INSIDE WEB

 

アビスパ福岡 2014シーズン総括 その7

141130_06.jpg
【中倉一志=取材・文・写真】
新時代の始まり
新しい歴史に向かって歩き始めた。11月25日に行われた「アビスパ福岡2014シーズン報告会」は、それを強く感じさせるものだった。同報告会には、アビスパ福岡をスポンサードする企業の他、地元財界、メディアからも多数の人たちが参加。会場となったグランドハイアット福岡ボールルームは立錐の余地もないほどだった。そこは、2014シーズンを支えてくれた感謝の意を表す場所であると同時に、株式会社システムソフトと、株式会社アパマンショップホールディングスを新たな経営陣として迎え、これから生まれ変わるアビスパ福岡をお披露目する場所。その熱気は例年を大きく上回るものだった。

その中で、アビスパ福岡を支援する新たな組織として「アビスパ福岡グローバルアソシエイツ(AGA)」の概要が発表された。「子どもたちに夢と感動を、地域に誇りと活力を与える」ことを活動理念とし、アビスパ福岡と福岡県民・市民とのネットワーク作りを進めるための無料の会員制組織。より多くの人たちにアビスパ福岡を知ってもらい、スタジアムに足を運んでもらうことを促進することを目的としている。アパマンショップホールディング社の大村浩次代表取締役社長が議長を務める。

具体的な取り組みとしては3つの大きな柱を掲げる。ひとつは「積極的な情報発信と、地域の人たちの声を経営に活かす」こと。具体的には、福岡県を「A」「VI」「S」「PA」の4ブロックに分割し、その下に65の支部を設置。各地区で地域会議を開催することで地域の声を吸い上げるとともに、アビスパ福岡の情報を届けるとしている。また「後援会の募集」も行う。AGAはすそ野を広げるための無料組織だが、AGAの活動を通して、より積極的にアビスパ福岡を支えてくれるひとたちを増やすこともAGAが担う役割のひとつだ。そして、これらの活動を円滑に行うために「戦略的プロモーション活動」を推進する。既に、レベルファイブスタジアム周辺にはノボリが立ち、市内でも「子どもたちに夢と希望を 地域に誇りと活力を」というポスターを見かけるが、それも戦略的プロモーションのひとつだ。具体的な活動は来年度からということだが、これまでとは違った様々な試みがなされることになる。

また、大村浩次議長(株式会社アパマンショップホールディング代表取締役社長)は、自分の夢と前置きした上で、20000人を集客できる魅力あるクラブづくりを推進すること、J1の上位で戦える環境を整えること、積極的に地域貢献・社会貢献活動を展開すること、クラブスタイルを確立するとともに、それを大切にしたいこと、その結果として、将来は100臆規模のビッグクラブにしたいと述べた。そして、次のように締めくくった。
「ご存じの通り、JCの方を中心にした方々が50万人の署名を集めていただいたことで始まり、コカ・コーラウエスト様を始め、7社会を中心とした皆様が、本当にアビスパを支えてくださった。その努力を無駄にしないように、その想いと実績を、もっと掘り起こし、ストックして、アビスパの歴史として残したい。そして、過去の20年間を支えてくださった方たちに感謝の念を持って活動していきたい」

また、大村議長は、来年度のチーム運営費に触れ、「既に選手、監督等にお渡しできる予算は、おおよそ倍くらい集まっている」とも話した。システムソフト社の資本参加、アパマンショップホールディング社の経営参加が臨時株主総会で承認されたのは9月。その後の動きを見るにつけ、報告会での発表の内容を聞くにつけ、そのスピード感と、内容の具体性が、これまでとは全く違うことが強く印象に残る。それは、両社の経営参加は、単なるアビスパ福岡の経営危機を救ったということだけではなく、新しい歴史を作るために大きな舵を切ったことを意味するものでもある。
2014シーズンは終わったばかり。だが、アビスパ福岡は新しい歴史に向かって既に歩き始めている。

※このレポートは、有料WEBマガジンfootball fukuokaに掲載されたものを転載したものです。前後の記事はfootball fukuokaでお楽しみください。


アビスパ福岡 2014シーズン総括 その6

141130_02.jpg
【中倉一志=取材・文・写真】
プシュニク監督との2年間
様々な事を考えさせられた日々。傍らで取材を続けていた自分にとって、マリヤン・プシュニク監督と過ごした2年間は、そんなイメージを伴って思い出される。何事に関しても自分の意見を真正面からぶつけてくるプシュニク監督との毎日は非常に刺激的で、その問いかけに対して、自分は何をすべきなのかを、いつも考えさせられていたように思う。そして、この2年間を整理することがメディアとしての仕事なのだと思う。それは、プシュニク監督と交わした最後の約束でもある。

