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まさかのドロー グループリーグ突破は最終戦に

120829_01.jpg 取材・文/西森彰

FIFA U-20女子ワールドカップ日本2012
グループA U-20日本女子代表(ヤングなでしこ)vs.U-20ニュージーランド女子代表
2012年8月22日(水)19:20キックオフ 宮城スタジアム
U-20日本女子代表2-2(前半1-2)U-20ニュージーランド女子代表
得点者:オウンゴール(11分)、ホワイト(15分)、田中陽(37分)、道上(71分)

 メキシコ、ニュージーランド、スイス……。U-20日本女子代表=ヤングなでしこが入ったグループAは、いわゆる「開催国のグループ」。ブラジル人が言うところの「パパイアにシロップのかかったような」甘い組み合わせだった。いや、甘い組み合わせのはずだった。しかし、勝利を確信して臨んだ第2戦で、若きなでしこたちは手痛い引き分けを喫した。グループリーグ突破どころか1位抜けの行方さえ、予断を許さない状況へ。平坦な一本道はひとつのミスから、一転、アップダウンの激しい山道になった。

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 U-20ニュージーランド女子代表とは、U-17世代で対戦し、この時は6対0と圧勝している。A代表経験者もいるとは言え、全体的には勝負付けが済んでいるはずの対戦相手。そんな余裕も隙につながったのだろう。試合開始から3トップでかかってきたニュージーランドの攻撃にたじろぎ、11分、ゴール前の混戦から仲田歩夢が、痛恨のクリアミスで先制点を献上した。
 さらに、焦って取り戻そうと前がかりになったところでカウンターを浴び、右サイドを突破したウィルキンソンにクロスを上げられた時点で、中央は2対2の危険な状況。ホワイトの放ったシュートもいいコースに飛んで、点差は2点に開いてしまった。ここで、吉田弘監督は、左サイドハーフの仲田と右サイドハーフの横山久美にポジションを入れ替えるよう指示を出す。横山の良さを引き出すための策だった。

 仲田の先発起用理由について、吉田弘監督は「宮城に対する想い」を買ったと述べた。モチベーションに重きを置いた選択に対する是非はさておく。疑問があるのは、左サイドのスペシャリストである仲田を、敢えて横山と先発で併用したことである。
 横山は、所属する岡山湯郷Belleでは、4-4-2の右サイドハーフでも起用されている。当人も「(右サイドが)やりにくいということはありません。どちらで出てもやらなきゃいけない仕事は同じですから」と気にしていない。ただ、このチームでは、左サイドからドリブルで切り込んで右足のシュートというイメージがある。また、横山も、仲田も、スタミナが豊富にあるタイプではない。メキシコ戦での前後半のリレーは、ふたりの特性に合っていた。
 しかし、このニュージーランド戦では、同時にふたりをピッチへ出してしまっていた。右サイドで窮屈そうにプレーする横山を見かねて、吉田監督は仲田と左右逆転させたわけだが、今度は、仲田が視野の違いに戸惑いを隠しきれなかった。そして、前半29分、仲田は早々とピッチを後にする。予定よりもずいぶんと早い段階で、吉田監督は西川明花の投入を迫られた。

 仲田の代わりに入ってきた西川の持ち味も、ボールを持ってからの仕掛けだ。「どんどん、仕掛けていけ」という吉田監督の期待に応えて、右サイドでボールを持つと、最終ラインにドリブルで突っかけていく。37分に西川が入れたボールを、ニュージーランドのパールがクリアしようとする。その瞬間、田中陽子がこのキックを片足でストップ。ボールを奪い返して放ったシュートがニュージーランドのDFに当たる幸運もあって、追撃の1点となった。

 後半に入ると、一方的な日本ペースは加速する。藤田のぞみ、猶本光のダブルボランチが効果的にボールを散らし、ニュージーランドの選手に的を絞らせない。左右に振り回されたニュージーランドは両脇のスペースを放棄し、中央で弾き返すことを選択した。ヤングなでしこはゴール前に立ちはだかる白い壁へ挑み、雨あられとシュートを放つ。そして71分、田中陽のコーナーキックに道上彩花が頭で合わせてようやく同点に追いついた。
「どちらの選手たちが先発すべきだったかを、私の口から正直に言うことはできない」
 ニュージーランドのアーロン・マクファーランド監督は、西川、柴田華絵、田中美南ら途中交代で入った日本選手の動きを、そう称えた。確かに、リードされた難しい局面で、すぐにゲームへ溶け込んだ彼女たちの働きは素晴らしかった。だが、最後の時間帯、左サイドで輝きを増すふたりは、どちらもピッチを後にしていたのである。前半、あれだけ被っていたのに……。

