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ヤングなでしこ、好スタート!

120825_01.jpg 文/西森彰

FIFA U-20女子ワールドカップ日本2012
グループA U-20日本女子代表(ヤングなでしこ)vs.U-20メキシコ女子代表
2012年8月19日(日)19:20キックオフ 宮城スタジアム
U-20日本女子代表4-1(前半1-0)U-20メキシコ女子代表
得点者:柴田(32分)、猶本(56分)、横山(77分)、田中陽(89分)、ウエルタ(90+1分)

 8月19日(日)、U-20女子ワールドカップが開幕した。
 地元開催で優勝を目指すU-20日本女子代表=通称ヤングなでしこは、初戦でU-20メキシコ女子代表と対戦した。会場となったのは、昨年の東日本大震災の被災地でもある宮城県営陸上競技場。なでしこジャパンの佐々木則夫監督、キャプテンの宮間あや、同僚の福元美穂らがアンバサダーとして駆けつけた。そして、9,542人の観客と多くのメディアを集めたこの試合で、ヤングなでしこは田中陽子、横山久美らレギュラー格の選手を前半は温存した上で、4対1の勝利。しっかりと勝ち点3を掴み、好スタートを切った。

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 メキシコのレオナルド・クエジャル監督は、これまでにも同国のA代表を率い、何度も日本と対戦してきた。ラテン系、しかもメキシコという明るいお国柄でありながら、試合後の記者会見では、常に寂しそうな表情で受け答えしている印象がある。つまり、日本に苦渋を飲まされ続けているということだ。ワールドカップ出場を賭けた大陸間プレーオフに始まり、アジアカップ前の親善試合まで、ほとんどいいところがなかった。

 そんなクエジャル監督の秘蔵子と言えるのが、ゴールキーパーのセシリア・サンティアゴだ。15歳でフル代表にデビュー、有望選手としてエリート育成対象となり、年代別代表でも正GKの座を与えられてきた。
 2年前のU-20女子ワールドカップドイツ大会でも、メキシコは日本と開幕戦で対戦。雨あられと飛んでくるシュートをサンティアゴが防ぎ続け“僅か”3失点に食い止めてドローに持ち込んだ。ここで得た勝ち点1を足がかりにメキシコは決勝トーナメントへ進出。一方、試合内容で圧倒しながら勝ち切れなかった日本は、リズムに乗り損なってグループリーグ敗退に追い込まれた。女子サッカー界にとっては前回大会の、そして日本サッカー界全体にとっては、五輪男子のリベンジ・マッチでもある。

 因縁を引きずるゲームは、序盤から日本の選手には固さが目立ち、パスが数メートル流れることもしばしばだった。メキシコのプレッシャーは緩く、ヤングなでしこ本来の力を考えれば、もう少しやれていいはず。明らかに不本意なデキだった。ただし、この世代の選手にとっては、1万人近い観衆やテレビカメラの前でプレーするのは、なかなか経験できない。
 そうした初戦の難しさも踏まえていたのだろう。吉田弘監督はベンチには田中陽子、横山久美という主力級の選手を残した。試合の前半がうまくいかなくても、ハーフタイムに修正が可能だし、膠着状態を打開できる選手がいる。ダブルボランチの藤田のぞみ、猶本光でチームバランスに対する保険もかかっていた。その一方で、こうした競争意欲をあおる、選手起用がプラス面をもたらした。仲田歩夢、柴田華絵の奮闘である。

 仲田は、仙台にある常盤木学園の出身。東日本大震災に被災した時には、寮の中にいたという。試合中のケガで松葉づえをついている仲田は、チームメートたちに助けられながら、ようやく避難場所へ移動した。そんな経験もあって、この被災地での開催に感じるところは大きい。年明けに和歌山で行われた、なでしこ合同合宿で「(自国開催、宮城でのゲーム)そういう機会がありそうだ、ということを先日聞きました。『少しでも恩返しができればいいな』と思っています」と話していた。
 左サイドバックから本来の位置であるSHに舞い戻ると、試合開始から積極的に仕掛け、得意の左足から何度か好機を作りあげた。飛ばした分だけ、最後はバテたが、力みの目立っていたチームメイトに自分を取り戻す時間を与えた。得点にこそ絡めなかったが、チームへの貢献は大きかった。

 そして、柴田は大量7名を送り込んでいる浦和レッズレディースの一員。6月にJグリーン堺で行われたアメリカ戦では第2試合に先発。チーム状態が良いとは言い難い中で、ひとり奮闘する姿は印象的だった。
 この日はトップ下で先発。仲田、田中美南にボールを捌いてサイド攻撃を促し、自らもメキシコゴールに迫った。そして、無得点が続き、田中陽、横山がウォーミングアップを始めた直後の32分、先制点を奪う。田中美南のパスをこれ以上ないタッチとターンでコントロール。相手DFが林立するゴール前でのシュートに持ち込んだ。ハーフタイムで交代を命じられたが、柴田個人としても、第2戦以降につなげる得点だった。

 後半から田中陽、横山を送り込んだ日本は、サンティアゴの守るゴールから4点を挙げた。内容は2年前とまるで違う。前大会は前がかり(というか前のめり)になって3点を奪ったが、その代償としてやはり3点を失っている。今回は、ほぼ全ての試合時間を支配し続けた。守備ではややバタつくシーンも見られたが、池田咲紀子の好守もあって、ロスタイムの1失点に抑えている。大会全体を考えればまずまずのスタートだ。
 やや気になるのが、そのロスタイムの失点と、個人技による得点への偏り。キャプテンの藤田は「第1戦の課題は既に共有しています。前の試合を振り返るより、次の試合に気持ちは向いています」と力強い。2戦目以降では大会の雰囲気にも慣れ、さらに素晴らしいサッカーが見られるはず。そこに期待したい。

【U-20日本女子代表】
  GK: 池田咲紀子
  DF: 中村ゆしか(87分/木下栞)、土光真代、高木ひかり、浜田遥
  MF: 藤田のぞみ、猶本光、田中美南、柴田華絵(H.T./田中陽子)、仲田歩夢(H.T./横山久美)
  FW: 道上彩花
【U-20メキシコ女子代表】
  GK: セシリア・サンティアゴ
  DF: アリアンナ・ロメロ、ビアンカ・シエラ、ケニア・サンチェス、バレリア・ミランダ
  MF: クリスティナ・ムリジョ、ナジェリ・ランヘル、ダニエラ・ソリス(58分/クリスタル・マルティネス)、タニャ・サマルシッチ、アリアナ・マルティネス(41分/ソフィア・ウェルタ)
  FW: ナタリア・ゴメスフンコ(77分/ジャミレ・フランコ)


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