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なでしこ開幕 そしてチャレンジリーグ

130329_01.jpg 取材・文・写真/西森彰

 なでしこリーグの2013年シーズンがいよいよ開幕。昨季の女王・INAC神戸レオネッサは、ノエビアスタジアムでジェフユナイテッド市原・千葉レディースを迎え撃った。  千葉Lは、3か月前の皇后杯ではコンディション不良のI神戸に対し、走り勝つサッカーを選択した。再戦にあたり、今度は前線から最終ラインまでの距離をコンパクトに保ってきた。皇后杯で走るだけのサッカーに限界を感じた上村崇士監督が、開幕に向けて取り組んできた新しいスタイルである。澤穂希、南山千明、チ・ソヨンの3人は、人口密度の濃い中盤で、ボールを受ける場所を探し、グルグルとポジションを変えたが、なかなかうまくいかない。

 千葉Lのディフェンスは機能し、ボールを取るところまではうまくいった。千葉LのFWは、I神戸のCBをスピードで上回る。ここに目を付けた上村監督は、速い攻撃をイメージしていた。「早く前にボールを送りたい気持ちがあった」と新潟から加入した川村優理。開幕戦の緊張やケガ人で経験不足の若手がいたこともあり、奪ったボールを前線につなぐ過程で、パスの精度を欠いた。

 ハーフタイムに落ち着きを取り戻したI神戸は、ゴーベル・ヤネズが自ら獲得したPKを前後半に1本ずつ決め、守っては試合終了間際の深澤里沙の1点に抑えた。キャプテンの川澄奈穂美らは、ミックスゾーンでは笑顔をほとんど見せなかったが、まだまだ完成途上。新加入選手が「まだ自分のことでいっぱいいっぱい」(途中出場の磯金みどり)の中、きっちり勝ち点3をとるあたり、昨年の勝負強さは残っている。
 敗れた千葉Lも櫻本尚子が「最後のほうに出た若手がチャンスを作ってくれたし、次節はケガから戻ってくる選手もいるので」とショックは小さい様子。ホーム開幕戦につながる内容ではあった。

 その他の会場では、日テレ・ベレーザがFC吉備国際大学Charmeを、浦和レッドダイヤモンズレディースがスペランツァFC大阪高槻をそれぞれ下した。新監督と前年から指揮をとる監督の対決は、I神戸と千葉Lの試合を含めて、全て新監督に軍配があがった。アルビレックス新潟レディースと伊賀FCくノ一の新監督対決は仲良く、スコアレスドロー。
 そしてなでしこリーグ開幕節で最大の驚きは、ベガルタ仙台レディースがアウェーで岡山湯郷Belleを降したこと。昇格チームに滅法強い湯郷ベルから奪った勝ち点3は、ベガルタのスタッフ、選手に大きな自信を与えたはず。やはり、これまでの昇格チームとは、全く違うチームだ。

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 さて、4月7日には、なでしこリーグの下部リーグにあたるチャレンジリーグの開幕を控えている。昨年よりも4チーム増えて全部で16チームが参加。まず、二つに振り分けられたリーグ戦を2回戦総当たりで戦い(14試合)、その後でもうひとつのリーグと1回戦総当たりを行う(8試合)。22試合の結果で最上位のチームはなでしこリーグへ昇格。次位のチームが入替戦に回るのは昨年と同じだ。

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 昇格争いの大本命は、ASエルフェン狭山FCだ。ベレーザを率いてなでしこリーグで優勝を重ねた松田岳夫監督が、女子サッカー界に復帰。行き先として選んだのが、この狭山だった。「(ベレーザの頃と比べて)何もないところから作りあげていく楽しさがあります。一からスタート? いや、ゼロからのスタートですよ(笑)」(松田監督)。

 常勝監督の手腕を慕って、なでしこジャパンなどで活躍を見せたベテランが集まってきた。浦和Lから山郷のぞみ、荒川恵理子、ベレーザから伊藤香菜子。勝つために、強くなるために何が必要なのかを知っている選手の存在は、松田監督にとっても心強いはずだ。昨シーズンまでなでしこリーグを戦っていた既存戦力も薊理恵を筆頭に充実している。死角は見当たらない。

 もうひとつの前・なでしこリーグ所属チーム、福岡J・アンクラスは戦力ダウンをいかに補えるか。今季は内堀律子が引退、磯金みどりがI神戸、澤田法味が伊賀FCに移籍。守備の要となる3人を筆頭に、昨年の主力が相次いでチームを離れた。湯郷ベル、浦和から勝ち点3を奪った、昨季後半の陣容はない。川村真理、田頭陽子らを中心にチームを立て直せるか。八木邦靖新監督の手腕にかかっている。