「ここで痛い目にあったことをプラスに捉えています。グループリーグで全部うまくいってしまうと、決勝トーナメントでは一度も負けられない。今はここで躓いていてよかったと思っています」(猶本)
「決勝トーナメント進出を決めたかったんですけれど、今は次の試合に勝って、きっちり1位突破したいという気持ちですね」(横山)
 選手たちは、そう言って前を向いた。失敗して初めて見えてくる課題もある。ひとつも負けられない決勝トーナメントを迎える前に、課題に向き合い、それを整理する機会を得ることができた。まだ、そう強がることができる段階だ。大会が終わってから「あの時、火傷をしておいて良かったね」と振り返るためには、もう、失敗は繰り返せない。

【U-20日本女子代表】
  GK: 池田咲紀子
  DF: 高木ひかり、土光真代、木下栞、浜田遥
  MF: 藤田のぞみ(77分/田中美南)、猶本光、横山久美(60分/柴田華絵)、田中陽子、仲田歩夢(29分/西川明花)
  FW: 道上彩花
【U-20メキシコ女子代表】
  GK: エリン・ネイラー
  DF: ホリー・パターソン、レベッカ・バローズ、ブリジット・アームストロング、アシュリー・ウォード
  MF: エビー・ミリン、ケイティ・ボーウェン、ナディア・パール(64分/ケイト・ロイ)
  FW: ロージー・ホワイト、ステフ・スキルトン(68分/オリビア・チャンス)、ハンナ・ウィルキンソン(91分/ケイティ・ルード)


【フットボールな日々】難敵松本 鍵を握るのは我慢

120826_01.jpg 取材・文・写真/中倉一志

 前節の富山戦は劇的な3ゴールで今シーズン初の逆転勝ち。ゴールを奪った選手と言い、当日のスタジアムの一体感と言い、現在の福岡にとっては最高の勝利だったように思います。しかし、これで福岡の置かれている状況が変わったわけではありません。「これで満足しているようなら次は勝てない。この前の試合は忘れて、自分たちが置かれている立場と状況をしっかりと把握して次の試合に臨みたい」と城後寿が話した通り、福岡にとって余裕を持って戦える試合はひとつもありません。

 そして迎える松本山雅は厄介なチームです。戦うスタイルは、とにかく徹底して長いボールを1トップの塩沢勝吾に当てるというシンプルなもの。しかし、単に放り込むだけではなく、トップ下の2人、両サイド、ボランチがこぼれ球にアグレッシブに反応して、人数をかけて押し上げてきます。ここまでの総得点26が示すように得点力は高くはありませんが、上下動の激しい、どちらかというと慌ただしいとすら感じられるリズムに巻き込んでしまうところに松本の本当の狙いがあるように思います。

 この戦術を支えているのが前線のスピードと、チーム全員の豊富な運動量とハードワーク。攻撃に人数がかかっているのは前述の通りですが、縦に慌ただしい攻撃にも拘わらず、相手ボールの時には自陣に全員が戻ってスペースを消してしまいます。そして、それを90分間に渡って徹底して繰り返します。このパターンに付き合って、互いのゴール前を頻繁にボールが行き来する展開に引き込まれると、全体が間延びし、バタバタした展開からカウンターを受けて失点するという悪循環にはまってしまいます。

 前回対戦時に福岡が引き分けたのは、まさにこのパターン。そして、前節、松本と戦った京都も、同じように相手のリズムに巻き込まれて0-1で敗れています。ボールの出しどころにしっかりとプレッシャーをかける、あるいは、セカンドボールをしっかりと保持するなど、福岡も対応策は練っていると思いますが、余りにもシンプルな松本のサッカーは「やりにくい」というのが正直な感想だと思います。その中で、いかに平常心を保つか。それが今日の試合の最大のポイントであるように思います。

 おそらく、ボールを保持するのは福岡でも、自分たちのリズムでサッカーをやらせてもらえない時間帯が多くなるのではないかと予想しています。そんな時に、急いで攻めれば相手の思う壺。たとえ、どんな状況にあっても、しっかりと我慢することが最大の鍵になるように思います。福岡にとって求められているのは、残り12試合を勝ち続けること。素晴らしい内容で相手を圧倒することにあるのではありません。難しい時間帯が多くなるでしょうが、90分間で勝つということを肝に銘じて戦ってほしいと思います。


ヤングなでしこ、好スタート!

