INSIDE WEB

 

【なでしこ短信】日テレ、開幕戦はドロー


試合終了後、引き分けに終わり肩をおとす日テレイレブン

金子悟=文・写真

 26日、2016プレナスなでしこリーグが開幕。翌27日に行われた、昨季女王の日テレと浦和の開幕戦は1−1のドローで終わった。


前半、競り合う浦和・猶本(左)と日テレ・田中

 前半、浦和が前線から積極的にプレッシングを仕掛ける。序盤から試合の主導権を握ることに成功すると、7分、「落ち着いて空いているコースにシュートできた」浦和・後藤が冷静にゴール左隅に流し込み浦和が先制する。


後半、競り合う浦和・乗松(左)と日テレ・隅田

 球際の局面で後手に回っていた日テレが激しさを取り戻すと、後半は一転して日テレのペースに。そのきっかけとなったのが前線の若手選手だ。最前線で田中が体を張って起点となり、その田中をサポートする籾木、長谷川がドリブル、パスを織り交ぜながら浦和を攻めたてる。すると、74分、途中出場の隅田が混戦の中からゴールを決め同点に追いついた。

 その後スコアは動かずドローに終わったものの、「前線の若い選手が躍動してくれれば楽しいサッカーになる」(日テレ・岩清水)との言葉のとおり、開幕戦から見応えのある試合になった。若手選手の活躍は、この試合を視察していたU−20日本女子代表の高倉麻子監督に大いにアピールになったはずだ。そして、この日集まった2068人の観客も、「また見に来てもらえるような試合がしたい」(同・岩清水)という選手たちのプレーに、きっと満足感を得られたに違いない。

2試合を終えて勝ち点1。それでも、やっぱり、なでしこはリオへ行く(その3)

取材・文/西森彰

■自力出場権喪失。しかし、絶望的な状況ではない。

「自分のやりたいこととかではなく、勝つためだけにプレーしているので、結果がでないのが本当に苦しいですね。良い形はできるんですけれど、得点にならない。その少しのズレがなんなのか。そんなことを考えている場合ではないんですけれども。強引にでも合わせて、得点しないといけない。(内容は)悪くないとは思いますが、勝てないことが一番悪いと思います」と宮間。

PKを止めた福元。チームを敗戦から救ったビッグセーブよりも、最後のファンブルに気持ちは向かってしまう。「本当に最後、ああいう形で失点してしまったので、本当に悔しいです。(スカウティングどおり)PKを止められたことは良かったですけれども、勝つことが目標でしたから、失点も、勝つことができなかったのもとても悔しいです」(福元)。福元と交錯した熊谷も、やはり大勢の報道陣に取り巻かれながら、顔を上げて対応していた。

最後まで残って丁寧に質問へ答えていたのがSBの有吉。「(失点シーンは)あそこで、センタリングを上げさせて(しまったが)、中の枚数も揃っていました。でも100%ということはないので、そのあとの反応をどれだけ早くするのかということが重要だと思っていました。だから誰がどうこうではなく、DF全体の責任だと思います」。



ミックスゾーンで笑顔が見られなかったのは、日本の選手だけではない。PKを止められた韓国のチ・ソヨンもまた、母国のメディアを中心にコメントを求められ、辛い時間を過ごしていた。もうひとつの会場で行われていた北朝鮮と中国の試合も最終スコアは1-1のドロー。92分という、日韓戦よりも更に深い時間帯で中国の同点ゴールが生まれ、北朝鮮も勝ち点3を逃した。オーストラリアを除く4つの国はそれぞれ、苦い思いを抱えてこの夜を明かしたのである。

リオ五輪アジア最終予選に参加している6カ国では、(連日、勇敢な戦いを続けている選手、スタッフには十分な敬意を払うが)ベトナムの実力が他よりも2、3枚落ちる。従って、残り5つのチームが2枚の切符を争う構図だ。大会の第2節を終えて、勝ち点はオーストラリアが6。中国が4。北朝鮮、韓国が2。日本が1(ベトナムは0)。

問題は、直接対決を終えて日本より上位にいるオーストラリアと韓国。この両者の対戦で韓国が勝利し、残り2試合を両国が勝ち切れば、勝ち点が12と11。3連勝しても勝ち点10しか積めない日本の手には、リオ行きのチケットは届かない。

だが、その韓国が勝つべき直接対決が行われるのは明日3月4日の金曜日である。3時間キックオフ時間の早いデーゲームでターンオーバーしながらベトナムから9得点を挙げたオーストラリア。日本戦の疲労が残る韓国。両者の比較ではオーストラリアが圧倒的に有利だ。逆にそこまで有利な状況で韓国に負けたとしたら、その後で北朝鮮、中国とのゲームを残すオーストラリアの連勝も怪しい。

