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地道に重ねれば上は見えてくる(武田 英二郎)


【中倉一志=取材・構成・写真】
内容 練習終了後の個別取材
日時 2014年8月28日(木)
場所 雁の巣球技場

◎武田英二郎選手;
Q:ここまで5戦負けなしです。
「ここ最近、失点が少なくなってきて、地道ですけれども勝点を積み重ねてプレーオフ圏内とは勝点1差になりました。一時期5位になって、そこから連敗しましたけれども、立て直して地道に勝点を重ねれば、こうやって上位が近づいてくるんだと思いますし、3連敗した時も、その内容はそんなに悪くなかったので、いまもそれを続けているだけですけれども、5戦負けなし、失点1というのはすごくいいと思っています。監督がホームでは勝点3、アウェイでは勝点1を絶対に持ち帰ろうと言っていますけれども、2試合で勝点4という計算で積み重ねていけば、絶対に上は見えてくると思います」

Q:実際、湘南戦で引き分けた後は、ホームで勝って、アウェイで分けるという試合が続いています。
「そうですね。自分は退場してしまいましたけれど、湘南戦で粘って引き分けたのが大きかったんじゃないですかね。あそこで負けていたら4連敗でしたし、あんないい試合をしていながら負けてしまったらもったいなかったので、自分としては、すごく助けてもらったと思います。愛媛戦は、正直、勝てたと思うんですけれども、でも、あそこで勝っていたら、その次の試合もどうなっていたか分からないので、それは結果論だと思っています。そして、やはりジュビロ戦で上の相手に勝ったことで、自分たちがやっていることが正しいと、チーム全員が同じ想いになれたのが、すごく大きかったと思います。長崎は、そんなにいいわけではなかったし、この前の試合も完ぺきではなかったですけれども、結局5試合負けていませんし、勝点は取っていますし、いい状況だと思います。負けていないのは神さん(神山)のセーブもあるんですけれども、それまでは、神さんがいても大量失点していたわけなので、チームはすごく良くなってきているのかなと思います」

Q:試合中に、選手同士で話して修正できるようになって来たのも大きいですね。
「やろうと思えばすぐに4バックもできますし、ワンボランチも、ダブルボランチもやれますし、城後さんはトップ下からボランチ、他のポジションも何でも出来ます。坂田さんも斗子でもやれることを考えると、選択肢があります。自分のところで言うと、トップ下の位置でやるのか、(中原)秀人とダブルボランチを組むのかというのは、流れが良ければ、そのまま高い位置でやるし、悪かったらダブルボランチにしたりと変えることが出来ます。最初のうちは、お互いにどんなプレーをするのか分かり切ってなかった部分もあったわけですけれど、チームとしてお互いを理解出来てきているかなと感じています。今はボールを回せる時間も増えて来ていますし、以前でしたら、蹴って苦しくなるというのが多かったんですけれども、今は相手を見て回して、そこから裏へ行って、そこでまた作ったりと、いろんなことが出来ています。それに、今はボールを取れるのが早く、すぐに取れることが多いので、結構やりやすいですね」

Q:次節は横浜FC戦。負けなしを続けているチームです。
「上手いし、パスを回せるチームなので、自分はそういうチームに対して頑張らなくちゃいけないですね。監督もそういうところを期待してくれていると思うので、自分としては、自分のがんばりが大事かなと思います。個人的に横浜は地元なので、友達も、家族も見に来てくれるので、自分のプレーをしっかりと出して勝ちたいですね。スタジアム自体もやりやすいイメージがあるので楽しみです」


真夏の祭典、なでしこリーグオールスター2014は大盛況に

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西が丘のイベントスペースは夏休みを過ごす家族連れで大いに賑わった

西森彰=文・写真


 今年のなでしこリーグオールスターは首都圏に戻っての開催。8月23日(土)、開門時刻の16時30分を前にした味の素フィールド西が丘には、既に観客の長い列ができていた。バックスタンド裏のイベントスペースもたくさんの家族連れが溢れかえっている。

