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I神戸を破った浦和が、Bグループ突破決定、マイナビはちふれに痛恨の一敗

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前線から相手を負う菅澤優衣香。FWから始まる守備は、今季の浦和の武器だ。

西森彰=文、写真


なでしこリーグカップのBグループは、第6節を終えて、INAC神戸レオネッサが勝ち点13で首位をキープ。これを2位浦和レッズレディース、3位のマイナビベガルタ仙台レディースが追っていた。

I神戸と浦和の勝ち点差は2、浦和とマイナビの勝ち点差は7で、一見すると断然の2強ムードに見えるが、マイナビの消化試合数は1試合少ない。この7節は浦和が苦手としているI神戸との対戦、マイナビは伊賀フットボールクラブくノ一と並んで最下位にいるちふれASエルフェン埼玉との対戦。浦和が敗れ、マイナビが勝てば、その逆転の可能性は大きくなる。リーグカップ10節の中でもカギになる2日間になった。

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浦和に復帰した安藤梢。途中交代で退いたが精力的な動きで勝利に貢献した。

まず、土曜日、2位の浦和が首位のI神戸を駒場陸上競技場で迎え撃った。立ち上がりから連動した守備を見せる浦和に対し、I神戸も時間とともに反撃を開始。今季新加入のチェ・イエスルから杉田妃和とつないで前線へ。最後のブロックは中島依美、大野忍、増矢理花ときれいに崩し切って先制点を奪った。だが、皮肉にもこの1点を境に、スローダウンしてしまう。

前半終了間際の44分、ロングボールの処理をDFが誤り、菅澤優衣香の同点弾を浴びる。決して好調とは言えない状態でも最低限の組織が保たれていたI神戸だが、この失点で崩れた。「そもそも、試合の入り方から良くなかった」とキャプテンの高瀬愛実は言う。さらに「決めるべきところで決めきれず、ミスから失点した。私のポジションは攻守両面に関わっているし、そのどちらでも責任を感じています」と続けた。

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先制点を挙げた増矢理花だったが、ここからチームはスローダウンしてしまう。

ハーフタイムに杉田と伊藤美紀を下げて、京川舞と福田ゆいを送り込んだ松田岳夫監督。さらに後半途中で道上彩花、仲田歩夢と起用したが、ピッチに入った各選手の気持ちとは裏腹に、チームバランスは悪化の一途を辿った。カップ戦ということもあり、これまで積み上げてきたキャリアよりも、出場意欲を買ったというところもあるだろう。だが、逆にベンチに座す、田中明日菜の存在感を浮きだたせる結果になった。

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責任を感じる髙瀬愛実だが、個人の問題ではない。

両者の差が明確に出たのは、浦和の決勝点だ。塩越柚歩の仕掛けで再三、左サイドを突いていた浦和は、この場面でも左サイドでI神戸を自陣深くまで押し込んだ。必死に防戦するI神戸は、中島依美にボールを預けたが、そこに北川ひかるが一気に襲い掛かり、前の選手と二人がかりで数的優位を作り、前へのパスコースを封鎖する。

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先発復帰した北川ひかる。好守にブランクを感じさせない活躍を見せた。

「あそこは『絶対に前に蹴らせちゃいけない』と思って寄せました。ひとつ仕事ができたと思います」と北川。結局、中島のバックパスを受けた守屋都弥に、ボランチの猶本光が素早く寄せてボールを奪取。浦和の連動した守備が、白木星の決勝点を生みだした。

今季、積極的な戦いぶりが目につく浦和。フォアチェックに駆けずり回る中盤から前の選手の負担は小さくないはずだが、その戦いぶりに迷いは見られない。結果が出ないリーグ序盤戦から、この盛夏を迎えても、選手がこのサッカーを貫き続けられてきた理由はどこにあるのか。

石原孝尚監督は「チーム全体で『対戦相手を圧倒して勝とう』という気持ちがある」と言う。「確かに、守備に走る場面はありますが、高い位置でボールを奪い取れば、ゴールまでの距離が近い位置で攻撃を開始できます。FWとしても、守備に走る距離が短くて済むんです」と白木星。「良い攻撃をするための良い守備」という戦術への信頼があるから、日中の気温が35度にも届くほどの猛暑日に、前線からボールを追い込むことができるのだろう。

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決勝点を奪った白木星も、今季の戦いに手ごたえを感じている。