成績という点で言えば、その数字が表わしているように、結果をアビスパにもたらすことはできなかった。それはプシュニク監督本人も認識していることであり、今シーズン限りでチームを去ることを決断した理由のひとつになっている。また、今シーズンの最後の2か月を見ると、選手個々に対する影響は別にして、彼が残そうとしたものが、チームとして残ったのかという点については、疑心暗鬼にならざるを得ない部分もある。最終的な成績と試合内容に限って物を言うのであれば、プシュニク監督を評価しないという意見を私は否定しない。

しかしながら「プロは結果がすべて」と言われる中で、2年連続で下位に低迷しながら、これほどまでにファン、サポーターから愛され、別れを惜しまれた監督を私は知らない。そこには、アビスパが、経営上で最も困難を極めた2年間にチームの指揮を執ってくれたことや、経営上の問題を抱えるクラブが、監督としての力を発揮できる環境を十分に整備することができない中で、チーム再建に心血を注いでくれたことに対する感謝の気持ちがあったことは間違いない。

そして、プシュニク監督の最大の功績は、プロサッカークラブとは何かということを、ファン、サポーター、そして福岡の人たちに発信し続け、それを自らの行動で示し続けたことにある。初来日から1週間後、プシュニク監督は私の取材ノートに氷山の絵を描いた(「プシュニク監督が伝えたかったこと」参照)。チームに所属する選手は水面上に出ている氷山の一角。水面下に隠れているのは、クラブフロント、クラブ職員、ファン、サポーター、メディア、そしてアビスパに関わる様々な人たち。チームが大きくなるためには、水面下の部分が大きくならないといけないし、選手たちには多くの人たちから支えられている責任を持ってプレーしなければならないと説いた。

プロサッカークラブと、それに関わる人たちは、ひとつのファミリー。それぞれに、それぞれの責任と役割があり、それぞれが責任と役割を果たすことでクラブは大きくなっていく。それを2年間に渡って説き続けた。そして大事なことは相手をリスペクトする気持ちと信頼関係。それを自らの行動で示し続けた。単なるサービスとしてファン、サポーターと近かったわけではない。そうした理念と行動があったからこそ、近い関係が生まれ、多くのファン、サポーターからの支持を受けた。そして、最終戦終了後のセレモニーではスタンドに大きなダンマクが掲げられた。「Thank you God Father MARIJAN」。それが、彼と過ごした2年間のすべてを表していた。

選手たちに対して、プロとは何かを徹底して説き続けたことと併せて、プシュニク監督が発信し続けたことは、プロサッカークラブとしての原点。プシュニク監督は改めてそれを福岡と、アビスパに関わる人たちに示したと言える。そして、昨年、契約を更新した際に「私はいつかクラブを去る時が来る。だからこそ、自分が築いたものがクラブに残り続ける仕事がしたい」と話していたプシュニク監督。それを現実のものにするために、この2年間を単なる思い出にせず、この別れを感傷的なものせず、彼が残した精神を、アビスパとアビスパに関わる人たちが、将来に向けてつないでいかなければならない。

※このレポートは、有料WEBマガジンfootball fukuokaに掲載されたものを転載したものです。前後の記事はfootball fukuokaでお楽しみください。


焼酎BAR修斗より公開生放送

141201_01.jpg

INSIDE-FUKUOKA(USTREAM)は「福岡の町で頑張っている人たちを、福岡の町に住む私たちが応援しよう」をキャッチフレーズにお送りする福岡発スポーツ情報番組です。毎回、素敵なゲストをお迎えして、アビスパ福岡情報とともにスポーツの魅力をお届けします。今週の放送は12月3日、20:00から「焼酎BAR修斗」より、公開生放送でお送りします。

【次回放送日時】12月3日(水)20:00~
【視聴URL】 http://www.ustream.tv/channel/inside-fukuoka1309
【配信内容】
アビスパ福岡2014シーズンを振り返る
MC/中倉一志(オフィスイレブン)
【焼酎BAR修斗】 中央区今泉1-23-4 新天神ビル2F

