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【なでしこ短信】INAC神戸、見せ場作れずドロー


前半、中盤で競り合う千葉・川村(左)とINAC神戸・澤

金子悟=文・写真

 プレナスなでしこリーグ・レギュラーシリーズ第17節。レギュラーシリーズ残り2試合で首位に立つINAC神戸と4位千葉の対戦は、点の取り合いとなった前回の対戦とは対照的にスコアレスドローで終わった。


前半、ボールを競り合うINAC神戸・伊藤(左)と千葉・筏井

 前半、球際の競り合いで優勢の千葉が優位に試合を進める。手数をかけずサイドに展開すると早めのクロスで神戸ゴールに迫る。だが、わずかに精度を欠きゴールには至らない。一方のINAC神戸は、局面で後手にまわり苦しむ時間帯が続いた。


後半、ドリブルで攻めるINAC神戸・川澄

 後半に入ってもペースがあがらないINAC神戸は、鮫島、川澄、高瀬を投入。後半30分過ぎから、ようやく主導権を握り攻勢に出たが決定機を作ることはできなかった。

 結局試合は互いに無得点に終わった。これで、千葉の引き分けはレギュラーシリーズで8つ目。勝ちきれない試合が続く。INAC神戸は前節の仙台戦で3失点していただけに無失点は評価できるものの攻撃面で課題が残った。23日の試合で日テレが勝利したため、首位INAC神戸と2位日テレの勝ち点差は再び1に縮まった。次節レギュラーシリーズ最終節は27日に行われる。

【なでしこ短信】日テレ、決め手欠きドロー


試合終了後、サポーターにあいさつする日テレ・岩清水(左)ら日テレの選手たち

金子悟=文・写真

 プレナスなでしこリーグ・レギュラーシリーズ第16節。勝ち点1差で首位を追う2位・日テレと、5位・浦和の対戦は、日テレが優位に試合を進めながらも決め手を欠き、スコアレスドローに終わった。


前半、浦和・池田(右)にシュートをはじかれる日テレ・阪口(左)

 前半、パスの分断を狙い激しくプレッシングをかける浦和に対し、前線への長いパスを織りまぜ好機を作る日テレ。前半終了間際には、阪口が抜け出しビッグチャンスを得るが、GK池田の好セーブにあいシュートはゴール右に外れた。


後半、日テレゴールに迫る浦和・清家(中央)

 エキサイトシリーズ上位リーグ進出条件のレギュラーシリーズ6位以内を確保したい浦和。後半に入り、清家を走らせるなどカウンターから得点を狙うも、日テレの固い守備に阻まれ決定機すら作らせてもらえず、最後まで得点の匂いはしなかった。

 結局試合はスコアレスドロー。この結果、首位・I神戸と日テレの勝ち点は3差に開いた。I神戸に2戦2勝と勝ち越している日テレだが、残り2試合となったレギュラーシリーズの優勝は厳しくなった。

U-19日本女子代表、北朝鮮との死闘を制し、2大会ぶり4回目の優勝!

2大会ぶり4回目の優勝を飾った、ヤングなでしこ=U-19日本女子代表。決勝は、PK戦までもつれる死闘の末、北朝鮮を破った。

取材・文/西森彰

 2年前と同じ南京で開催されていたAFC U-19女子選手権中国。準決勝で韓国を破り、来年、パプアニューギニアで行われるU-20女子ワールドカップの出場権を得ていたU-19日本女子代表=ヤングなでしこは、北朝鮮との120分+PK戦の死闘を制し、2大会ぶり4度目の優勝を飾った。

 AFC U-19女子選手権最終日。韓国と中国の3位決定戦(韓国が4-0で勝利)が終わり、決勝戦に出場する両チームの試合前練習も終わった。あとは決勝を待つだけとなった江寧スポーツセンタースタジアムを厚い雲が覆い始める。そして、鈍く光っていた赤い月が雲間に姿を消すと、一気に大雨と雷音がスタジアムを襲った。

