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なでしこリーグカップ決勝。今季4回目の対戦の行方は?

130831_01.jpg 取材・文・写真/西森彰

 プレナスなでしこリーグカップ2013は、いよいよ決勝トーナメントへ。A、B両グループ全10節を勝ち抜いた4チームが、浦和・駒場スタジアムに進んだ。2連覇を目指す日テレ・ベレーザと、昨年の雪辱を期すINAC神戸レオネッサ。これに2位抜けしたジェフユナイテッド市原・千葉レディースと岡山湯郷Belleが挑む。

 浦和・駒場スタジアムで行われた準決勝の第1試合は、I神戸が千葉Lを2-1と振り切った。全体的には、なでしこリーグの開幕戦同様に千葉Lの「I神戸封じ」が機能しているようにも見えた。だが、そんな中でも少ないチャンスを活かせるI神戸の決定力がモノを言った。相手に流れが向いていても「こういう時間帯もあるよ」と声をかけあうI神戸の選手からは、ここ2、3年で体に染みついた勝者のメンタリティを感じた。

 続く第2試合は、湯郷ベルが宮間あやの先制ゴールでイニシアチブを握ると、その後は日テレの攻勢をのらりくらりと交わしながら、中野真奈美の追加点で止めを刺した。日テレの4連覇は、準決勝で露と消えた。世間的には番狂わせと捉えられがちな結果だが、高知で行われた今季のリーグ戦でも、両者は五分の展開でスコアレスドロー。今の湯郷ベルには、日テレとも好勝負ができるだけの力が付いている。

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 こうして9月1日(日)に行われる決勝は、I神戸と湯郷ベルの顔合わせとなった。今季、この両チームは、なでしこリーグとリーグカップのグループリーグで3回、顔を合わせている。

 今季第1戦は、なでしこリーグ第4節。前半30分くらいまでは、ハイプレッシャーをかけた湯郷ベルの前に、I神戸が沈黙。高いラインの裏にあるスペースを狙った澤穂希のパスと、同じ絵を脳裏に描いた川澄奈穂美の独走が、パズルの出口となった。その後は、I神戸が、1点を返そうと無謀なライン設定をした湯郷ベルからゴールを重ねたもの。「前半途中まではどっちに転ぶかわからない試合だった」(川澄)。

 第2戦はリーグカップの湯郷ベルホームゲーム。湯郷ベルが2点ビハインドを2回背負いながら、試合終了直前に追いついた。内容に目を移せば、前半は完璧なI神戸ペース。引分けとは言え、代表活動から戻ったばかりでコンディションが今ひとつの川澄は途中交代。負傷明けの澤がいない影響も見られた。「澤さんたちもいないし、今日は勝ちたかった」と宮間。勝つ気で戦った湯郷ベルにしてみれば「勝てなかった」感が強く残った。

 そして第3戦はグループリーグの最終戦だ。ノエビアスタジアムで行われたゲームは、Aグループの首位を決するゲームでもあった。少ないチャンスをきちんと決めたI神戸が3点のリードを奪い、楽勝に見えたが、そこからまたもや湯郷ベルが追いすがった。1点差に詰められ、退場者も出たI神戸は、そこで現実的な戦いを選択。リードを保ったまま、辛くもタイムアップを迎え、グループリーグ1位抜けを果たしている。

 ここまでI神戸の2勝1分け。その内訳はI神戸サイドから見て7-0、3-3、3-2だ。なんと、1試合平均6ゴールが生まれている。両チームのゴールを守るのは、I神戸がドイツ女子W杯正GK・海堀あゆみ、湯郷ベルはロンドン五輪正GK・福元美穂。なでしこジャパンの守護神候補ふたりがいるにも関わらず、270分間で18回もネットを揺らされている。

 参考までに、なでしこリーグとリーグカップのゴール数を挙げておこう。なでしこリーグが前半9節までの合計45試合で生まれた総得点は121。なでしこリーグカップはA・B両グループリーグに準決勝をあわせた合計42試合で134。全部あわせると87試合で255ゴールとなり、1試合平均にすると3点を下回っている。