アビスパ福岡の2014シーズンは残念ながら16位の成績に終わりました。また、私たちに強力な印象を残してくれたマリヤン・プシュニク監督もチームを去り、来シーズンはフロント、チームともに新しい体制でスタートすることになります。まずは、今シーズンの整理をして、新たな気持ちで来年を迎えたいと思っています。焼酎BAR修斗で、タブレット、スマホ、PCの前で、是非、皆さんのご参加をお待ちしています。

※ゲスト、ならびに配信日の変更は、番組視聴ページ、Twitter、FACEBOOK等で告知します。
 Twitter acount @nakakurahitoshi
 FACEBOOK https://www.facebook.com/h.nakakura
※番組へのご要望、お問い合わせ、ゲストの方へのご質問等は、以下へメールでお寄せください。
 inside-fukuoka@office-eleven.co.jp


プシュニク監督インタビューに寄せて


【中倉一志=文・写真】
昨日(11/19)、弊社が運営するUstreamスポーツ情報番組「INSIDE FUKUOKA」で、マリヤン・プシュニク監督のロングインタビューを放送した。プシュニク監督は、シーズン終了とともにスロベニアに帰国するためスケジュールが詰まっていたが、ファン、サポーターのために、練習の合間を縫って時間を取ってくれたことでインタビューが実現した。時間にして30分弱。貴重な時間をいただいたことに、この場を借りて感謝の意を表したい。また、読者の皆さんには、プシュニク監督の最後のメッセージを、是非、ご覧いただきたい。(スマホでの視聴は文末を参照のこと)

さて、プシュニク監督がチームを率いた2年間のうち、私の最も印象に残っている出来事は、来日してから1週間後の1月21日に、プシュニク監督に2度目の単独取材をさせてもらった時のことだ。この日は、私が監督にとって最も必要な能力だと考えているチームマネジメントについて、プシュニク監督が、どのように考えているのかを聞くことが目的だった。すると、彼は私のノートに氷山の絵を描いて、チームとは何かを話し始めた。

「チームとは氷山の一角のようなもの。水面下の部分はフロント、クラブ職員、スポンサー、サッカースクール、スクールに通う子供たちのご両親、ファン、サポーター、メディアらが作っているものであり、その部分が水面上に現れる部分を高く保っている。そして、水面の上に出ているのは11人の選手たち。だから、我々にとって、いかにファン、サポーターが大切なのかを選手たちは理解しなければいけない」

それは、水面下の部分が大きくならなければ、チーム全体も大きくならないということでもある。改めて、この2年間を振り返る時、プシュニク監督は、それを訴え続けていたのだと思う。物事の良し悪しをはっきりと言わずにオブラートに包んで話す日本人にとっては、プシュニク監督のように、何が良くて、何が悪いのかをはっきりと口にする話し方は、時として耳が痛いこともあった。だが、その言葉を改めて振り返る時、それは、都合の悪いこととして見て見ぬふりをしていたことを、明確に言い当てられていたからだと自分自身を振り返って思う。

もちろん、誰にも長所と短所があるように、プシュニク監督の全てが正しかったわけではないだろう。だが、プシュニク監督がクラブを去ることになったいま、彼が伝えたかったことを整理し、取捨選択し、これからの自分たちの行動に活かすことが大切だ。福岡に関わる多くの人たちに強烈な印象を与えただけに、喪失感のようなものを感じている人も少なくはないだろう。しかし、それはプシュニク監督が望むところではない。

「アビスパをサポートしてください。アビスパを愛してください。そして、アビスパがJ1にいくために全てを成し遂げてください」
これがプシュニク監督が最後に残した私たちへのメッセージ。プシュニク監督が望んでいるのは、様々な困難に立ち向かって前を向いて進んでいくこと。それを実行することが2年間への恩返しだと思う。


【注】
※文中にあるプシュニク監督インタビュー(2013.01.21)全文は、以下のアドレスでご覧になれます。
http://football-fukuoka.jp/blog-entry-648.html

※プシュニク監督のインタビュー動画のスマホでの視聴方法は、以下の通りです。
(視聴方法)
1.視聴にはUSTREAMアプリが必要です。
2.アプリを立ち上げます
3.検索マークをタップし、キーワードに「INSIDE FUKUOKA」と
  入力して検索
4.番組が表示されたら「録画」をタップ
5.放送のアーカイブが表示されるので
  「INSIDE FUKUOKA 188(再放送)」をタップ
6.バッファング後、番組が始まります。
※インタビューは14:55から始まります