 ピッチ脇の運営スタッフ、そしてカメラマンもそれぞれ雨対策を施すために、いったん屋外エリアから退避する。ピッチ脇には、両チームの入場を待つ優勝カップだけが寂しく取り残されていた。時おり、稲光が芝を照らす状況だったから、日本であれば試合開始時間を先送りしていたかもしれない。しかし、ここは中国・南京の地。19歳以下のアジアナンバー1を決める一戦は、定刻の現地時間20時に予定通りキックオフの笛が鳴った。

 日本は、グループリーグ最終戦の中国戦、準決勝の韓国戦と同一のスターティングメンバーで戦っていた。高倉麻子監督は、この決勝で清水梨紗、隅田凛、西田明華をベンチスタートとし、代わりに松原志歩、宮川麻都、三浦成美を送り込んだ。

「いろんな選手を使っていきたいとは思っていましたし、以前にも言いましたが、ファーストチーム、セカンドチームと分けているわけではありません。調子のいい選手を使おうと思って、ああいう形になりました」(高倉監督)

 6-0で大勝したウズベキスタン戦から3試合ぶりの決勝で先発。前日までは固さも見られたという。「今日は韓国戦と違うメンバーが出ていましたが、昨日の練習でもガチガチに緊張していました。そこで、そういう選手には積極的に声をかけようと思っていました」と乗松瑠華。今大会、キャプテンシーを十二分に発揮してきた主将の心遣いが効いたのかも知れない。

 フレッシュな3人を含めて、日本のイレブンは、北朝鮮を試合開始から圧倒した。左右のSB・北川ひかると松原のふたりも加わり、チーム全体でパスをつなぎ、一歩遅れで追いかける北朝鮮を前後左右に振り回す。

「今日の相手は蹴ってくるチームと分析していました。まず、守備ではしっかりヘディングで弾き返す。攻撃ではサイドチェンジをすればフリーになるので、そこに自分が関わればチャンスになる。今日は運動量も多く、そういうプレーができたことは良かったと思います」(北川)

 細かくポジショニングを修正してパスコースを増やし、ワンタッチプレーやトリックプレーを織り交ぜる。東アジア選手権に出場したA代表も含まれる北朝鮮を翻弄した。14分、鮮やかなパス交換で崩し、左サイドで長谷川唯がフリーに。30分には三浦のスルーパスに小林里歌子が抜け出し、GKと1対1の場面を作った。

 ハーフタイムを挟んで長谷川に代わって西田が入った日本は、51分、その西田が籾木のパスを受け、ニアサイドに強烈なシュート。56分にもコーナーキックの混戦から杉田妃和、小林とつないで北朝鮮ゴールネットを揺らすが、これもオフサイドの判定……。

 1点入れば、その後に訪れるゴールラッシュまで、簡単に想像できる。だが、日本は画竜点睛を欠いた。高倉監督は「ゲームを支配している間に得点が取れなかったのが、ゲームを苦しくした原因だと思います」と振り返る。



 チャンスを逸し続けた日本は、後半、そのツケを払うことになった。

 前半から飛ばしていたこともあって、時間とともに寄せが遅れる。交代カードを切った北朝鮮に自陣深くまで攻め込まれるようになってきた。58分、セットプレーからこの試合初めてチャンスらしいチャンスを許すと、63分には今大会の得点王、リ・ウンシムにシュートを浴びる。さらにその2分後にもリ・ヒャンシムに左サイドを破られる。

 劣勢に陥りかけたところで、高倉監督は籾木を下げて前線に清家貴子を投入。再度、攻撃に推進力を加える。一進一退の攻防の中で、ボランチの宮川が足を痛める。これに気付いた日本の選手は互いに声をかけながら、ポジションを移す。足を引きずるようにトップ下へ上がる宮川の位置へ、サイドハーフの三浦が絞り、三浦の位置へ小林が下がる。4-4-1-1に布陣を変えて、選手交代までの時間を稼いだ。