 スフィーダ世田谷は、なでしこリーグのチームとも積極的に練習試合を組んできた。川邊健一監督は、自チームの練習試合が終わると、寸暇を惜しんでそのままライバルチームの練習試合視察に向かう。「良くも悪くも結果は事前の準備次第ですから、1つ1つの試合に備えて丁寧な準備を続けることが目標です」というコメントそのままの行動だ。昨年は3位。今季は当然、昇格が大目標だ。

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 今季から、チャレンジリーグに挑むJリーグの下部組織チームが、セレッソ大阪堺レディースだ。育成組織として設立されたのが2010年のこと。そこから3年でチャレンジリーグに昇格した。心身ともに成長途上の中学生が主体のチーム。大人が相手の90分間は厳しい戦いになるだろう。昨季までC大阪堺で彼女たちを指導した狭山の原歩コーチは「このステージで戦えるのは、いい経験になると思います」とエールを送る。

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 C大阪堺とともに地域リーグから入替戦を勝ち上がり、一緒に昇格したのはノジマステラ、清水第八プレアデス、HOYOスカラブFCの3チーム。清水第八を除く3チームは初昇格である。ノジマは、ライバルチームから狭山に次ぐ上位候補のひとつに挙げられている。指揮官は東京電力女子サッカー部マリーゼを、優勝候補に育て上げた菅野将晃監督。神奈川県下の企業からも支援を受けるこのチームは、旋風を巻き起こすかも知れない 。

 既存チームの中にも伏兵候補はゴロゴロいる。そのひとつがバニーズ京都SC。ここ最近は、なでしこリーグから遠いポジションでくすぶっているが、今季はチームへのバックアップ体制を強化。新潟から豊田奈夕葉を獲得するなど、なでしこリーグのチームからも選手を獲得してきた。積極的な補強で昨季以上の戦力は整った。今季は、楽しみな存在だ。

 松田監督、菅野監督同様、なでしこリーグで指揮を執った本田美登里監督が、今年から、チャレンジリーグで采配を振るう。昨季11位、入替戦で地域リーグ降格を危うく逃れた長野パルセイロレディースが、新たな挑戦の舞台だ。「狭山クラスには一目置きますが、3位を争うグループには1年目から入って行きたい。チャレンジリーグはそれほど差がないと思います」と自らを鼓舞する。

 昇格の資格がないチームは、なでしこリーグへの道に門番役と立ち塞がる。常盤木学園高校は堅守を武器に、今春の全国高校女子サッカー選手権で優勝。阿部由晴監督は「また、なでしこリーグでプレーできる選手をひとりでも多く育てたい」と目標を口にする。インカレで大学日本一に輝いた日本体育大学は昨年4位。その下の5位にJFAアカデミー福島、6位に常盤木学園。昇格を狙うチームにとってこのあたりが壁になるだろう。

 ベガルタの活躍を見ればわかるように、チャレンジリーグのレベルも1年ごとに上がってきている。今季はどのような結末が待ち構えているか。なでしこリーグ同様に注目したい。


【フットボールな日々】目の前の壁を乗り越えろ!

130327_01.jpg 取材・文・写真/中倉一志

 25日、雁の巣球技場競技場にマリヤン・プシュニク監督の大きな声が響き渡りました。ピッチの外では、穏やかな表情しか見せないプシュニク監督も、トレーニング中は、時に大きな声で選手を叱責することは珍しいことではありません。しかし、この日は緊張感が違いました。3連敗を喫した札幌戦後の記者会見で「明日から練習の質と内容を上げる。試合に出られるのは、それに付いて来る、あるいは、付いて来ようとする選手。そうでない選手は出られない」と話した言葉が、そのまま雁の巣球技場に持ち込まれていました。

 緊張感を高めただけではありません。トレーニングメニューも、これまでの試合翌日の内容とは違うものでした。具体的な内容については、ここで紹介することは避けますが、ここまでの5試合で見えてきた課題は何か、そして、いま自分たちが取り組まなければいけないことは何か、それが具体的に伝わってくるものでした。しかも、練習時間は、試合翌日としては異例の2時間強。何事にも妥協せず、やるべきことをやるというマリヤン・アビスパの姿勢が表れていました。

