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【皇后杯準決勝:INACvs.浦和】INACが3連覇に王手

121222_11.jpg 皇后杯全日本女子サッカー選手権 準決勝
日時:2012年12月22日(土)14:00 kick off
会場:NACK5スタジアム
結果:INAC神戸レオネッサ 1-O 浦和レッズレディース
写真:金子悟/文:中倉一志

 あいにくの冷たい雨の中で行われた皇后杯準決勝第1試合。その熱い戦いが冬の雨を吹き飛ばしたのか、第2試合が始まる頃には、空を覆っていた厚い雲は消え、ところどころに晴れ間がのぞく。そんな中、赤いユニフォームと、白いユニフォームを身にまとった選手たちがピッチに現れる。

 赤いユニフォームはINAC神戸レオネッサ。澤穂希、川澄奈穂美ら、世界の最高峰に立った、なでしこジャパンのメンバーがずらりと並ぶチームは、日本女子サッカー界の女王としての名を欲しいままにしている。今大会では、大会3連覇とともに、なでしこリーグと併せて、2年連続の2冠がかかる。この試合を前に、星川敬監督の今シーズン限りでの退任が発表されたが、INACの黄金期を作り上げた星川監督とともに、皇后杯を頭上に掲げることを狙う。

 そのINACに挑戦するのは浦和レッズレディース。こちらの先発メンバーには、ユース年代の代表経験者が顔をそろえる。いわば、これからの日本を背負うことが期待されているヤングなでしこ軍団。その選手たちを、土橋優貴、矢野喬子、庭田亜樹ら、ベテラン選手がサポートする。今シーズンの対INAC戦は、リーグ戦、プレナスなでしこリーグカップと合わせて3連敗中。シーズンを締めくくる大会での雪辱を誓う。こちらも、5年間に渡って指揮を執ってきた村松浩監督の今シーズンでの退任が発表されており、INAC同様に、有終の美で監督を送り出したい気持ちは強い。

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 立ち上がりに主導権を握ったのはINAC。1分、3分、6分とシュートを放つ。そして、その勢いのままにINACが先制点を奪った。時間は7分。ペナルティエリア内のボールをGK・池田咲紀子がクリアしようとした所へゴーベル・ヤネズが猛然とプレス。キックを体でブロックすると、こぼれたボールを左足で押し込んだ。浦和にとっては悔やまれる失点。しかし、諦めずにボールに詰めたゴーベル・ヤネズの判断が生んだゴールだった。その後も浦和を押し込む展開でINACが試合を進めていく。

 しかし、10分を過ぎたあたりから、少しずつ流れが変わる。
「前半で失点があったとしても、慌てないでサッカーをしようと選手たちに伝えていた」(村松監督・浦和)。その言葉通り、立ち上がりの時間帯を辛抱強くプレーした浦和がリズムを刻みだした。試合前の指示は「自分たちの勢いを出すために高い位置からプレッシャーをかけて相手コートでのプレーを増やす」というもの。それを実践することで浦和は流れを引き寄せた。若い攻撃陣を動かすのはボランチの庭田亜樹子。左からは加藤千佳が小気味良いドリブルで仕掛け、2列目からは猶本光がゴール前へ飛び出していく。そして24分には、中央での細かいパスワークからビッグチャンスも作りだした。

 後半になっても、その流れは変わらない。INACも2点目を狙って攻撃に出るが、持ち味である流れるようなパスワークは影を潜め、チャンスは単発で分厚い攻撃を繰り出すことが出来ない。対する浦和は、前半から続く、はつらつとたプレーで前へ出る。最後の部分での工夫や、精度に課題も残すが、女王の名をほしいままにするINACに臆することなく、持てる力のすべてを発揮して試合を進める。そして、アディショナルタイムに、この日最大のチャンスが浦和に訪れる。ペナルティエリア内左でフリーになっていた安田有希にボールが渡る。目の前に大きく空いたシュートコースに向かって左足を振り抜く安田。しかし、ボールは無情にもポストの右へ外れた。そして試合終了のホイッスル。INACは苦しみながらも1点を守り抜いて決勝進出を決めた。