プシュニク監督が伝えたかったこと

141120_04.jpg
【中倉一志=取材・構成・写真】
いま振り返るとき、来日して1週間後に行ったインタビュー取材で、プシュニク監督が答えてくれた内容に、この2年間のすべてがあったように思う。それを記憶にとどめるために、改めて全文を掲載する。

内容 練習終了後の個別取材
日時 2013年1月21日(月)
場所 雁の巣球技場

Q:監督の仕事は多岐に渡りますが、その中でも、チームをどのようにマネジメントするのかということが非常に重要だと考えています。そういう観点で、監督がチームをマネジメントする際に、最も大切にされていらっしゃることは、どのようなことなのでしょうか?
「大切なことは、選手たちがチームとして振る舞い、考えるということです。ですから、まず最初に、チームとしてどのようにプレーするかということを教え、その上で、攻守両面において、個人をどのように表現していくかということを教えていかなければなりません。けれど、いま話したチームというのは、チームの形のひとつの側面にしかすぎません。
ここで、少し表現を広げてみましょう。『チーム』とひと言で言っても、それは漠然としていてモザイク模様のようなものです。そのモザイク模様を作っているひとつ、ひとつのパーツを見ていくと、それはクラブフロントであり、クラブ職員であり、強化担当者であり、さらには、選手、チームスタッフ、キット、観客、ファン、サポーター等々です。そのモザイクのひとつ、ひとつが噛み合って、綺麗な映像を映し出すことが大切です。ただ、11人の選手がボールを蹴っているだけではいけません。
ちょっと紙とペンを貸していただけますか。これから、ある絵を描いてみたいと思います。これが海(海面)。その上には大きな氷山が見えています。けれども、それは氷山の一角にすぎず、水面下には、その何倍もの大き部分が隠されています。それは、クラブフロント、クラブ職員、サッカースクールの子どもたち、その子どもたちのご両親、スポンサー、ファン、サポーター、メディアらを意味しています。そして、それらが水面上の部分を高く保っているのです。そして、水面の上に出ている部分はピッチでプレーする11人。ですから、私がチームをマネジメントする時には、我々にとって、ファン、サポーターが、いかに大切なのかということを選手に理解させます。そして、アビスパのロゴのように、働き蜂のようなプレーを展開することで、多くの観客が選手たちの姿に共鳴し、それをメディアの方々に取り上げていただくことで、ポジティブなエネルギーを生み出すことができます。そうやって、すべてが噛み合うことでチームは上手く回っていきます。それがさらなる力になって、選手たちが全員で攻撃し、全員で守備をするということにつながっていくのです」

Q:サッカーですからいろんなことがありますし、勝ちもあれば負けもあります。上手くいかないとき、何が大切になるのでしょうか?
「自分たちの目標と達成すべきことを、全員が十分に理解しておくことが必要です。予期しないことは必ずやってきます。そして、それはいつも驚きを伴うものです。けれど、たとえどんなことがあっても、それが、とてつもなく大きな出来事であっても、私たちは目標に向かって突き進んでいかなければいけないからです。私はいつも、『情熱とハートを持って、自分の役割を理解し、それをやり遂げ、前に向かって進まなければいけない』と話しています。それぞれが、そういう振る舞いをすることによって、お互いの信頼関係が生まれ、その結果、お互いを助け合うエネルギーが相乗効果となって現れるからです。
けれど、サッカーは非常にタフなスポーツです。時として、すべてはトップチームの成績だけによって判断されてしまうことが、ままあります。ですから、選手たちには、自分たちが氷山の一角であることを意識させて、アビスパというクラブを代表している責任感を感じてもらいたいし、みなさんの期待や希望をしっかりと感じて仕事をしたいと思っています。ただ、言うは易しで、それを実行するのは簡単なことではありませんが・・・。
いま、平均入場者数は約5000人ですが、これが平均で10000人になれば、選手の戦う気持ちは、もっと強くなるでしょう。そして、戦う気持ちが強くなることで、結果も、内容も良くなるはずです。ですから、スタジアムに足を運んでいただいた皆さんに、よりよいものを提供し、それによって、更に多くの方がスタジアムに足を運んでいただき、それがまた、選手たちの戦う気持ちを高めるという連鎖反応を起こしたいと思っています。
必勝祈願での玉串拝礼では、まずは自分が受け取ることでエネルギーをもらい、それを捧げることで私もエネルギーを生み出しました。それと同じように、クラブ内外で相乗効果を生み出して、もっと、もっと大きなポジティブなエネルギーを生み出すことができればと考えています」



123456789101112131415161718192021222324252627282930 11