オーストラリアと韓国のゲームが思惑通りの決着になれば、自力勝負が復活する。勝ち点差3の中国とも、勝ち点差1の北朝鮮とは直接対決を残している。1差の北朝鮮は直接対決で勝てば逆転。3差の中国にも勝てば並び、ベトナム戦を残している日本は大量得点の可能性を残しているだけに有利なのだ(中国はベトナムから2点しか奪えていない)。こうなればどうにでもなる。


ライバルも決して楽な状況にはないのだ。なでしこジャパンの相手は、トーナメント表の星勘定ではなく、ここから先の対戦国だ。中国、ベトナム、北朝鮮。この3チームに90分以内で勝つ。昨年の女子W杯で90分間の6連勝を達成したチームが、今夏の本大会でアメリカやドイツに勝とうとしているチームに、アジアのチーム相手の3連勝は、決して無理な条件ではない。

現在、勝ち点1の第5位。自力での本大会出場権喪失。それがどうした。それでもやっぱり、なでしこジャパンはリオへ行く。

2試合を終えて勝ち点1。それでも、やっぱり、なでしこはリオへ行く(その2)

取材・文/西森彰

■PKストップから、岩渕の先制ゴール。勝利はすぐそこにあった。

しかし、ゴールが遠い。「ひとりひとりの距離感が近くなって、前に運ぼうという意識も強くなった。その点は良かったと思いますが、どこでスピードアップするのかという部分で問題があったのかなと思いました」(大儀見)。積極的にゴールへ向かって走る大儀見に釣られて、韓国の最終ラインが下がる。バイタルエリアを埋めざるをえない、トップ下のチ・ソヨンとイ・ミナまでが、アンカーのチョ・ソヒョンと共に、3ボランチ気味のポジションをとる。ペナルティエリア付近に強力な韓国の守備陣地が作られた。

トップ下の宮間は「前でボールに絡んでという指示でしたし、そこはできたと思いました。自分たちで落ち着いてボールを回せた部分もありましたし。ちょっと前に速かったのかなと。崩し切る前に、前のスペースが詰まってしまったりした」。大儀見も「相手の守りが固かったですし、ペナルティエリアのところでしっかりとブロックを作ってきたので、なかなかそこを崩すのは、そんなに簡単なものではなかったと感じました」。

その思いは、後方にいた選手もそれは同じだった。「ゴール前に至るまでの過程がよくなかったのかなと思います。シュートチャンスももっと作れたはずですが、アタッキングゾーンへ行った時にうまくいっていなかったと思います」(田中)。ゴール前を固める韓国の守備ブロックを引っ張り出そうと、日本の攻撃陣は定石どおりに遠目からでもシュートを浴びせる。

横山のシュートがゴールバーを叩き、そのリバウンドに大儀見が飛び込む。さらに、37分には宮間のCKから川村のヘディングシュート。前半だけで日本のシュート数は二ケタに達したが、得点に結び付けられない。

消極的な戦いを続けてきた韓国は、後半に入っても、ボールデッドになるとノロノロと動き、勝負を避ける。「最初の2試合で最低勝ち点2をノルマと考えていた」とユン・ドッキョ監督(韓国)。北朝鮮、そして日本とのドローは受け入れられないものではないと考えていた。

それでも、日本に攻め疲れの気配が見えてきた67分、昨年の女子ワールドカップカナダ大会で韓国のサイド攻撃を牽引していたチョン・ガウルを投入。遅まきながら、チ・ソヨンも徐々に前へ出てくるようになる。そして、69分、そのチョン・ガウルが入れたグラウンダーのボールが生んだ日本ゴール前の混戦で、近賀のプレーがハンドと判定され、韓国にPKが与えられた。



既に、デーゲームでオーストラリアがベトナムを9対0で破り、開幕2連勝。日本対韓国と同時刻にキックオフされた長居陸上競技場のナイトマッチでは、北朝鮮が中国を1点リードしていた。韓国に敗れると、日本との勝ち点差が4以上つくチームが3チームになる。この日、日本がリオから最も遠い距離に置かれた瞬間だった。

この絶体絶命の場面で福元が踏ん張る。ゴール右隅を狙った、チ・ソヨンのシュートを横っ飛び一発、ファインセーブ。さらに、このこぼれ球にも、詰めてくる韓国選手より速く触れて、事なきを得た。

これで日本の選手にスイッチが入った。疲労を抱えつつもボールを前に運んでいく。スタジアムの声援も大きくなった84分、川澄が右サイドから鋭いアーリークロスを入れる。「セカンドボールを拾ってのチャンスもありますし、いいところにボールを置けば、何かが起きるかもしれない。大儀見選手、岩渕選手の姿も見えましたし、思い切って上げてみました」(川澄)。