「残念ながら準決勝敗退という結果になったが、今日は選手たちが、普段通りの戦い方で相手を脅かせる状況まで持っていった。今日の試合で本当に逞しくなったと感じている」と話したのは村松監督(浦和)。この日の戦いで得た教訓を活かして、さらなる飛躍を期待したい。
 そして、悪い内容でも結果を手に入れるのが強いチーム。そういう意味では、決勝進出を決めたINACには、改めて地力の違いを見せつけられた印象が残る。それでも、結果だけではなく内容も追い求めるのがINACのスタイル。「今日みたいなサッカーで勝っても嬉しくはない。決勝戦では、勝敗と言うよりも、自分たちがやってきたスタイルを出せればいいなと思っている」(星川監督・INAC)。INACらしい戦いで頂点に立つ。それがチーム全員の思いだ。

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【皇后杯準決勝:INACvs.浦和】試合後の両監督記者会見コメント


【皇后杯準決勝:INACvs.浦和】試合後の両監督記者会見コメント

村松浩監督(浦和レッドダイヤモンズレディース);
Q:試合を振り返って
「今日はありがとうございました。リーグチャンピオンに勝負を挑める環境が得られたと言う意味では、今日は本当にいいチャンスを与えられたと思っています。我々は、ここで勝つことを考えて挑んだんですけれども、本当に最後、後一歩のところで力及ばず、残念ながら準決勝敗退という結果になってしまいました。けれど、その中でも、今日は選手たちが、最後までチームの狙いを持って、普段通りの戦い方で相手を脅かせる状況まで持ってこれたと言う意味では、選手たちが、今日の試合で本当に逞しくなったと感じています。ただ、勝負事で、どちらかしか勝ち上がれないという意味では、INACとは今日で4試合目なんですが、1度も勝てずに今シーズンが終わってしまったことは悔しい想いで一杯です。それだけINACさんが強いということに敬意を表しながら、また、これからも、いいライバルとしてやっていけたらいいなと思っています」

Q:プラン通りのゲームが出来たと言うことでしたが、今日は、どのような狙いを持って戦われたのでしょうか?
「まず、立ち上がりで自分たちの勢いを出そうということで、高い位置からプレッシャーをかけて、相手コートでサッカーをしようというところから入って、前後半含めて、中盤の時間帯は、慌てないで自分たちのリズムでサッカーをするために、なるべく幅を使って、しっかりとビルドアップしながら、あるいは、局面でも相手のプレスを回避しながら、とにかく攻め急ぐなということでした。そして、もし前半で失点があったとしても、慌てないでサッカーをしようという流れを選手たちに伝えていました。
そして後半のところで、もし、このまま進んで行ったら0-1のまま変わらないという状況であれば、最後の15分間は、もう1回、高い位置からプレスをかけて、できるだけボールを奪ってカウンターが狙える状況を作り出すために、全体のラインを高くして、相手に圧力をかけて勝負をかけようというプランでした。今日は、ある程度、そういう流れで試合が出来たと思いますし、もちろん、相手にゲーム支配される時間があることも十分に想定内というか、そういう時間帯は必ずあるので、2点目を取られないように粘り強く守ろうということで、選手たちが90分間の中で、いいパフォーマンスを発揮してくれたと思います」