もうひとつは、若い選手の使い方だ。昨季はチームオーダーで、SB起用などもされていた塩越柚歩は、ユース時代は主にトップ下で活躍してきた攻撃面に特徴がある選手。今季、石原監督はトップ下やSBなど、ディフェンス面での負担が少ないポジションで起用している。また「監督からは、できない部分についてはほとんど言われません。『真ん中でもターンができる』とか、長所を口にしてくれます」という具合だ。

「チーム戦術の中で自分のプレーを出す」と「自分のプレーを出しながら、チーム戦術をこなす」というのは、実際は順番の問題だけなのだが、その伝え方ひとつで、パフォーマンスはこうも違ってくるということか。



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浦和、I神戸追撃に勝ち点3が必要だったマイナビだったが……。

前日の「浦和勝利」を受けて、マイナビに残された道は勝ち点3奪取のみ。控え選手7名中5名がFW登録の選手というオーダーからも、越後和男監督の意気込みは知れた。そして、その気合が乗り移ったマイナビイレブンは、ちふれを押し込んでいく。

「『マイナビは背の高い選手が多いし、セットプレーを与えないようにしよう』と話していましたが、コーナーキックを何本も与えてしまいました」(薊理絵・ちふれ)

それでもマイナビの圧力を受けながら、ちふれの選手もシュートコースには必ず体を入れてきた。ユース出身の佐藤楓花、竹ノ谷好美、西澤日菜乃らも奮戦。45分間を終えてゴールキックの数はちふれが9本、マイナビが2本。試合内容では大差がついていたが、シュート数は互いに1本ずつだった。

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先発に若いユース育ちの選手が食い込んできたちふれ。後半戦が楽しみだ。

1点が欲しいマイナビの越後監督は、ハーフタイムに浜田遥を小野瞳、59分にはカトリーナ・ゴリーを井上綾香と、FWを取り換える。さらに72分には、右SBの坂井優紀を西川明花に代えるとともに、左SB万屋美穂のポジションも高くとらせて、実質的に2バックと言える布陣で押し込みにかかる。

これに対してちふれは、ようやく疲れの見えてきた佐藤、竹ノ谷を57分でお役御免。経験豊富な鈴木薫子と松久保明梨を送り込んだ。鈴木は、ミッドフィールドで変幻自在に動いて、後ろの選手がパスを出しやすい位置に走り込む。この鈴木の動きが、前傾姿勢をとるマイナビから、一度ならずカウンターを呼び込む。

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中盤で躍動したちふれの鈴木薫子。彼女の投入が試合の流れを一変させた。

そして、アディショナルタイムに入った90+2分。鈴木のキープから、長い距離を駆け上がった薊にパスが通る。数分前に決定的なチャンスを逸していた薊だが、懸命に追いすがった万屋の1歩先で強烈なシュートを放った。これが劇的な決勝ゴールとなり、ホームの観客から拍手が贈られる。夕刻開催とは言え、30度を超える気温、50度を超える湿度の中で戦っていたマイナビに、そこから何かを起こす術はなかった。

浦和の勝利で、グループリーグ敗退が決まっていたちふれだったが、リーグ戦から惜敗が多く、この悪循環を止めようと、士気は高かった。決勝点を奪った薊は「リーグ戦でも試合の終盤に決勝点をとられるゲームが多かった。今日は逆に、こちらが点をとって勝てた。この先につながる勝利になったと思います」。

若い選手で前半を耐え、勝負所で頼れるベテランを投入。元井淳監督の采配も光った。「この試合を前にした今週の練習でも、どの選手が出てもやってくれると期待できるだけのプレーを見せてくれていました。結果的には、後から出た経験のある選手が仕事をしてくれましたが、先発した若い選手のパフォーマンスも低いものではありませんでした」(元井監督・ちふれ)。

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ちふれは薊理恵のゴールで、劇的な勝利を手にした。

今節の結果、Bグループは浦和がI神戸を交わして首位に立ち、また、2試合を残す3位ちふれとの勝ち点差を8に、3試合を残す4位マイナビとの勝ち点差を10に広げて、グループリーグ突破を確定した。I神戸は勝ち点13で足踏みしたが、マイナビが敗れたために、残り3試合で勝ち点を1でも獲得すれば、その段階で浦和に続く。4位に転落したマイナビは3連勝とI神戸の3連敗が絶対条件という苦しい立場に追いやられた。



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