W杯の準決勝、決勝でも、貴重なゴールにつながった川澄のクロスが、この日も日本を救った。この日、59分という彼女にしては浅い時間からピッチに入っていた岩渕真奈が、GKの裏に入り込む。公式発表されている身長155センチのFWはGKがかぶったボールを不格好ながら、しかし、確実に韓国ゴールへ流し込んだ。待ちかねたゴールに、大歓声がキンチョウスタジアムを覆う。誰もが、なでしこの勝利を確信した。しかし……。

2試合を終えて勝ち点1。それでも、やっぱり、なでしこはリオへ行く(その1)

取材・文/西森彰

■初戦から6人を入れ替えた日本、消極的な韓国を攻め立てる

韓国の右サイドから上がったクロスへ、福元美穂が飛び出した。この日、再三に渡ってチームを救ってきたGKが、ここもしっかりとボールをキャッチした、かに見えた。だが、運の悪いことに、その落下地点にこのボールを弾き返そうとした熊谷紗希がいた。瞬間、ふたりは交錯し、福元の手からボールがこぼれ落ちてしまう。韓国のFWチャン・ソルビンのシュートが、必死に寄せた日本DF陣の間を縫って、日本のゴールネットに突き刺さった。

バックスタンドの一角に設けられていた韓国のサポーター席がお祭り騒ぎになった。後半も残り5分を切った段階での失点はあまりにも大きかった。それでも、青いユニフォームは、勝ち越しゴールを狙い、最後の力を振り絞って前に出た。しかし、僅かな時間に作り出した2回の好機をモノにすることができず、タイムアップの笛を聞いた。

2試合を終えて得点2、失点4、そして勝ち点は僅かに1。この時点で、なでしこジャパンのリオ五輪への自力での出場権獲得機会が失われた。



この日の日本は、初戦から先発メンバーを大幅に入れ替えてきた。GK福元に、近賀ゆかり、田中明日菜、熊谷、有吉佐織の4バック。ダブルボランチに川村優理と上尾野辺めぐみ。両SHは右に川澄奈穂美、左に横山久美が置かれ、FWは大儀見優季1枚。宮間あやをトップ下に配した4-2-3-1だった。

大儀見は「前回の反省を踏まえて、相手の陣内でサッカーをしようと、ラインの設定も高くなって、序盤からチャンスを作り、自分たちの攻撃ができていたと思います」。横山が「前回、あまり積極的にできなかったので、今回は積極的にシュートを打っていこうと思いました」。3枚のアタッカーと宮間の4人の距離感が近く、ペナルティエリア付近でボールが回る。

中盤ではアルビレックス新潟レディースでプレーしていた川村と上尾野辺のバランスが良く、セカンドボールをほとんど収めて2次攻撃につなげた。追加招集で直前合宿に滑り込み、そこでメンバー入りを勝ち取った田中明日菜も、指揮官のスタメン起用に応えた。プレッシャーのかかる局面でも、しっかりとつないでボールを放さず、時おり、前線にいいパスを通す。



一方的な日本ペースになった要因のひとつは「全然、相手が前から来なかったので、持ちやすかった」(田中)。特に前半、その傾向は顕著だった。日本が初戦で対戦したオーストラリアは、大会初日でフレッシュだったことに加えて2戦目がベトナム戦だったため、次戦への余力を残すことなく、フォアチェックをかけてきた。福元ほどビルドアップが得意でない山根恵里奈がターゲットになり、苦し紛れのクリアボールを拾われ、自陣に張り付けられた。

この日の韓国は、北朝鮮戦から中1日の日本戦で、しかも次戦が首位のオーストラリア戦。オープンゲームに持ち込める状況ではなく、普段は高い位置でプレーするチ・ソヨンも「日本でのプレー経験が豊富なので、日本チームの選手の特徴がよくわかっている。日本の中盤の力を考えていつもより後ろ目に位置していた」(ユン・ドッキョ監督・韓国)。そういった対戦相手の状況に加えて「ビルドアップが得意な選手が後ろに入っていたこともあって、そういうところからいろいろ変わったのかなと思います」(川澄)。

こうして前半は、韓国陣内でのハーフコートゲームになった。韓国のカウンターには「ボールがないところでしっかりリスク管理をできていたし、DFと協力しながらうまく守れていたんじゃないかなと思います」(福元)。サイドバックも各人がオーバーラップをかけるのではなく「前線の選手には、きついけれど2度追いをしてもらって、できるだけDFラインにギャップを作らないようにじっくりじっくり行っていました」(有吉)。リスクを排除しながら、できるだけコンパクトな陣形を保った。


12345678910111213141516171819202122232425262728293031 03