Q:今日、この試合で村松監督が退任されることが発表されました。今のお気持ちを聞かせてください。
「僕自身、5年間に渡ってレッズレディースを見させていただいて、途中で波がありましたけれど、就任当初からの目指すサッカーというもの、そして、未来につながるベースは出来たのかなと感じています。今回、私は退任しますが、今度は新しい監督で、さらにいい味付けが出来ればと思っています。去年、今年にかけて若い選手が増えてきましたし、彼女たちのこれからの成長を見守って行きたいなという気持ちは、もちろんありますが、新しい監督が来ることで、また新しいものが見いだせればと思っています。僕自身は、まずまず、自分の描いていたものは、この5年間で、ある程度の種をまけたのではないかなと思っています。あとは、新しい監督の下で、きれいな花が咲けばいいかなとも思っています。5年間、ありがとうございました。今後ともレッズレディースを取り上げてもらえればと思います」

◎星川敬監督(INAC神戸レオネッサ);
Q:試合を振り返って
「皇后杯はシーズン最後の大会ということもあって、リーグの成績は当てにならない大会だと思っています。今日の浦和さんも気持ちの入ったゲームをしてきましたし、それに対して、我々も最後までしっかりとファイトしました。苦しい戦いではありましたけれども、結果として勝ちきれたことで、やはり、これまで皇后杯を獲得したことのある、経験のあるチームだなというのは感じました」

Q:近賀選手が途中で交代しましたが、その怪我の様子と、近賀選手は代えのきかない選手だと思いますが、もし間に合わない場合は、どの選手を使おうと考えていらっしゃいますか?
「近賀選手については、まだ状況は分からないんですが、出られない可能性の方が高いと思うので、この後、報告を聞いて考えます。ただ、右SBには近賀以外の選手をあまり使ったことがありませんし、今日のように不慣れなポジションに何人か入っていくと、自分たちの良いサッカーが中々出来ないというのは事実だと思います。ただ、皇后杯は最初からベストメンバーを組めない状況で戦ってきたので、決勝戦は、今年の選手層の厚さについての真価が問われる試合だと思っています。誰を使うかは、今晩、ゆっくりと考えます」

Q:澤選手が練習不足もあって十分な状態ではないように見受けられましたが、それでも彼女を使った理由と、大野選手が途中から入りましたけれど、もともと途中から使う予定だったのか、それとも、ゲームの内容を見て使ったのか、それを教えてください。
「選手が怪我をしているにも拘わらず、準決勝に合わせてベストコンディションに持ってきてくれました。そんな彼女たちの試合に出たいという気持ちを酌んだ部分もありますし、自分にとって、今日の試合がINACでの最後の試合になるかもしれないので、納得できるメンバーを選びたかったというのがありました。それで2人を起用しました。交代のシーンでも、他のカードを切ってドローになってしまったら、もう大野とは試合が出来ない可能性があったので、大野を使いました。結果として、もし、延長になったとしても、その方が自分として納得がいくと言うことです。また、田仲陽子に関しては、あのタイミングで、あの舞台では、どのポジションでも迷いが出るだろうと思われたので使いませんでした」

Q:監督からもお話がありましたが、試合の直前に、今大会限りでチームを退くことが発表されました。そのことが、いい意味でも、悪い意味でも、今日の試合に影響を与えたとお考えでしょうか?
「選手たちには先週の段階で伝えてあったので、動揺はないと思っていました。けれど、必要以上に勝ちにこだわっていた感じもあったので、そういう意味では、少し影響があって、堅くなって、勝利を重視し過ぎて自分たちのサッカーが出来なかったというのもあるかも知れません。ただ、今日のゲームに勝ったことによって、そういうことではいけないと僕は言いたいし、今日みたいなサッカーで勝っても嬉しくはないので、決勝戦では、勝敗と言うよりも、自分がやってきたスタイルを出せればいいなと思っています」

Q:少し相手のペースの時間帯が長かったのは、そういうことが影響しているのでしょうか?
「あまり受けには入らないチームなんですけれども、少し受けに入ってしまったのは、もしかしたら、そういう面があったからかも知れません。それはメンタルの部分なのか、もしかしたら、チームが上手く行っていないのか、それは、これからゲームを振り返って確認したいところです」

