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出場権はたった2つ。それでも、なでしこはリオへ行く(その3)

決戦を前にしても選手の表情は明るい

取材・文/西森彰


いよいよ、なでしこジャパンを含む6つのチームが集結。2月28日(日)には、大阪・堺市内のホテルで各チームの指揮官が顔を揃えて記者会見が開かれた。また、土・日曜日で公式練習が行われ、各メディアには冒頭15分間が公開された。ベトナムはしっかりトレーニングに費やしたが、中国はランニングシューズでピッチコンディションを確認しただけ。チームスタッフを含めて、互いに記念撮影をするなどリラックスした雰囲気を漂わせている。中1日続きのスケジュールの捉え方、大会への入り方はチームによってまちまちだ。

なでしこジャパンの仕上がりは上々だ。金曜日の練習では、指揮官にスイッチが入り、追い込むような練習内容になった。ホテルに戻ったのは21時半を回っていたという。土曜日夜に振り出した雨に、選手が「一日遅いよ」と思ったかどうか。オーストラリア戦前日の練習冒頭では、レクリエーションメニューの中で笑顔がこぼれていた。

「ここまでチームとしていい準備ができていると思いますし、石垣島のキャンプと比べてもとてもいい状態に仕上がっていると思います」と話すのは、海外組の熊谷紗希(オリンピック・リヨン)。


熊谷紗希の頭にはオーストラリア対策がしっかりとイメージされている。
熊谷紗希の頭にはオーストラリア対策がしっかりとイメージされている。


初戦のオーストラリアは、世界ランキングでは日本、北朝鮮に続いてアジアナンバー3の強豪。デ・バンナを初め、スピードがあり、強さもあるFWがストロングポイントだ。いっぽうで展開力ではやや劣り、ボランチが両ウイングへのボールを配球できなくなると、ロングボール一辺倒となる。どちらにしても相手のFWをどう捌くかがポイントだ。

「まず、スピード勝負にならないように、裏のスペースを自分たちのスペースにできるようにしながら、前で戦えればと思います。ずっと長いボールを蹴ってばかりだと、むしろ相手の思う壺。つなげるところはしっかりつないで、時間帯や状況を頭に入れて戦いながら、しっかりリスクマネジメントもしたいです」(熊谷)


各キャンプ地では多くのファンから声援を送られた。きっと大阪でも……。
各キャンプ地では多くのファンから声援を送られた。きっと大阪でも……。


女子ワールドカップ・カナダ大会ではベスト8で対戦。日程的に不利だった日本が、1-0のスコア以上に圧勝した。この時は対戦相手のオーストラリアが、日本以上に暑さを苦にした部分もある。しかし、それ以上に両SBの積極的な動きが、相手ウイングの動きを制限し、その足を潰した。

「ただ前に上がっていくだけだとリスクを背負うだけなので、良いタイミングで上がって相手に嫌な攻撃を仕掛けて、良いタイミングで下がる。シュートまで持っていければカウンターは食わないと思うので、良い攻撃で追われるようにやっていきたいと思います」(有吉佐織・日テレ・ベレーザ)

トレーニングプロセスは順調で、対戦相手の分析も進んでいる。さらに、予選へ臨む姿勢にも過信はまったく感じられない。世界大会で3大会連続でファイナリストになったチームが、経験豊富なメンバーで、しかも、もっとも間違いが起こりにくい、総当たりのリーグ戦で地域予選を戦うのだ。恐れる必要はない。

出場権はたった2つ。それでも、なでしこはリオへ行く。


世界大会のファイナリストにとって、アジア予選は恐れるほどの舞台ではない。
世界大会のファイナリストにとって、アジア予選は恐れるほどの舞台ではない。

出場権はたった2つ。それでも、なでしこはリオへ行く(その2)

