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U-19日本女子代表は、いよいよ世界大会の切符を賭けたステージへ

U-17ワールドカップを制した高倉麻子監督が”2階級制覇”に挑む。
取材・文/西森彰

 中国の南京で行われているAFC U-19女子選手権で、U-19日本女子代表=ヤングなでしこが、世界大会の切符まであとひとつと迫った。

この大会には8カ国が参加している。日本は、オーストラリア、ウズベキスタン、そして開催国の中国と同一グループ。8月18日(火)に行われたオーストラリアとの初戦を、小林里歌子の2ゴールで制すと、中1日で行われたウズベキスタン戦も、園田瑞貴を皮切りに、清家貴子のハットトリックなど6得点で圧勝する。そして、8月22日(土)、日本同様、2連勝でグループリーグ突破を決めている中国とのゲームに臨んだ。

最終戦にかかっているのは1位抜けの名誉だけ。準決勝に向けたコンディション作りを考えれば、どちらのチームもムリはしたくないところだろう。実際、中国の監督は試合後、「準決勝からが本当の勝負」と語った。

 だが、こうした短期決戦では、ひとつのゲームで流れが変わる。実際、6チームの総当たりで行われた前回大会で、日本は2戦を終えて首位に立っていた。だが、3試合目の韓国戦で敗れるとチームから自信が失われ、残り試合でも勝つことができなかった。このケースをとっても、若い年代のチームはマネジメントが難しい。消化試合だから楽をしていいというわけではないのだ。

「おっしゃるとおり、前回大会は3戦目で崩れたということがある。今日も選手たちに『チーム全員で勝ちに行く』と言っていました」

高倉麻子監督は、きっちりと勝ちに行く意思を告げた。

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 日本は4-4-2をベースにしながら、状況に応じて4-3-3へ移行。3-4-2-1で力任せに押し込もうとする中国を、自由にさせない。「簡単に勝てる相手とは思っていなかった。最初は日本の狙い通りに運べた」と高倉監督。守備では、最前線の小林里歌子と籾木結花から始まる素早い寄せが、中国の自由を奪った。攻撃では、右の西田明華、左の長谷川唯が、手薄なサイドへ切り込み、相手陣内でのプレー時間を延ばしていく。

 そんな中、中国の連係ミスを小林が突く。GKがビルドアップをしようとDFに預けたボールが、やや流れたのを見逃さなかった。「最初はコースを限定しながら行こうと思っていたのですが、ボールが流れていたので思い切っていきました」。そのままボールを奪うと相手ゴールへ突進。抑えたシュートで、中国ゴールの左隅へ突き刺す。

「『先制点をとってチームに余裕を持たせよう』と思っていたので、それをとれたことは良かったと思います。調子は悪くないし、結果も残せているので、このまま行きたい」(小林)

これで日本は波に乗った。

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 後半に入っても、日本は積極的な試合運びを見せる。杉田妃和、隅田凛のふたりがサポートに走り、ボールを奪われてもすぐに守備へ切り替える。CBの乗松瑠華、市瀬菜々のふたりも意欲的なパスを通していく。64分には、清水梨紗に守備を託し、前に出る機会の多かった西田が、PA内でボールを受ける。左足のシュートは「GKに当ててしまったけれど」(西田)威力が勝り、こぼれ球は中国ゴールの中へ。点差は2点に拡がった。

 ここで日本は籾木を下げて三浦成美を投入。長谷川との位置を入れ替える。中国も70分、3人目の選手交代を行い、追撃態勢を整える。前線の高い選手に長いボールを放り込んで、ここに拠点を作り、周りの選手がフォローに駆け上がる。

前半は、早い攻守の切り替えでこれを封じ込んできた日本だが、酷暑もあってプレスが弱まってきた。「守備の部分でスライドが遅れた。その結果、間を通されたり、日本の選手が後追いしたりする部分が多かった」(西田)。最終ラインも「今までで経験したことのなかったような中国の勢いを感じました。慌ててしまってクリアも甘く、それを拾われた」(市瀬)。71分、右サイドのクロスをFWに通され、後ろから遅れ気味にチャージした清水のプレーが、PKをとられて2-1とされる。

日本も75分、西田の突破で得た右CKから、流れたボールを乗松がシュート。GKが弾いたところに、流れの中で北川ひかるが残っていた。先日の女子ワールドカップ・オーストラリア戦で岩渕真奈が見せたようなプレーで押し込む。その後、今大会初先発・平尾知佳のキャッチミスから1点を失った日本だが、辛くも3-2で逃げ切った。

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グループリーグ期間中は午前練習のみだったが、中国戦翌日は意欲的に2部練習を行った。
所属チームに縛られないフラットな関係を、選手たちは作り上げている。

「中国のパワーが強いのはわかっていたのですが、後半はちょっとバタつきました。最後の20分間は、中国が攻撃のパワーを増して、少し押し返す力がありませんでした。選手は若いので、経験不足というか、ゲームの運び方が幼かった」(高倉監督)

2点差の状況を2度も作り上げながら、それまでと同じようにゲームを続け、中国に反撃の機会を与えてしまった。これは大きな反省事項だ。「PKぐらいから、バタバタし始めていまい、チーム全体で前へ蹴るのか、つなぐのか。意志が統一されていませんでした」と乗松。最終ラインだけでなく前目の選手も「苦しい時間帯に守備の選手が頑張っていたので、私たち前の選手もボールをしっかりと収めて、自分たちの時間を作れたらよかったと思います」(小林)と反省しきりだった。

しかし「僅差でありましたが、勝てたということを次につなげていきたいと思います」と高倉監督。キャプテンの乗松も「最後の最後まで体を張って、最後の1点は守り切った。勝ち切れたことが良かったと思います」。楽勝ではなく、苦戦を経験したうえでの勝利というのが、ここから先の段階で大きな糧になるだろう。

 2年前、同じ南京で行われた(当時は6カ国総当たり)この大会で、日本は2勝1敗2分けで韓国、北朝鮮、中国の後塵を拝して4位。カナダで行われた、U-20女子ワールドカップへの出場権を日本は逃した。これは、2007年以降、日本女子サッカー界のフル代表、各年代別代表で唯一のアジア予選敗退だった。

「2年前を経験した人が多いので、あの時の借りを返すという意味でも、世界大会の切符を必ず掴む」と乗松。まず、今日の韓国戦で2年前の借りを返す。



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