 そして、何よりも強く伝わって来たのは、今やすっかりCMでお馴染みになったフレーズの「じゃあ、いつやるか?いまでしょ」というメッセージでした。試合の翌日であることを考えれば、まずは疲れを十分にとり、その翌日から課題に取り組んだとしても、大きな問題はなかったかも知れません。けれども、負荷を調整しながらも、これまでとは質と内容の違うトレーニングを行った姿からは、問題の解決は、どんな事情があろうとも、決して先送りしてはいけないということを、強いメッセージとして発信しているのだと感じました。

 さて、福岡は5戦を終えて2勝3敗。これまでの戦いぶりを見ていると、新生アビスパと銘打って再スタートを切った2003年当時の様子と、よく似ているなと感じています。チームに変化は感じられる。いいゲームもする。けれども、スルリと勝ちが手からこぼれ落ちて行く。チームは確実にいい方向へ進んでいるけれども、目の前にある壁を乗り越えるまでの力は身についていない。そんな状況だと思っています。

 いま求められているのは、改めて力を蓄え、それをピッチの中で思う存分に発揮して、目の前に現れた最初の壁を乗り越えることです。25日のトレーニングの最大の目的は、それを伝えるためにあったのではないかと考えています。Jリーグ40チーム中、36番目のチームがJ1の舞台に辿り着くのは容易なことではありません。けれど、それがクラブの、チームの、選手の、そして福岡に関わる人たちの夢であり、目標です。「自分たちは変わるんだ」という揺るぎない強い意志で、まずは最初の正念場を乗り切って欲しいと思っています。


【J2第4節 徳島-福岡】"らしさ"発揮できず 無念の2連敗

130323_02.jpg 2013Jリーグ Div.2 第5節
日時/2013年3月20日(祝)
13:00キックオフ
会場/鳴門大塚スポーツパーク
結果/徳島 2-1 福岡
取材・文/中倉一志

「相手にやりたいことを徹底され、自分たちは監督の指示を徹底できなかった。その差がはっきり出たゲーム」(城後寿)。その言葉通り、両チームの試合に臨む態度が、結果に明確に現れた試合だった。

 徳島の狙いはロングボールを前線に放り込んで起点を作り、そこへ2列目の津田知宏と大﨑淳矢が絡んでチャンスを広げるというもの。その態度はとにかく徹底していた。ボールを持って前を向くと、必ずと言っていいほど、高崎寛之めがけてロングボールを送る。それどころか、スローインも、高いボールを高崎に当てる徹底ぶり。もともと、徳島の攻撃のパターンはロングボールが起点になるのだが、これほどまでに徹底してきたのには、ここまで4試合を消化して未勝利という事情もあったのだろう。その徹底ぶりは、勝利のためなら、なりふり構わないという感じさえするものだった。

 一方の福岡の狙いは、高い位置からのハイプレッシャーでパスコースを限定し、中盤で数的優位を作ってボールを奪うこと。そこからの速い攻撃でゴールを目指す。しかし、徳島のロングボールを怖がってか、最終ラインを思うように高い位置にキープできずに全体が間延び。互いの距離感が遠くなってしまったチームは、相手にプレスをかけられず、間延びした中盤ではセカンドボールも拾えず、いつものリズムが生まれない。しかも、ボールを奪ってもミスを連発して相手にボールを渡すことを繰り返した。「前と後ろで長くなって、しかもセカンドが拾えない状態。ばらばらだった。選手同士の距離が遠かったので、自分達の良さであるアグレッシブな守備もできずじまいだった」と石津大介は試合を振り返る。

 加えて、高崎と福岡の最終ラインの1対1の攻防で、福岡がことごとく負け続けたこともあり、試合は一方的な徳島のリズムに。まるでリプレイを延々と繰り返しているような展開で、徳島が一方的に試合を支配していく。そして、当然のように、狙い通りの展開から徳島に先制点が生まれた。時間は30分。後方からのロングボールを追って高崎が福岡の最終ラインの裏へと走り込む。並走する山口和樹が、スピードで振り切ろうとする高崎ともつれるように転倒したところでPKの判定が下された。そして、2点目も起点になったのも高崎。高崎が頭で落としたボールを津田が拾うと、ゴール前で鮮やかにパスを回して福岡DF陣を翻弄。最後は大崎が右足でゴールネットを揺らした。「相手に合わせてしまって自分たちのサッカーをしていなかったのだから、結果は当然のものだったと言える」(プシュニク監督)。その表情に悔しさがにじむ。