 既に2枚のカードを切っていた日本だが、この状況では最後の1枚を使わないわけにはいかない。最後には肩を借りてベンチに退いた宮川に代わり、隅田凛がピッチに入った。ところが、ハイボールを頭でクリアして無防備になった隅田目がけて、北朝鮮のキム・ウンファが頭から突っ込む。イエローカードで済んだのが不思議なほどのラフプレー。昏倒した隅田の元へ駆け寄ったスタッフから「×」印が示され、隅田の決勝戦はたった5分間の出場で終わってしまった。

「苦しい時間帯が来るとは思いましたが、後半のアクシデントもあってそれを完全に弾き返すことができなかった」(高倉監督)

 10人で戦わざるを得なくなった日本を救ったのは、GKの平尾知佳だった。北朝鮮の選手が放つシュートは、日本の守護神が伸ばす手、そして足によって、ことごとくゴールへの道を塞がれていく。「すごい勢いで攻められていましたけれど『今日の自分はいける!』と思っていました。だから、少しでも多く、チームを助けたかった」と平尾。

 高倉監督も「彼女は非常に力がありますし、劣勢な時間帯で頼りになるGKだと改めて思いました」。グループリーグの中国戦ではキャッチングミスから失点していたが、この日はそれを補って余りあるパフォーマンスを見せた。



「思い切りやろうね!」

 キャプテンの乗松が、延長を前にした円陣の中で笑顔を見せながら、スタンドの3階記者席にまで届くほど大きな声をかける。U-20女子ワールドカップへ出場できなかった年長組。U-17女子ワールドカップで優勝した年少組。絶望と歓喜。対極を経験したふたつのグループが、ひとつのチームとして円陣を作る。掛け声と共にそれが解かれると、乗松は一緒に戦う9人の仲間に、ひとりずつ声をかけてハイタッチし、最後に自分のポジションへ向かった。

「今回、改めて感じたようにアジアを勝ち抜くのは簡単ではありません。前回大会を経験したメンバーが、それを下の子たちに伝えながら、やってきました。苦しい時間帯が続きましたが、この状況をチームのみんなに最後まで楽しんでほしかった。負ける気がしませんでしたし、みんなで楽しみながらできました」(乗松)

 北川も乗松と同じく、予選敗退した前回大会の経験者。コスタリカでのU-17女子ワールドカップでも金メダルは手にしたものの、故障に泣いて力を発揮したとは言い難い。ここまで年代別代表では、悔しい思いを抱えてきた。今季は特別指定選手として、浦和レッズレディースでも活躍し、その経験を自信に変えた。

「以前と変わってきたのは、メンタル的なところですね。自分に少し自信を持てるようになってきました。そこが成長なのかなと思います。以前は慌てて周りが見えない部分も多かった。今では、それよりもそこでプレーしていることに誇りを持てている。自分のプレーに対する自信にもつながっているのかなと思います」(北川)

 前後半合計30分間の延長戦も、スコアは動かなかった。「今まで足が攣ったことがないのに、後半の時点で両足が攣っていた」杉田は、マッチアップする相手を十分に引きつけてからボールを離し、少しずつ消耗させた。後半から投入された西田は、DFが弾き返したセカンドボールのほとんどに絡んだ。レギュラータイムから続く平尾のビッグセーブもあって、日本は最後まで失点ゼロで耐え抜いた。


予選落ちした前回大会の悔しさをバネに復権。来年のU-20女子ワールドカップへ、アジアチャンピオンとして臨む。


「厳しい延長戦を戦ってベンチに帰ってきた選手たちに『予定通りだ』と声をかけました。大会期間中、『必ず延長120分、PK戦までもつれることはある』と選手に話していましたし、PKも練習していました。流れが非常に悪いまま、PKになりましたが選手はリラックスしていました」(高倉監督)

 ここまで来ると指揮官にできることは、それほど多くない。「ゲームの中でコンディションのよさそうな選手を選んで『思ったところに蹴ってこい』と」声をかけて送り出した。

 先攻の北朝鮮は、ふたりが成功。後攻の日本も、西田、小林が決めて食らいつき、2対2。3人目のキッカーを迎える。ここで北朝鮮の3人目、途中出場のチョ・リョンファのキックを、指揮官が「PK戦では必ず1本止めてくれると信じて送り出した」平尾が体に当てる。ゴールへと転がりかけたボールへ飛びついて、ストップ。「前回のアジア予選では交代していたので、今回は最後まで戦い、ピッチの上で優勝の笛を聞きたかった」という北川が、ゴールの右隅にきれいに蹴り込む。均衡が崩れた。