Q:INAVで初めて獲得したタイトルが全日本選手権でした。これで3大会連続決勝進出ですが、全日本選手権に対する想いのようなものはありますか? 「自分がベレーザを初めて監督で見た時に、リーグ戦は取れれませんでしたが、この全日本選手権に優勝してから、ずっと勝っていますし、自分としては、全日本選手権は、まだ一度も負けていない大会ですし、INACが初めて日本一になった大会ですし、あの時の喜びは本当に嬉しいものでした。監督として、最後に自分に縁のある大会で戦えるというのは、すごく嬉しいことです。ですから、僕自身は、どうしても勝ちたい気持ちがあるんですけれど、そういう気持ちが影響して、今日のゲームみたいな内容のサッカーになってしまうのなら僕は嬉しくありません。そこの気持ちのバランスは難しいですけれど、僕の中では、リーグ戦も大事ですけれども、日本選手権は、それよりも大事な試合だと思っています」

Q:決勝戦の相手はジェフユナイテッド千葉レディースになりました。改めて、千葉に対しては、どのような印象をお持ちでしょうか?
「どこのチームであっても、決勝戦で当たる相手は大会で一番強いチームだと思いますし、実際にINACでプレーしていた選手も数多く在籍しています。どんなチームであっても油断がならない相手だと思います。準決勝で戦った浦和も、村松さんや、いろんな人の思いがあってのチームでしたし、どのチームにも、そういうものがあると思うので、今までのリーグ戦とか印象は、あまり当てにならないと感じています」

Q:今大会限りで退任ということですが、改めて、現在の心境や、来シーズンの去就などについて教えていただけるでしょうか?
「自分が監督を引き受けた時に、4年間はイメージして指揮を取って欲しいと言われていました。その当時、3年後のワールドカップとか、4年後のロンドンオリンピックに主力として行くであろうという選手を預かっていたので、自分の中では、4年間はしっかりとやらなくてはいけない、それは目標ではなく目的だと思っていました。  そうした中で、今年、国内のS級ライセンスを取得しましたが、女子サッカーは4年単位に大きな大会があり、それを中心に動いているために1年単位では考えにくく、そういう意味では、これからの4年間を自分がやるのか、違う人がやるのかという判断になると思います。それは、4年前にINACの監督を引き受けた時からある程度は想像していました。そして、自分がいい結果を出し、目的を果たすことが出来たら、次の所に行ってみたいと思っていました。ですから、退任については、いろんな要素がありましたけれど、悩みはしませんでした。この4年間、責任を抱えてやってきましたが、なでしこの結果と、代表選手を多く輩出できたということで、自分の中では最低限の責任は果たせたと思っています。もちろん、これからの若手を育てる作業と言うのは、監督として面白いことですが、そこは自分がやるよりも他の人がやった方が楽しみも大きいですし、また違った面が出るということもありますし、お互いにとっていいことだったと思います。自分は、ベレーザにいた時からバルサのようなサッカーをしたいと思っていたんですけれども、INACに来て、もっと質の高いサッカーや、自分のイメージ通りのサッカーを、凄い選手たちがピッチの上で表現してくれました。僕はバルサとか、レアルの次くらいに、いい選手を預かっていると思っているので、非常に楽しい時間でした」

Q:ご自身の今後の去就についてはいかがでしょうか?海外でというお話も聞いています。 「日々、勉強して行く身だと思いますし、S級を今年とったというのは、Jリーグの監督になれるスタートラインに立ったということに過ぎません。そして、日本よりも、確実にFIFAランキングが上の国がヨーロッパにはあるので、そういう国で仕事をすることが、自分のスキルアップであったり、今後のサッカー人生を考えても大きなことだと思っています。ですから、出来れば海外で仕事が出来れば、いろんなことが学べると思っています。監督としては、まだ若い部類に入りますし、1度、海外で仕事がしたいという気持ちもありますし、そういう交渉は今もしています。けれども、上手くいかなくて、フリーターになるかも(笑)。その時は、またINACIに雇ってもらわないといけないですかね、会長の聞いてみないと(笑)。まあ、冗談はともかく、次の仕事が決まっていないのに退任を発表したのは、チームが前へ進めなくなるからです。選手も不安がるでしょうし、退路を断った方が、自分も、チームもいいと思いました」