 前述したI神戸と湯郷ベルの3試合もこの中に含まれているから、これを除けば平均ゴール数の値は、さらに小さくなる。今季、このカードが突出して異常なスコアとなっていることを、ご理解いただけるはずだ。

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 その理由のひとつは、湯郷ベルのゲームプランにある。I神戸と対戦するチームは、ほとんどがゴール前に人数をかけて守り、そこに活路を見出そうとする。実際、I神戸の石原孝尚監督も、選手も「相手が出てきたほうがやりやすい。引いてゴール前を固められたほうがやりにくい」と漏らしている。そうしたセオリーに反して、湯郷ベルは、I神戸を高いラインを敷いて打ち合いを挑む。

 湯郷ベルのDF陣は粘り強さが身上。日テレのように、上手いけれども身体的に特徴がある選手が少ないチームには、体を張って食らいつく。ただ、I神戸にはスプリントを繰り返せる川澄や、重戦車のように強靭な足腰で前進する髙瀬愛実、ゴーベル・ヤネズがいる。フィジカルで勝る相手とゴールに近い位置でやり合っては分が悪い。90分間、ゴール前を固めるだけでは余程の幸運がない限り、無失点で抑えることはできないだろう。サッカーらしいスコアは残せるが、勝つ可能性を見いだせない。

 これなら、松岡実希や有町紗央理を相手ゴールに近づけ、宮間からの決定的なパスを通すチャンスを増やすほうがいい。I神戸の選手を見渡せば、中盤から前は大野忍が抜けた程度だが、後ろは田中明日菜がドイツへ渡り、澤、近賀ゆかりらはケガ明け。ベッキ―もシーズン直後は出遅れた。最終ラインは顔触れががらりと変わっている。彼我の戦力差を比べれば、前に出るべきなのは明らかだ。

 初戦で0-7と屈辱的なスコアを喫しながら、湯郷ベルがゲームプランを変えないのは、この方法論が正解との確信があるのだろう。実際、シュート数は3試合すべて二桁を記録し、その数合計46本。4月のゲームでは「(シュートは打てていたが)I神戸の決定機はほとんどがGKと1対1。私たちはそこまでほとんど行けなかった」(宮間)が、先日の3戦目では試合内容も良化の一途をたどっている。

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 台風の接近でどんなコンディションで行われるかわからないが、夏の薄暮ゲームは体力的に厳しい。I神戸には分厚い選手層があり、この点でも優位は動かない。南山千明、中島依美というユーティリティプレーヤーがいる。単純な選手交代に留まらず、状況に応じて、いかようにもフォーメーションを変えられる。

 相手の最終ラインに3枚のFWがプレッシャーをかけ、正確なチ・ソヨンのキックでゴールを陥れる。選手交代を前提とすれば、スタミナに気を遣う必要もない。圧倒的な戦力を武器に、キックオフから主導権を握れるはず。早い時間帯でセーフティーリードと呼べるところまで、スコア差を広げたい。

 対する湯郷ベルも「なでしこリーグで一番暑い地域にいる」(宮間)。普段の練習時間とほぼ同じ時刻のキックオフなら、少なくとも気温や湿度が理由で足が止まるおそれはない。少ない選手数で戦ってきているが、それだけにチームの完成度は高く、前線から最終ラインまで一体だ。前に出るべき時間帯か。耐える時間帯か。息継ぎのタイミングはとりやすい。

 試合途中に送り込める選手はそれほど多くないから、ここ2試合と同様に、前半は抑え気味にスタートし、後半勝負に持ち込みたい。守備では、とにかく相手FWと福元が1対1になるシーンを減らすこと。攻撃では松岡、有町の2トップに、宮間、中野真奈美ら2列目の選手も含めて、これまで以上の決定力を残せればチャンスも出てこよう。

 なでしこリーグオールスター2013(13時45分キックオフ)を露払いとして、なでしこリーグカップ決勝は16時30分キックオフ。I神戸が、目標とする「4冠制覇」へ好スタートを切るか。湯郷ベルが、クラブ創設以来初の日本一を手に入れるか。熱戦は必至だ。



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