 動揺を隠しきれない北朝鮮のウィ・ヨンシムは、右外へ外して2本差。4人目のキッカー、三浦のキックは、まるで2011年ワールドカップ・ドイツ大会の熊谷紗希と同じように、GKが触ることも難しい左上隅へ正確にけり込んだ。

 北朝鮮のGKはゴールの前に大の字に倒れた。劇的な勝利を飾った日本の選手も、動きは鈍い。疲労困憊で動けないのだろう。選手同士で勝利を分かち合った乗松が、汗か涙かをユニフォームで拭いながら、ベンチの高倉監督、大部由美コーチらの元へと駆けていく。

 U-19日本女子代表、通称ヤングなでしこ、2大会ぶり4度目のアジア制覇だ。



 この決勝の120分間(+PK戦)は大きくふたつに分けられる。つまり、素晴らしい内容のサッカーを披露した前半と、素晴らしい精神力で勝利を引き寄せた後半だ。指揮官の評価が高いのはどちらか。

「私たちが求めているサッカーは、前半のサッカーです。ただ、サッカーは一面ばかりではなく、悪くなった時にどうやって相手を倒すか。そこへの持っていきかたについても、選手たちには話しています。後半にちょっとばたつきましたが、選手はそこを『耐える時間帯だ』と考えて、戦っていました。だから、後半の勝負に対する気持ちについても、非常に満足しています」

「気持ち」というキーワードについては、コスタリカU-17組の杉田も口にしていた。U-17とU-19では、フィジカルの部分で大きな差がある。それを克服できたのは「強い気持ち」だと。

「U-19では『スピードでは勝てない』と思ったり、『フィジカルが強い』と思ったりしたところもありました。でも気持ちで負けないことが、プレーの部分にもつながっていました。気持ちが強ければスピード、フィジカルで上回る相手にも負けないで、サッカーができると思います」(杉田)

 大会最優秀選手に選ばれた小林も、ハートの強さを垣間見せた。4得点を挙げてFWとしての仕事をしただけでなく、守備でも前線からの追い込み、時には最終ライン付近まで戻ってのカバーリングで、後ろの選手を大いに助けた。文句なしの受賞だ。

「小林は非常に高いポテンシャルを持っていると思います。派手さはありませんがテクニックを持っているし、状況判断も優れている。大事なところで点を決めてくれたと思いますし、今日も攻撃の起点になってよく仕事をしてくれたと思います」(高倉監督)

 高校チーム所属選手として選ばれているのは、常盤木学園の同僚・市瀬菜々とふたりだけ。この大会が始まる半月前にインターハイが行われた影響があるかも知れない。ふたりがこのチームの海外遠征から駆け付けた宮城県予選で常盤木は敗れ、全国大会の出場権を失っていた。そのふたりがU-19代表に選ばれ、優勝決定の瞬間をピッチ内で迎えた。

 禍福は糾える縄の如し。そして、人間万事塞翁が馬。


4得点の小林里歌子は大会MVPを獲得。高校女子サッカー組だが「うまい選手たちとプレーできて嬉しい」。


「彼女は、フル代表でもプレーできるか?」と問われた高倉監督は、通訳を待たずに即答した。

「Nobody knows.」

 そして付け加えた。

「彼女の努力次第だと思います。そして、選手のポテンシャルはみな同じだと思います」

 来年のU-20女子ワールドカップへ。リオ五輪へ。そしてその先の未来へ向かう競争は、始まったばかりだ。

「下の年代の世界大会で優勝した子たちも、非常にいいものを持っています。またチームに戻って競争が始まるので、これから私自身がやるべきことをやっていきたいと思います」(乗松)

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