 イベントスペース内に設置されたなでしこリーグのテントでは、伊賀FCくノ一所属のオーストラリア女子代表エリース・ケロンド・ナイトとタミカ・バットをはじめ、各クラブのきれいどころ(?)が浴衣姿を披露。若手選手がグッズ販売に声を張り上げるチームあり、看板選手のサイン会を行うチームありと思い思いにアピールしていた。日本各地のB級グルメを集めた屋台村も、売り上げは上々の模様。

 試合前には、くまモンや出世大名家康くんなど人気のゆるキャラとなでしこリーガーのハンデキャップPK戦も行われた。“パフォーマンスキャプテン”の荒川恵理子(AS埼玉)に伝授されたダンスからのキックを、猶本光が恥ずかしさのあまりバーの上に吹かしたり、海堀あゆみ(I神戸)が、懸命に浮かして蹴ったさのまるのシュートを容赦なく止めたりするたびに、スタンドから大きな笑い声が起こる。両親に連れられて来場した小さな子供たちも大喜びしている。


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慎重にボールをセットする、ゆるキャラ界のエース、くまモン



 メインイベントとなるオールスターは、日テレ・ベレーザ、浦和レッズレディース、アルビレックス新潟レディースにASエルフェン埼玉、伊賀FCくノ一を加えたなでしこポルカが、レギュラーシリーズ優勝の岡山湯郷Belle、浦和の優勝を止めたINAC神戸レオネッサなど(他にジェフユナイテッド市原千葉レディース、ベガルタ仙台レディース、吉備国際大学Charme)で構成されたなでしこセルバを破った。日テレ、浦和、新潟Lにとっては、ささやかながら、前の週の雪辱を果たす格好になった。

 MVPは、なでしこポルカのキャプテンを務め、浦和の僚友・柴田華絵のアシストによる先制ゴールも決めた後藤三知(浦和)が受賞した。浦和勢は、手中にあったレギュラーシリーズ優勝をあと僅かのところで逃したショックをここで払拭するかのように、どの選手も活躍。エキサイティングシリーズに向けて、気持ちの入れ替えもうまくいったようだ。

「ずっと『勝たなきゃ、勝たなきゃ』っていう試合が続いていました。もちろん、サッカーだから勝つことは大事なことなんですけれども、ゴールをした時にどうやったらお客さんに喜んでもらえるか、ダンスをみんなで考えたりとか、そういう機会って、なかなかないじゃないですか。全チームが揃ってプレーしたことで、改めて『なでしこリーグっていいな』って思うことができました」(後藤)


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“パフォーマンスキャプテン”荒川恵理子は、今年もオールスターの盛り上げに貢献


 なでしこリーグカップの廃止に伴い、今年から、所属全チームがふたつに分かれる形式に戻り、オールスターの価値も上がった。なでしこリーグでプレーする人気・実力上位の40名だから、選手のモチベーションにもつながる。試合内容が、昨年まで比べて著しくレベルアップしたのは、単に代表選手が増えたのが理由ではないだろう。海外組がいなかった頃の“準・なでしこジャパン紅白戦”当時とまではいかないまでも、久しぶりにオールスターらしいゲームとなった。とは言え、プレーした選手は、エンターテインメントとしての伸びしろをまだまだ感じている。

「真剣勝負はいつものなでしこリーグで見せているつもりです。こうしたチャリティーマッチ、オールスターのようなゲームでは、真剣なだけでなく、もっと『魅せるプレー』ができるように努力しないといけないと思います。個々の選手のレベルは高いので(ある程度まで合わせることが)できるのですが、男子のサッカーと比べると『まだまだ違うな』とプレーしている自分たち自身は感じています」(宮間あや・湯郷ベル)

 それでも、公式発表3,865人の観客は、夏の祭典を十分に楽しんだ様子で家路についていた。Jリーグの開催日で、さらに天気予報では「雨」の可能性が指摘される中、4,000人弱の観客を集めたのだから、なでしこリーグのオールスターは興行として完全に定着した。先日発表されたアジア大会の出場メンバーの多くが揃っており、首都圏のメディアも足を運んだ。来週から始まる、エキサイティングシリーズに向けて、景気をつける意味でも大成功と言えるだろう。


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オールスター出場選手には、エキサイティングシリーズでも好プレーを期待したい