Q:将来的にはJの監督もという話もお聞きしますが、男子の方の監督も視野に入れていらっしゃるのでしょうか?
「男子、女子という区別は僕の中にはなく、女子だから、男子だからという考えもありません。世界の監督の中にも、女子の監督も、男子の監督もしたことがある人はいますから。ただ、国内か、海外かと聞かれたら、できれば1回は海外に行ってみたいという気持ちはあります。そけに、自分がやりたいサッカーを表現するには時間がかかりますけれども、国内では、その時間を与えてもらえそうにないですから、そこを、任せてもらえるような経験と実績を積むまでは、世界のいろんなところで学びたいという気持ちがあります」

【皇后杯準決勝:INACvs.浦和】INACが3連覇に王手


【皇后杯準決勝:伊賀vs.千葉】激闘!120分

皇后杯全日本女子サッカー選手権 準決勝
日時:2012年12月22日(土)11:00 kick off
会場:NACK5スタジアム
結果:伊賀FCくの一 1-1(3-4)ジェフユナイテッド千葉レディース
写真:金子悟/文:中倉一志

 今年から皇后杯の冠がついた全日本女子サッカー選手権大会。全国9ブロックの予選を勝ち抜いた22チームと、なでしこリーグ所属10チームの合計32チームが、頂点に立つために一発勝負のトーナメント戦を戦う。そして、INAC神戸レオネッサ、浦和レッズレディース、伊賀FCくの一、ジェフユナイテッド千葉レディースの4チームが準決勝にコマを進めてきた。準決勝の会場はNACKファイブスタジアム。冷たい雨が降るあいにくの天候の中、第1試合で伊賀と.千葉が相まみえた。

 伊賀の布陣は4-2-3-1。ゴールを守るのは久野吹雪。その前に右から藤本綾乃、宮迫たまみ、小野鈴香、山口絢子の4人が並ぶ。中盤をコントロールするのは、宮本ともみと那須麻衣子のベテランコンビ。そして、1トップの中出ひかりを、堤早希と小林真規子が両サイドから、そして乃一綾がトップ下からサポートする。  対する千葉は4-4-2。GKは船田麻友。高橋佐智江、櫻本尚子、河村真理子、細川元代の4人が最終ラインを形成し、中盤はアンカーの位置に柳井里奈を置き、右に清水由香、左に筏井りさ、トップ下に保坂のどかが構える。そして、スピードのある深澤里沙と、ポストプレーにたける小川志保が前線に並ぶ。

 さて、立ち上がりから積極的に仕掛けたのは千葉。「勝ちにこだわる」と話す上村崇士監督のもと、千葉が目指すのは、高い位置からプレッシャーをかけて相手を同サイドに押い込み、ボールを奪ってから素早く攻撃に転じようというもの。シンプルに相手の背後を狙うスタイルは攻め急いでいるようにも見えるが、それも千葉の狙いのひとつだ。しかし、危機察知能力とカバーリングの良さを見せる最終ラインを統率する伊賀の宮迫の前に、決定機を作るには至らない。

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 対する伊賀は、細かくボールをつなぎながらゲームを作る。宮本、那須を中心にボールを細かく動かしながら、激しく寄せてくる千葉のプレスを交わして前へ出る。最初の決定機は11分。中出が右サイドの裏を取ると、そのまま持ち込んで右足を振りぬいた。千葉GK船田のセーブの前にゴールはならなかったが、狙い通りの形から奪った決定機だった。しかし、その後は、前線で機転を作る役割を担う中出に、いい形でボールが入らず、千葉同様に決定機を作ることが出来ず。試合は緊迫した膠着状態のまま前半をスコアレスで折り返した。