 福岡がボールを回し始めたのは後半に入ってから。だが、それも福岡が盛り返したと言うよりも、福岡を悩ませ続けた高崎が、怪我のために43分にピッチから退いたことと、2点のリードを奪った徳島が、定石通りにカウンター狙いに変更したことが影響した感が強い。実際に、決定機を数多く作り出したのは徳島。シュート数は福岡の7本に対して、徳島の6本と、差は生まれなかった。迎えた88分、福岡は、金久保順、坂田大輔とつないだボールに、最後は西田剛が右足ボレーでゴールネットを揺らしたものの、反撃もここまで。徳島は会心の内容で今シーズン初勝利を挙げ、福岡には、ふがいなさばかりが残った。

 福岡には、古賀正紘がコンディション不良、尾亦弘友希が手術のために長期離脱、そして堤俊輔が出場停止であるなど、最終ラインに戦列を離脱する選手が集中していたという別の事情もあったが、とにかく最終ラインを下げさせられてしまったのが全てだった。前から激しくプレッシャーをかける福岡のスタイルに対抗するために、相手がロングボールを蹴り込んでくるのは、ある意味、当然のこと。それに対応してリスク管理をすることは当然のことでもある。しかし、必要なのは、自分たちの強みを発揮するために相手の攻撃に対応することであって、相手のやり方に合わせることではない。蹴らせるのではなく、蹴られてしまったことが問題だった。

 それでも、福岡は現在、変化の真っ最中。すべてが上手くいくわけではない。そんな中で求められているのは、やるべきことと、出来ること、そして、出来ないことを整理した上で、敗戦から学び、足りない物を身に付けるためには何をするべきかを考えること。そして、それを実行に移すことにある。岡田は話す。「体や気持ちの準備を100%して、しっかり勝てるように準備していきたい」。そして、いま最も大事なことは、敗戦の次の試合で何をするかということ。ホーム・レベルファイブスタジアムで戦う札幌戦でアビスパは何を見せるのか。そこに注目したい。


プレナスなでしこリーグ2013 開幕!

文/西森彰 写真/金子悟

 今季のなでしこリーグには、ASエルフェン狭山FC、福岡J・アンクラスに代わってベガルタ仙台レディースとFC吉備国際大学Charmeの2チームが加わった。これで、Jリーグクラブの下部組織が5チーム(日テレ・ベレーザ、浦和レッズレディースL、アルビレックス新潟レディース、ジェフユナイテッド市原千葉レディース、ベガルタ)、非J独立系クラブが5チーム(INAC神戸レオネッサ、岡山湯郷Belle、伊賀FCくノ一、スペランツァFC大阪高槻、吉備国大)と、数の上で相半ばすることになった。

 昨シーズンに降格したAS狭山、福岡ANは独立系だが、優勝したI神戸、3位の湯郷ベルも同じ。一般的に、自分たちの成績がチームの浮沈を左右する独立系に対し、J下部は、男子トップチームの成績に経営が左右される。どちらかと言えばハイリスク&ハイリターンの独立系に比べ、リスクが小さい代わりに好成績を収めた際の見返りも小さい。ブランド価値もトップチームに比べると低く置かれるチームが多い。
 奇しくも開幕戦は「J下部対独立系」の5カードとなった。

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 2年連続無敗で優勝しているI神戸は、ノエビアスタジアムでスタートを切る。星川敬監督の退任を受けて、石原孝尚監督がコーチから昇格した。コーチを務めていた昨季の後半も指導者講習会で不在の星川監督に変わり、トレーニングの大部分を担当していた。だから、選手の個性はもちろん、調整フォームなども把握しており、体制替わりの不安は小さい。
 大野忍のフランス移籍や、近賀ゆかりのケガなど、これまで不動とされてきたポジションは空いたが、依然としてその選手層は他チームを上回る。昨年までのサッカーをベースに戦いながら、新戦力や若手を如何に組み合わせ、新たなチームを作りあげていってくれるだろう。

 これに挑むのは、皇后杯でI神戸の前に涙をのんだ千葉L。昨シーズンの女子サッカー界ラストマッチが、今シーズンのオープニングマッチになった。2ヶ月ぶりの再戦に向けて千葉Lは闘志も新た。上村崇士監督は「あの時の映像を何度も見返して、まだそれに酔っている選手も半分はいるはず。早く切り替えてもらわないと」と笑う。昨年は「3位」を目標に掲げながら6位に終わった。今季は「優勝」。選手にもそれを伝えてある。菅澤優衣香、川村優理らを獲得したことでも、タイトル獲得へ向けた意気込みが感じられる。目標へ近づくためには、ディフェンディングチャンピオンが相手でも、初戦を落とすわけにはいかない。「皇后杯は、そこをうまく突けなかった」(櫻本尚子)というサイド攻略を改めて狙う。