 以下は個人的な希望になる。

 まず、イベントスペースで行われていた国連UNHCR協会の難民支援活動報告と募金・寄付の受付について。このなでしこリーグ支援団体のテントは、各クラブと屋台村の間というスペース的にはもっともいい位置に設置されていた。ここに各クラブの選手を持ち回りで配置すれば「なでしこリーグの支援団体」というカラーがさらに強く打ち出され、賛同者数もさらに増えたのではないだろうか。その場の募金ではなく、後日定期振込みという形式なので、各クラブのグッズ売り上げを“食う”こともないはずだ。

 そして選手起用について。セルバも、ポルカも、ハーフタイムで選手を交代枠いっぱいに代えた。選出選手全員のプレーを、できるだけ長い時間見せようという配慮だろう。ただ、前半のピッチに、セルバは吉備国大、ポルカは新潟Lの選手がひとりもいなかった。同一チームの選手をセットで使ったほうが、コンビネーションがスムーズになるからだろうが、スタンドにいる各クラブのサポーターにとっては、やはり自分が応援するチームの選手をひとりはピッチに残してもらいたいところ。

 ベガルタの浜田遥が「今日、こうしてやってみて『攻撃第一に考えてしまう自分は、やっぱりSBに向いていないんだな』とあらためて実感しました」と笑っていたが、無理やりあてがわれたポジションを贔屓の選手がどうこなすのか、スタンドからハラハラ見守るのは楽しい。そして、ポルカの3点目(原菜摘子・日テレ→吉良知夏・浦和)のように、異なるクラブの選手が同じ絵を脳裏に描き、それぞれの技術を即興的に重ねるプレー。それが、勝敗だけにこだわらなくていい、オールスターならではの醍醐味と思うのだ。

ピッチの向こう側 その10


【中倉一志=文・写真】
席種割とサービスの重要性 その2
メインスタンドで最も深刻なのは「アビスパシート」の取り扱いだ。現在は、ひとつの席種として販売されているが、かつては年間シートとして取り扱われ、食事・飲食のサービスが付いていたことから類推すれば、元々はプレミアシート的な要素で販売されていたものだったのだろう。メインスタンドSS指定席が4100円(前売り3600円)であるのに比べ、5700円(前売り5200円)という値段は、単に「真中の席だから」という理由だけでは説明がつかないように個人的には思う。

こうしたプレミアシートは各クラブにも存在する。多くの場合は専門の案内係がおり、飲食のサービスが付随しているもので、スタジアムによっては入場口が分かれているところもある。また、軽食と飲み物のサービスを提供する部屋につながる入口が用意されており、そこへ自由に出入りして飲食を楽しめるスタジアムを見たこともある。単なるサッカー観戦だけではなく、その席種だからこその特別感を提供している。他の席種と比較して、法人格の購入者が多いのも特長のひとつだろう。

私見ではあるが、現在のアビスパシートは、その存在を見直す時期にあるのではないかと思う。様々な商売があるように、必ずしもプレミア感が必要なわけではない。庶民的な値段で、多くの人たちにサッカーを楽しんでもらうという考え方も選択肢のひとつ。サービスを最低限に抑え、その代り値段も見直し、多くの人たちにアビスパシートで観戦してもらってもいい。アビスパシートだけで見れば収入は減ずることになるかも知れないが、SS指定席、あるいはS自由席から席種を変更する人が増えれば、全体の収入はアップする。

あるいは、富裕層を対象にして徹底したサービスを提供することも選択肢のひとつだ。その場合は料金を上げてもいいのではないか。不景気とはいえ、どんな時でも富裕層は存在し、付加価値に対して料金を支払うことを惜しまない人たちはいる。むしろ、その席種に座れるのだという、ある意味の優越感のようなものを提供することによって、アビスパシートがプレミアシートたる価値を持つことになり、それがアビスパシートの存在を肯定する理由にもなる。

また、プレミアシートは法人格での購入者が多く、この場合、取引先や従業員、あるいは友人・知人を招待することも多い。そうしてスタジアムに足を運んだ人たちが特別感を味わうことは、購入者である法人に対して好印象を与えることにつながり、それはサッカー観戦とは別の意味での付加価値になる。あるいは、購入者を対象にした異業種交流会のようなものを開催し、それぞれの企業にPRの場所を与え、事業に有効な情報交換の場所を提供することも試みとしては面白いように思う。