 最初にゲームを動かしたのは千葉。後半に入っても高い位置からのプレスを仕掛け続ける千葉は、その勢いのままに60分、先制ゴールを奪う。決めたのは小川。右からのCKをゴール前で鮮やかに頭で合わせた。しかし、伊賀も負けてはいない。同点ゴールは69分。左サイドで那須からのパスを受けた中出がドリブルで中央へ。そしてラストパスを受けた宮本がダイレクトで右足を振り抜いてゴールネットを揺らした。
 その後も、両チームともに譲らない戦いは延長戦でも決着がつかずに勝負はPK戦へ。そして、ともに1本ずつ外して迎えた5人目で千葉がゴールネットを揺らし、伊賀が枠を外したことで、120分にわたる激闘は幕を閉じた。

「正直に言って、全く想像できない」(上村監督・千葉)。リーグ戦の結果は6位。神戸、日テレ、湯郷Bell、浦和の4強には1勝もできなかった事実を見れば、上村監督ならずとも同じ気持ちを抱いていることだろう。しかし、試合終了のホイッスルが鳴るまでピッチを走り回り、徹底してプレッシャーをかけ続ける姿勢が導いた決勝進出は、自分たちのスタイルを徹底して打ち出して戦った末の勝利。決してフロックではない。

そして上村監督は続ける。「決勝戦にふさわしいチームかどうかは分からない。けれど、立ち上がりから、しっかりと戦っていきたいという気持ちは持っている。決勝に行くだけでは意味はない。勝ちにこだわってやりたい」。決勝戦でも自分たちのスタイルで戦う気持ちは揺るぎない。

 一方、あと一歩で決勝戦を逃した伊賀にとっても、有意義な大会になったことは間違いない。リーグ戦の結果は7位と振るわなかったが、プレナスなでしこリーグカップ、皇后杯では、ともにベスト4に進出。4年前には2部でのプレーを余儀なくされたが、2010年に就任した大嶽直人監督のもと、3年間をかけて着実に力をつけ、今大会では名門クラブ復活を強く印象付けた。「この結果には悔いが残るが、それは新たなステージへのスタートだと捉えている」(大嶽監督・伊賀)。来シーズンは新たに浅野哲也監督を迎え、さらなる飛躍を目指す。

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【皇后杯準決勝:伊賀vs.千葉】試合後の両監督記者会見コメント


【皇后杯準決勝:伊賀vs.千葉】試合後の両監督記者会見コメント

◎大嶽直人監督(伊賀FCくノ一);
Q:試合を振り返って
「最後まで選手が戦ってくれましたし、追いつくところまでの力もありましたし、延長戦に入っても最後までゴールを目指す気持ちは強かったですし、選手を責めることはできないと思っています。戦ってくれた選手たちに感謝したいと思います。そして、寒い中、最後まで応援して下さった方たちにも感謝しています」

Q:本日の試合を最後に宮本ともみ選手が引退することになります。宮本選手にも一言お願いします。 「彼女自身、いろんな想いを抱えての試合でしたし、怪我を抱えながらも、それを感じさせずに戦ってくれました。今日で引退ということになりましたが、僕との2年間を戦ってくれた中で、まだ成長を続けていることを感じさせる部分がたくさんありました。まだまだ出来ると思いますが、本人が決めたことですので尊重したいと思っています。最後までチームを引っ張ってくれましたし、精神的なところでチームを支えてくれました。いろんな意味で、若い選手たちは彼女から吸収する物が多かったと思います。チームにいろんな物をもたらしてくれたことを感謝しています」