第2次キャンプは沖縄・中城を拠点に。国内組での競争が激しくなっていく。

取材・文/西森彰


海外組をそれぞれの所属チームに戻して、国内組だけで組まれた沖縄合宿も、順調にスケジュールを消化していった。海外組がいなくなっても、トレーニング時の緊張感は維持されたままま。「それだけ意識の高い選手が揃っているということだと思います」とキャプテンの宮間あや(岡山湯郷Belle)。少しでもレベルの低いプレーが出ると、それが際立ってしまう。どの選手も、このチームから落ちこぼれまいとする。急激なピッチでチームは仕上がっていく。

ベテラン勢も、これまでの成功体験と比べながら、確実なステップアップを実感していた。「今までずっとチームに関わって感じているのが『ラストで一気に磨きがかかるのがなでしこ』。その強みは出せるのではないかという期待感はあります」と川澄奈穂美(INAC神戸レオネッサ)。「石垣島の時より、コンディションが上がってきましたし、ここでは連携面の確認もできている」と岩清水梓(日テレ・ベレーザ)。

この沖縄合宿でも、メニューは順調すぎるほどに消化できたのだろう。佐々木則夫監督の「たまにはやるか」の一言で、一般ファンへ公開された状態では異例のセットプレー練習も行われた。さらに、スローインからの攻撃、そして守備など、受験で言えば一夜漬けで最も効果が上がる部分にも早くから手をつけた。こうした細かいところを大会の始まる2週間前から取り組めたのは、完成度の高いチームの強みだ。


沖縄での第2次キャンプでは琉球大学の協力で男子のスピードを体感した。
沖縄での第2次キャンプでは琉球大学の協力で男子のスピードを体感した。


2日間のオフを経て、2月22日(月)から、最終決戦の地・大阪で最終予選のメンバー+αの人数で合宿を開始した。ここでは、予選へ向けて集中を高め、また細かい対戦相手への対策を施すためだろう、練習は非公開時間が長くなった。「ノリさんがうまく緊張状態を作ってくれている。私たちはプレッシャーを感じ過ぎないようにやりたいです」と大野忍(INAC神戸レオネッサ)。

アジア最終予選に向かう20名が発表されたのは、25日の木曜日だった。登録20名中16名が前年の女子ワールドカップ・カナダ大会のメンバーだ。「特に直前キャンプの中で若い選手が存在感を発揮してくれたが、2枠というのは簡単ではない。経験を重視して、このメンバーを選びました」と佐々木監督。2月29日から3月9日まで10日間で5試合をこなす強行日程では、大会の中でチームを大幅に立て直すことはできない。であれば、これまで蓄積されたバリエーション豊富なフォーメーションを活かさない手はない。


男子はU-23選手権として開催されたが、女子は純粋な五輪予選。ボールはアディダス製になる。
男子の五輪予選はU-23選手権として開催されたが、女子は純粋な五輪予選。ボールはアディダス製になる。


今予選のメンバーから漏れた増矢理花(INAC神戸レオネッサ)、猶本光(浦和レッズレディース)、村松智子(日テレ・ベレーザ)の3名は、すぐにラマンガ国際トーナメントに参加するU-23代表として追加招集された。「アジアを相手に控えメンバーとして戦うより、ヨーロッパの強豪と対戦経験を積むほうが、将来にプラス」という考え方もある。今回の選考外に、過剰なショックを受ける必要はない。そして選ばれた人間には、当然ながら、その名誉に伴う義務がある。

「自分が持っている力を出すだけ。先輩たちを見ながら成長していきたい。日本代表としての誇りを持って、オリンピック出場権の獲得に関われるような選手になりたい。サッカー選手である以上、オリンピックのような舞台は夢。女子サッカーが盛んになってきた長野から、そこに飛び立てたらいいと思います」(横山久美・AC長野パルセイロ・レディース)

海外組では、大儀見優季(フランクフルト)、熊谷紗希(オリンピック・リヨン)と共に、ジョーカーとして招集された岩渕真奈(バイエルン・ミュンヘン)にも注目が集まる。故障明けの状態だから、本人はもどかしい思いが強いだろうが、数分の出場で結果の出せる選手。決して焦ったり、無理をすることなく、本大会に向けてしっかりと仕上げながら、できる部分で仕事をしてもらいたい。