当然、チケット営業の形も変わってくるだろう。「スタジアムで一番いい席」というコンセプトではなく、そこに付随する様々な付加価値をトータルとして売り出すことで、新たな客層の獲得や、新たな展開が生まれてくる。不景気と呼ばれる時代ではあるが、そこに最高の付加価値があれば、十分に利用者が確保できることは、JR九州が提供する「ななつ星in九州」が爆発的な人気を誇っていることからも証明されている。付加価値を考えずに値段だけを気にするのであれば、アビスパシートが埋まることはあり得ないように思う。
<その3に続く>


ピッチの向こう側 その9


【中倉一志=文・写真】
席種割とサービスの重要性 その1
スタジアムには様々な人たちが、それぞれの目的を持ってやってくる。立ち上がり、声をからして応援するためにやってくる人。家族でスポーツ観戦を楽しみたい人。静かに試合を見ながらニュートラルな立場で試合展開を楽しみたい人。デートに使う人。サッカーを好きになってもらうために知人を連れてくる人。初めてやってくる人もいれば、スタジアムに通うことが日常になっている人もいる。そして、もちろん相手のサポーターもやってくる。

それぞれに見やすい席というものが存在し、思いのほか、それぞれが席にこだわっている。サッカー部でサイドバックをしていたという私の友人が陣取るのは、いつもコーナーフラッグの辺り。彼にとっては、そこから見る光景がサッカーなのだという。私が東京にいた頃に好んで座っていたのは、バックスタンドの最上段。特定のチームを応援していなかった私は、全体を俯瞰して試合展開を楽しみたかったからだ。国立競技場の聖火台の下に設けられた自由席は私の指定席だった。

こうした様々な目的でやってくる人たちに、それぞれの要求にこたえられるような席種を設け、それぞれに見合ったサービスを提供することは、よりよい観戦環境を整えるという意味では欠かせない要素だ。もちろん、全ての人たちの要求にこたえることは無理だ。しかし、ある程度の住み分けをすることで、スタジアムの好感度は大きく上がる。

いま、レベルファイブスタジアムで改善が急がれるのは、メインスタンドの動員だ。我々メディア、チーム関係者はメインスタンド側にいるため、視覚に入ってくるのはバックスタンドとゴール裏自由席だけ。席種ごとの実数は把握していても、実際にどのように見えているのかを感じる機会は少ない。しかし、実際にバックスタンドからメインスタンドを見た時、その景観は、恐ろしいほどさびしい。それは、スタジアム観戦の楽しみを削いでいるとも言えるもので、クラブ側は強烈な危機感を持つ必要がある。

メインスタンドとバックスタンドの観戦環境という点で言えば、その違いは、左右が逆になることと、選手入場の際に間近で選手の挨拶が見られる程度の違いしかない。観客が料金が安い席種に流れるのは、ある意味で当然のことでもある。だが、実際に、それぞれのコンコースに立って観客の動向を注視すると、あきらかに観戦目的がメインスタンドと、バックスタンドとでは異なっていることが分かる。だからこそ、その数は少なくても、バックスタンドよりも高い料金を払ってメインスタンドで観戦する人たちが存在する。

料金の問題がないわけではない。しかしながら、根本的な問題は、席種、料金、観客が持つニーズ等々に見合ったサービスがなされているのかどうかという点にある。これはメインスタンドだけに限られたことではなく、バックスタンド、ゴール裏自由席にもある問題ではあるが、特に空席が目立つメインスタンドの問題の解決は急務だと言える。それは、メインスタンドの空席を埋めることに加えて、現在、メインスタンドで観戦している人たちに適正なサービスを提供することにつながるからだ。
<その2に続く>


大波乱の最終節。栄冠は浦和レッズレディースから、岡山湯郷Belleのもとに。(3)


レギュラーシリーズ最終節、試合終了後、I神戸に敗れピッチに倒れ込んだ浦和・高畑を抱え起こす、同・猶本(左奥)

文/西森彰  写真/金子悟

 不運が重なった最終戦はひとまずおいて、浦和がタイトルを逸した最大の原因はどこにあったのだろうか。やはり、1試合平均2点を挙げていた前半戦から、ゴール欠乏症に陥った終盤の失速に触れないわけにはいかない。