Q:監督ご自身も、この試合を最後にチームを去ることになりますが、伊賀の監督としての3年間を、改めて振り返っていただけますか?
「1年目には苦しい想いをしましたが、なでしこリーグに昇格し、入れ替え戦に行くチームではなく上位を争えるチームに成長できたと思いますし、それは自分にとって、次のステップに向けての自信になると思っています。そして、この3年間、選手たちが厳しいトレーニングに本当に良く耐えてくれました。非常に選手には感謝しています。その結果、技術も上がったと思いますし、相手から怖がられるチームにもなりました。また、試合に出られない選手も、怪我で十分なトレーニングが出来なかった選手も、本当に前向きに、チームのことを考えてくれて、全員から、上のレベルまで成長するんだという気持ちが強く伝わってきました。その結果が、ここまで来れたということでしょうし、自分がやってきたことは間違いではなかったと思っています。今日は、この3年間の意地を見せたかったので、この結果には悔いが残りますが、それは新たなステージへのスタートだと捉えています。チームには、カップ戦と皇后杯でベスト4まで進出できた力を、次につなげていってほしいと思いますし、自分も次につなげ行くという意味で、これから新たな選手を育てていきたいなと思っています」

◎上村 崇士監督(ジェフユナイテッド千葉レディース);
Q:試合を振り返って 「前半から厳しい戦いで、いつかは流れが来るかなと思っていたんですが中々流れが来ず、プレッシャーもあまりかけられず、延長も含めて伊賀のペースで試合が進んだなと思っています。結果的にPKで決勝に上がることが出来たので、チームとしても、選手個々にとっても、非常に大きな意味のある今日の勝利だったと思いますが、試合内容を見れば、伊賀の方が、決勝に進むにふさわしいチームだったのではないかと思っています。けれど、チャンスを与えていただいたので、相手が浦和であろうが、INACであろうが、どちらも僕たちが目指しているチームなので、決勝戦は思いきって戦いたいと思います」

Q:延長戦に入る時に、円陣を組んでにこやかな感じで指示をされていたようですが、どのようなことを離されたのでしょうか?
「相手はしっかりとつないでくるチームですし、サイドチェンジをされた時に上手くずれることが出来ず、もっと言えば、ジェフのディフェンスの狙いである、同サイドに追い込んで人数をかけて守備をするということが、宮本選手と那須選手に崩されてチームのバランスを失っていたので、まずは同サイドに追い込んで行こうという話をしました。それと、攻められているからこそ、FWの選手はズルズルと下がらずに、しっかりと攻撃のチャンスを狙っておけということでした」

Q:延長PK戦を戦って、中1日で決勝戦を迎えることになりますが、コンディション面で不安はありませんか? 「日頃からハードな練習をしているので、あまりそういうことは選手たちは考えていないんじゃないかと思います。むしろ、経験したことのない舞台に立てるというだけで選手は興奮しているでしょうし、『疲れ』どうのこうのと言っていると、浦和、INAC相手には何も出来なくなってしまいます。ですから、明後日の試合は、しっかりと前からプレッシャーをかけて戦っていきたいと思います」

Q:初めての決勝進出ということに対する率直なお気持ちを聞かせてください。
「正直に言って、全く想像できないです。多分、記者の皆さんの方が目が肥えていると思うんですけれども、誰も、ジェフが決勝に進むことなど想像できなかったと思いますし、僕たちも想像できていないです。ただ、何となくイメージですけれども、本当にすごくいい舞台を経験させてもらえるなという気持ちと、そこにふさわしいチームかどうかは分かりませんが、立ち上がりから、しっかりと戦っていきたいという気持ちは持っています。決勝に行くだけでは意味はないと思うので、勝ちにこだわってやっていきたいなと思います」