「どんな試合でも点をとれるように準備がしたいし、どの試合でも点をとりたい。少しでも長く、ピッチに立てるようにしっかりやっていきたいと思います。プレッシャーは少なからずありますが、勝たなければいけない試合なのは間違いない。日本でできるのは幸せなことですし、しっかりとなでしこジャパンの強さを証明できたらいいかなと思います」(岩渕真奈)


日本のジョーカー、岩渕真奈。その決定力に注目が集まる。
日本のジョーカー、岩渕真奈。その決定力はリオでも注目を集めるはず。

出場権はたった2つ。それでも、なでしこはリオへ行く(その1)

これまでの年明けキャンプに比べて、選手の体はキレていた。

取材・文/西森彰


女子サッカーのリオ五輪出場権を賭けたアジア最終予選が、いよいよ2月29日(月)から大阪・長居で開催される。昨年の女子ワールドカップ・カナダ大会に出場したオーストラリア、中国、韓国と北朝鮮、ベトナム、そして日本の6カ国で競われる。「出場権は、たった2つ」というキャッチコピーどおりの厳しい戦いが予想される。

シーズンインを前に、この予選を戦うなでしこジャパンは、石垣島、沖縄、そして直前の大阪と年明けから3回にわたるキャンプを行なっている。1次キャンプメンバー発表当日、佐々木則夫監督は「海外組を招集して走るだけではもったいない。初日からボールを使った練習をする。その前段階の身体作りはある程度、やっておいてくれると思う」と念を押していた。2月末に始まる予選を念頭に入れれば、中途半端な状態で臨むほうがおかしい。果たして各選手はコンディションを上げてきた。

「チームとしては非常に雰囲気がよく、いい練習ができていると思っています。シーズン立ち上げと言うことで多少フィジカル的な要素も含めてやっていますが、チームの共通イメージを持つ意味で、非常にいいトレーニングができていると思っています。全員が同じイメージを持って、非常にいいキャンプができていると思っています」

自分にも他人にも厳しい大儀見優季(フランクフルト)からも、及第点の言葉が口をついた。緊張感を持ったトレーニングができたのは、経験の少ない若手選手たちが招集された意味を十分に感じ取り、そこに向けて準備してきたからだ。大ケガから返り咲き、昨季のなでしこリーブでベストイレブンに選出された村松智子(日テレ・ベレーザ)は「例年なら、年末年始のオフは友人たちと過ごす時間もあるのですが、今季は年明けすぐに合宿が組まれているし、我慢しました」。


石垣島の第1次キャンプは、3日目から紅白戦。チーム作りは、スタートダッシュに成功した。
石垣島の第1次キャンプは、3日目から紅白戦。チーム作りは、スタートダッシュに成功した。


佐々木監督も、選手の仕上がりには手応えを感じていた。第一次合宿2日目には、ほとんど休みを入れないボールを使ったインターバルトレーニングを実施。ようやく息が上がった選手に「この程度で息を切らしているようなら、まだまだだな」と声をかける時も笑顔が見えた。そして「第一次合宿の後半にやる予定」と口にしていた紅白戦を3日目の午前中から、同日の午後には男子高校生相手のトレーニングを組み込んできた。

「明日以降、天気が崩れそうだから、ピッチコンディションの良いうちにやっておきたかった」と、指揮官は予定を繰り上げた理由を説明したが、選手のコンディションが一定レベルになければ、スケジュールの前倒しはできない。また、アクシデントが起きたら、すぐに選手を入れ替えられるホーム開催のアドバンテージもあっただろう。石垣島合宿終盤には、スクランブル布陣での紅白戦さえ行われた。


女子W杯カナダ大会不参加組の中島依美。石垣島第一次合宿最初の紅白戦からレギュラー組でプレーした。
女子W杯カナダ大会不参加組の中島依美。石垣島第一次合宿最初の紅白戦からレギュラー組でプレーした。


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