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 昨シーズン2位のベレーザは吉備国大、4位の浦和Lは大阪高槻を、それぞれホームで迎撃する。首都圏勢の2チームは、今季から新体制に切り替わった。浦和Lの手塚貴子監督は、U-20女子代表のコーチ時代に見ていた選手が主力を務めそう。そのパーソナリティをある程度掴んでいるため、不利はそれほど大きくない。ベテランが抜けた分、安定感は望むべくもないが、若さをそのまま勢いに転化したい。
 また育成年代のメニーナからベレーザに昇格したベレーザの寺谷真弓監督は「以前に見ていた子を、もう一度見て、新しい発見もある」。こちらは、昨年の2トップ、永里亜紗乃、岩渕真奈がドイツに渡った。中盤の構成力を活かすために、これまでの4-4-2から、4-1-4-1にフォーメーションを変えてきそう。長谷川唯ら、正月の全日本女子ユースサッカー選手権優勝メンバーの将来性にも目を向けたい。

 挑む側の吉備国大・太田真司監督は、選手の入れ替わりこそあるもののチーム創設時期から携わっている。フル代表経験者はゼロで、他の9チームと比べても経験不足は否めないが「選手たちは不安よりもワクワク感がすごい」(太田監督)。昨季の入替戦で実感した「スピード、パワーの差」(杉田亜未)をどこまで埋められるかが、今季の課題だ。
 昨季途中から指揮をとる大阪高槻の本並健治監督には2年目の上積みがある。残留争いに巻き込まれた昨季よりは「間違いなく上」と指揮官はハッキリ言い切った。ふたりのタイ人選手は、テクニックだけなら十分になでしこリーグへ通じる力はある。あとはタフなスケジュールの中でどれだけ力を発揮できるか。丸山桂里奈が全盛期の輝きを取り戻しつつあり、これをフォローする選手が2、3枚出てくれば中位は十分に射程圏内だ。

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 I神戸の文弘宣会長が「女子チームに高いブランド価値を付与している。J(リーグ下部組織チーム)の中でも新しいタイプ」と、賞賛とも警戒宣言ともとれるコメントを出していた相手が、ベガルタだ。昨シーズン、チャレンジリーグに加わると「大本命」のプレッシャーをはね返して22勝2分けで昇格を決めた。
 2年目を迎える千葉泰伸監督の下、昨シーズンを共に戦った選手の多くが残った。久しぶりのなでしこリーグとは言え、パフォーマンスの下限もある程度は保障されている。なでしこジャパンの鮫島彩や、ルーキー・成宮唯らのタレントを擁し、どのポジションにもバックアップがいる手厚い陣容。チームを後押しするサポーターを含め、あらゆる意味でこれまでの昇格初年度のチームとはレベルが違う。

 そのベガルタと初戦であたったのが、過去最高の3位に食い込んだ湯郷ベルである。こちらも種田佳織監督体制下で3シーズン目。監督交代したチームの多いなでしこリーグで、高い完成度を活かしたい。だから、初戦の相手が体制変更のなかったベガルタと聞き、種田監督は苦笑をもらした。
 こちらは開幕直前に元代表の宮崎有香を補強。神村学園から新加入の布志木香帆もコンバートするなど、これまで手薄だったDFラインのテコ入れを行った。布志木については、神村学園の吉永輝彦監督が今冬の選手権で「湯郷ベルの練習に参加してから、守備の意識が見違えるほど」と、その変化を評価していたほど。ひとりもサボらないチームのスタイルを注入済みだ。昨シーズン後半に守備が崩れた湯郷ベル。堅守速攻のスタイルが復活すれば、昨年以上の成績も見えてくる。
 眼下の敵に滅法強い湯郷ベルがチャレンジャーを退けるか。ベガルタが勢いのままに飲み込むか。楽しみな対戦だ。