「後半戦に入って、対戦相手が自分たちへの対策をしてきて、それを超えられなかったのが自分たちの実力不足。失点は去年に比べてかなり減ってきましたし、切り替えの速さもチームとして定まってきました。あとはボールをとった後にどうやって点をとっていくか。そこにチャレンジしていきたいと思います」(高畑志帆)

「去年よりも運動量が増えて、積極的な守備と動き出しの速さとやることがハッキリして、スタートできました。後半は、相手チームに研究されているのもありますが、そんな中でも訪れるチャンスで決められなかったこと。1点入れば試合運びも変わりますし、逆に決められないとこうなってしまう。『点がとれていないから、点がとれない』というのもあると思います」(加藤)

 ケガ人が出て先発メンバーが変わっていく中で生じる、ホンの小さな誤差も大きな意味を持ってきた。加藤が、それを一番強く感じたのは「ピッチ内の距離感」だった。

「周囲から『後半、勢いが落ちた』と言われましたが、ただ勢いが落ちたわけではありません。選手同士の距離感が良ければいい試合ができるのですが、後半、互いの距離が遠く感じてしまう局面が増えてきました。ケガ人が出て、それまでと人が代わればそれぞれの特徴も変わり、それに新しく合わせていく必要がありますから、それが影響したかもしれません」(加藤)

 チャレンジャーとして「ガンガン行こう! 引くことなくやっていこう!」と、前向きに戦った18戦を、浦和は3位で終えた。


レギュラーシリーズ第5節、日テレに競り勝ちサポーターの声援に応える湯郷の選手たち

 こうしてレギュラーシリーズ優勝の栄誉は、湯郷ベルのもとに転がり込んだ。もちろん、種田佳織監督以下チーム関係者は、優勝の可能性が残っていることを認識していたが、それほど高いものとは思っていなかった。浦和とI神戸の試合もチーム全員で観戦するどころか、ちりぢりばらばらの状態だったという。

 優勝へのターニングポイントを尋ねても「いつもの年なら『あそこでこうしていれば』『あれが大きかった』というのがいくつか出てくるのですが、今年はそういうのがあまりないんです。確かに日テレ(0-4)、浦和(1-4)のあたりは本当に苦しかったのですが、優勝のカギになった場面を問われると……。うーん……」(種田監督)。

 スタンドから見ているものとしては、第2節で喫した千葉戦の大敗が、ひとつの大きなきっかけだったように思う。前半途中で喫した4失点の屈辱をバネに「サッカー選手として最低限必要な闘争心」(福元美穂)が、チームに宿った。試合のたびに種田監督が「まだまだですから、あまりほめないでくださいよ」と釘を刺した守備は、上位リーグ進出6チーム中最多の25失点。それでもDF総入れ替えに近い中で「よく25点に抑えた」感は強い。

 このチームの場合、どうしても宮間あやのキックに注目は集まるが、それが全てではない。チームのベースは、質を重んじる練習だ。スローインひとつとっても、約束事と違う動きがあると、プレーを止めてもう一度確認する。万事がそれの繰り返し。徹底して課題を追求し、漠然とした問題を抱えたままゲームに臨まない。メンバーの半数が新加入、復帰選手でも、こうした突貫工事を続ければ、チームは短期間で(ひとまずのレベルまでは)完成する。

「日々のトレーニングの中で選手たちが常に高みを目指し、時にはぶつかり合いながら、同じ方向性を向いて戦ってくれた。新しく加入した選手についても、浅野(未希)、葛間(理代)、細川(元代)らが短い期間でフィットしてくれたし、一度は引退していた高橋(佐智江)もこうして頑張ってくれた。選手全員がそれぞれできることをやってくれた。本当に、チームのため、献身的に戦ってくれたと思います」(種田監督)


指揮を執る湯郷・種田監督

 今季もホームゲーム9試合で観客動員数が平均2,000人をキープする湯郷ベル。ブームが一段落してもなお「日本で一番平均年齢が高いサポーター」(野村雅之監督・作陽高校)の声援は絶えない。一夜明けた岡山県北の温泉町は、チームがもたらした「初めての日本一」で、大変な騒ぎになっていることだろう。

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