤を5人で広く守る4-5-1で予想どおり。当てはめる選手を代えただけで、楔のボールを1トップに当てて、そこに2列目の選手が飛び込むスタイルは変わらない。
 Bチームとも言えるスイスに対して、その時点でのベストメンバーを起用した(キャプテンの藤田のぞみは体調不良で出場しなかったが)のだから、試合のほとんどがスイス陣内で行われたのは当然だ。しかし、日本には勝ち点3が課せられている。一方的に攻め込むゲームでしっかり勝ち切るのは、普段とは違う難しさもある。いい形は作りながら、決定機を逸し続ける日本に、嫌なムードが漂ってきた。

 試合内容とはかけ離れた、肩の凝る状況を切り開いたのは、田中陽だった。「最初に点が入るまではきちんとバランスを見て、失点をしない」と自分に言い聞かせて、攻撃を前の選手に託していた。しかし、セットプレーとなると話は別。30分、ゴール前で得たセットプレーのチャンスを逃さない。右足で捉えたボールは「壁を越えたら入ると思った」というイメージどおり、ゴールの左隅に飛び込んだ。
 さらに田中陽は、後半の開始直後にも、再び直接FKを放り込む。「フェイントをかけようと思いました。横山が蹴ると見せかけて自分が蹴ろう、と」(田中陽)。ベンチの吉田弘監督からの指示も「横山」だったから、スイスGKのパスカル・キュファーが欺かれたのも仕方がない。左足でのキックへ慌てて反応したが、時すでに遅かった。
 プレッシャーから解放された日本は、途中出場の西川明花が振り向きざまのシュートで3点目を奪い、終盤には猶本光がPKを沈めるなど着実に加点。守っても、池田咲起子ら守備陣が最後まで集中を切らさず、無失点でしのいで4対0。力どおりの結果を残し、グループリーグを1位で突破した。

 スイスは前回大会に続き、3連敗で大会を去ることになった。しかし、シュベリー監督は大きな手ごたえをつかんだようである。0-4、0-5、0-2から、1-2、0-2、0-4と点差を詰めただけでなく、内容面でも進歩が見えたからだ。2年前のドイツでは“次のマルタ”と呼び声高いラモーナ・バッハマンを擁しながら「まるで何もできなかった」。それが、2試合で接戦に持ち込み、日本にも控え選手中心のメンバー構成で健闘をしたのだから。
 さらに日本で受けたファンの歓待、声援にも、感じるところがあったようだ。プレスカンファレンスルームにも、スタンドのサポーターと交換したユニフォームを着用して姿をあらわした。そして、日本チームを次のように称えた。
「今回対戦した日本チームに対して、祝福したいと思います。おめでとうございます。日本の選手は非常によくプレーしたと思います。あのFKは称賛に値します。このようにサッカーができたら、さぞや楽しいだろうと思います。日本のようにプレーすることが私たちの目標です」

 そして勝った日本の選手にも、それほど浮かれた様子は見られなかった。それぞれが失敗を許されない決勝トーナメントへ頭を切り替えていた。
 3戦続けて出場したチーム最年少の土光真代は「前半は相手選手の間で受けたり、サイドに展開したりができていました。しかし、後半は日本も足が止まり、スイスもブロックを作ってゴール前を固めてきて、自分たちのパスミス、コントロールミスが多かった。これから決勝トーナメントを戦う上で、簡単にボールを失っていたら勝てないと思います」。

 2年前のU-17女子ワールドカップ決勝、昨年のU-19女子アジア選手権で対戦した猶本は「(ワールドカップ決勝は)3点目を思い出します。あそこで粘っていたら勝っていたのに『あれを決めるか!』というようなスーパーシュート。その後、アジア(U-19女子アジア選手権)で1回やって勝っていますが、あの時は京川が最初に点をとっています。その京川がいない中でどう戦うか。韓国はシュートの本数自体は少なくても、決めるべきところは決めてくるので、そこが怖いところです」。

 そして2点を決めた田中陽も「(準々決勝は)挑戦者として臨みたいし、国立での日韓戦というのは自分たちの中でも大きいので、絶対に勝ちたいです。自分たちは前よりも、サッカーがわかってきたと思うし、相手をどう崩すかもわかってきました。自分たちの長所をどう出すのか、そして相手のカウンターに気を付けて、戦いたいと思います」。 「ニュージーランド戦の引き分けは、チームを引き締めるうえで必要なものだったし、あの勝ち点1はよかったと思います」と猶本が振り返ったように、3日前の苦い経験はチームに対して最大の良薬になったようだ。

【U-20日本女子代表】
  GK: 池田咲紀子
  DF: 中村ゆしか、土光真代、木下栞、浜田遥
  MF: 猶本光、田中陽子(53分/中里優、72分/坂本理保)、田中美南、柴田華絵、横山久美
  FW: 道上彩花(H.T./西川明花)
【U-20スイス女子代表】
  GK: パスカレ・キュファー
  DF: ナターシャ・ゲンゼッター、カリナ・ゲルバー、カロリン・マラウン、ノエレ・マリツ
  MF: アニャ・テュリヒ(55分/カリン・ベルネット)、リア・ベルティ、コラ・カネッタ(76分/ザリナ・シェンケル)、ミルニエ・セリミ、ナディーネ・フェスラー(63分/ファビエンヌ・ロシェ)
  FW: エセオサ・アイグボグン


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