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 そして、もうひとつのカードは、新潟Lと伊賀。新潟Lを今年から率いる能仲太司監督は、地元・新潟出身の指導者。これまでは、なでしこジャパンのスタッフとして活躍していた。その時と同様に、映像を駆使して、選手にわかり易くポイントをレクチャーしている。菅澤優衣香、川村優理ら、これまでチームの柱となってきた選手が数人抜けたが、ケガ人が相次いだ昨季でもAクラスを死守した実績がある。
 ひと月前の千葉合宿では、今一つの仕上がりだったが、徐々に良化している模様。大黒柱の上尾野辺めぐみも、開幕を前に「早く公式戦を戦ってみたい。課題が出てくれば、シーズンを戦いながら修正していけばいいと思います」と前向きなコメント。3月に開幕が繰り上がったことは、雪国のチームにとって、決して有利なレギュレーション変更とは思えないが、そのハンデをどこまで跳ね返せるだろうか。

 これに挑むのが、浅野哲也新監督率いる伊賀だ。何といっても、親指と人差し指で「ほんのちょっと」と謙遜する浅野監督のJ1指揮経験は、なでしこリーグの各監督のなかでも目を引く実績。男子トップリーグから、女子チームを指揮することへのギャップも「選手の力を伸ばすという点では同じ」と、カテゴリーの違いへの戸惑いはほとんど見せない。  大嶽直人前監督が続けてきた、ハードワークがベースになったサッカーを引き継ぎ、それに「個人の力を少しずつアップ」し、昨季以上の成績を目指す。リーグ戦はBクラスに終わっているが、リーグカップと皇后杯ではベスト4入りを果たした。臨県・愛知で活躍したJリーガーを迎えて、いよいよ名門復活の日は近い。

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 指揮官、選手の顔触れが大幅に変わった、今季のなでしこリーグ。I神戸が牽引する、ここ2年の勢力図がそのまま持ちこされるか。それとも、予測のつかない混戦ムードが垂れこめるか。序盤戦から目が離せない。


【フットボールな日々】序盤の大一番 どう戦うか

取材・文・写真/中倉一志

 ぐずぐずしていたら、もう17日(汗)。今日はアビスパにとっての序盤戦の大一番である京都戦を迎えます。京都は2試合を終えて勝点2。大阪に3失点、東京V戦は圧倒的に攻めながらもドローという結果は、ある意味、京都らしいなという印象を持っていますが、それでも、京都がJ1昇格争いを引っ張っていくであろう実力を有していることは誰もが認めるところ。京都にとって、どうしても勝点3が欲しい試合は、福岡にとっては簡単な試合ではないことは明らかです。

 そんな試合を控えて、マリヤン・プシュニク監督は次のように話しています。
「東京V、山形と手強い相手に対して2連勝したのは素晴らしい結果。しかし、この状況を続けていかなければ、この結果も意味をなさなくなってしまう。対戦相手の京都は、ここまでの試合やデータを見る限り、G大阪、神戸、札幌、東京、千葉と並んで、間違いなく上位3チームを争う実力を持ったチーム。そのチームに対して、どういう戦いが出来るのか。京都戦は選手にとって大きなテストになる」

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 最大の注目点は、プシュニク監督がどのような采配を振るうかにあります。チームの成熟度、そして、個の能力の単純な比較なら、京都が上回っていることは認めざるを得ません。その中で、どうやって勝利を手繰り寄せるのか。とりわけ、狭いスペースでの局地戦を得意とする京都に対して、真っ向勝負を仕掛けるのか、それとも守備重視の戦い方を仕掛けるのかは非常の興味のあるところです。

 京都の攻撃を怖がって守りを固めれば、相手にスペースと時間を与えることになり、京都の攻撃が活性化するのは目に見えています。もともと、狭いスペースをこじ開けることを得意としているチーム。引いている相手を崩す方法は持っていると考えた方がいいと思っています。そして、どんなスポーツでも、相手の弱点は、相手の最も得意とする場所のそばにあるもの。今のアビスパが持っているハイプレッシャーという武器を使って、高い位置で局地戦を挑むことが、最も勝利の確率が高いのではないかと考えています。はめれば福岡の勝利。はがされれば京都の勝利。結果は両極端なものになるかも知れませんが、勇気を持ってチャレンジすべきだと考えています。

 さて、当のプシュニク監督の考えはどのようなものなのか。練習後の囲み取材に答えて「簡単に言えば、我々がたくさんシュートを打って、相手にはシュートを打たせないこと。まあ、それをどうやってやるかということだけれどね」とニヤリと笑って報道陣を煙に巻いていましたが、ただ、やみくもに真っ向勝負を挑むだけではないことは確か。コンディション不良で複数の選手が出場できないことが確実視される中、選手起用、ポジション変更と併せて、どんな戦いを見せてくれるかに注目したいと思っています。

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