Q:想像が出来ないと言うことですが、浦和、INAC、それぞれ、今年のリーグ戦を戦った印象の中で、どのように戦えば勝機があるのかというところを聞かせてください。
「準々決勝の相手のベレーザも、今までコテンパンにやられているチームでした。もちろん、どんな試合も勝ちに行っているんですけれども、結果的に、2-2から、延長、PKで勝つという展開は、全然、想像していませんでした。けれど、選手たちには、どんな不格好な戦い方であっても、この大会は勝ちにこだわると言っています。今の時点では、浦和やINACに上手さで勝とうとしても追いつくわけではないので、明日も、泥臭く、球際を厳しく戦っていきたいと思っています」

Q:どちらが勝ち上がってきても組織力を打ち出してくると思います。そして、ジェフも組織的なプレッシングが狙いだと思います。けれど、勝利を考えると、どこかで個の勝負で勝たなければという監督の思いもあるのではないかと思うのですが。
「そうですね。例えばFWの小川なんかはボールも収まりますし、1対1も仕掛けられるので、彼女のところでボールが収まれば、何かアクションが起こせるのではないかと思っています。質問とは全然別ですが、個人的には、浦和に勝ってほしいと思っています。本心です(笑)」

【皇后杯準決勝:伊賀vs.千葉】激闘!120分


【フットボールな日々】年末に思うこと

121229_01.jpg 取材・文・写真:中倉一志

 成田空港から東京へ向かう電車の中で鈴木惇の移籍を確認しました。27日の新聞報道を見て「あってはならないことだけれども、恐らく事実だろう」と思っていましたが、さすがに、何とも言いようのない気持ちでいます。プロ選手である以上、移籍は当たり前のこと。彼の決断は尊重されるべきだと思っています。しかし、地域密着を目指すクラブが、2年続けて、ユース年代から育て上げた選手を、しかもJ1昇格争いのライバルになると思われるクラブに引き抜かれるという事態に、空いた口が塞がらない思いです。

 さらに言えば、2010年のシーズンオフに、契約交渉直前まで「絶対に移籍はない」と公言していた永里源気が、残留争いの直接のライバルと見られていた甲府に移籍したことや、昨シーズン、中心選手のほとんどが移籍するなど、この2年間の契約交渉は、あり得ない内容と言わざるを得ません。もちろん、クラブ側にも言い分はあるでしょうし、個々のケースを見れば、仕方がないと言えるのかも知れません。しかし、それが続いて、しかも大量に起こることに問題があります。

「資金がない」は言い訳になりません。J2で言えば、その規模は決して少なくないからです。けれど、それが町の規模に見合っているものなのか、総予算に占めるチーム人件費の割合が適切なのかと考えた時、福岡は大きな問題を抱えています。加えて、移籍を考えていない選手が、なぜ、最終的にチームを離れることを決断するのかを考えた時、福岡が資金面以外の問題も抱えていることが浮かび上がってきます。仕方がないで片づけていては、これからも同じことが繰り返されるだけです。

 いま福岡に求められているのは、クラブ経営についての考え方を根本から見直すことです。従来の七社会、市役所からの役員派遣ではなく、外側から長く福岡を見て、抱えている問題を熟知している3人がフロントに就任した時、福岡に関わる多くの人たちが、大きな期待を寄せたのは、今度こそ抜本的な見直しを実行してくれるだろうという想いがあったからです。努力をしていないなどと批判する気はありません。しかし、結果として、従来の経営と変わらないばかりか、さらに問題が深まっている事実を重く受け止めてほしいと思っています。

 一番悔しい、情けない想いをしているのはフロントかも知れません。当事者だからこそ、周りから福岡を見ている人以上に辛い想いもしているはずです。けれど、その想いを自らに向けて、すべての原因が自分の内にあることを認めなければ、福岡改革の道はありません。いま、危機的状況に陥っているクラブを、直接、救うことが出来るのはフロントだけです。福岡にJクラブが生まれてから17年間に渡って繰り返される負の連鎖を止めるべく、経営の抜本的な見直しをしてくれることを切に望んでいます。



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