120825_01.jpg 文/西森彰

FIFA U-20女子ワールドカップ日本2012
グループA U-20日本女子代表(ヤングなでしこ)vs.U-20メキシコ女子代表
2012年8月19日(日)19:20キックオフ 宮城スタジアム
U-20日本女子代表4-1(前半1-0)U-20メキシコ女子代表
得点者:柴田(32分)、猶本(56分)、横山(77分)、田中陽(89分)、ウエルタ(90+1分)

 8月19日(日)、U-20女子ワールドカップが開幕した。
 地元開催で優勝を目指すU-20日本女子代表=通称ヤングなでしこは、初戦でU-20メキシコ女子代表と対戦した。会場となったのは、昨年の東日本大震災の被災地でもある宮城県営陸上競技場。なでしこジャパンの佐々木則夫監督、キャプテンの宮間あや、同僚の福元美穂らがアンバサダーとして駆けつけた。そして、9,542人の観客と多くのメディアを集めたこの試合で、ヤングなでしこは田中陽子、横山久美らレギュラー格の選手を前半は温存した上で、4対1の勝利。しっかりと勝ち点3を掴み、好スタートを切った。

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 メキシコのレオナルド・クエジャル監督は、これまでにも同国のA代表を率い、何度も日本と対戦してきた。ラテン系、しかもメキシコという明るいお国柄でありながら、試合後の記者会見では、常に寂しそうな表情で受け答えしている印象がある。つまり、日本に苦渋を飲まされ続けているということだ。ワールドカップ出場を賭けた大陸間プレーオフに始まり、アジアカップ前の親善試合まで、ほとんどいいところがなかった。

 そんなクエジャル監督の秘蔵子と言えるのが、ゴールキーパーのセシリア・サンティアゴだ。15歳でフル代表にデビュー、有望選手としてエリート育成対象となり、年代別代表でも正GKの座を与えられてきた。
 2年前のU-20女子ワールドカップドイツ大会でも、メキシコは日本と開幕戦で対戦。雨あられと飛んでくるシュートをサンティアゴが防ぎ続け“僅か”3失点に食い止めてドローに持ち込んだ。ここで得た勝ち点1を足がかりにメキシコは決勝トーナメントへ進出。一方、試合内容で圧倒しながら勝ち切れなかった日本は、リズムに乗り損なってグループリーグ敗退に追い込まれた。女子サッカー界にとっては前回大会の、そして日本サッカー界全体にとっては、五輪男子のリベンジ・マッチでもある。

 因縁を引きずるゲームは、序盤から日本の選手には固さが目立ち、パスが数メートル流れることもしばしばだった。メキシコのプレッシャーは緩く、ヤングなでしこ本来の力を考えれば、もう少しやれていいはず。明らかに不本意なデキだった。ただし、この世代の選手にとっては、1万人近い観衆やテレビカメラの前でプレーするのは、なかなか経験できない。
 そうした初戦の難しさも踏まえていたのだろう。吉田弘監督はベンチには田中陽子、横山久美という主力級の選手を残した。試合の前半がうまくいかなくても、ハーフタイムに修正が可能だし、膠着状態を打開できる選手がいる。ダブルボランチの藤田のぞみ、猶本光でチームバランスに対する保険もかかっていた。その一方で、こうした競争意欲をあおる、選手起用がプラス面をもたらした。仲田歩夢、柴田華絵の奮闘である。

 仲田は、仙台にある常盤木学園の出身。東日本大震災に被災した時には、寮の中にいたという。試合中のケガで松葉づえをついている仲田は、チームメートたちに助けられながら、ようやく避難場所へ移動した。そんな経験もあって、この被災地での開催に感じるところは大きい。年明けに和歌山で行われた、なでしこ合同合宿で「(自国開催、宮城でのゲーム)そういう機会がありそうだ、ということを先日聞きました。『少しでも恩返しができればいいな』と思っています」と話していた。
 左サイドバックから本来の位置であるSHに舞い戻ると、試合開始から積極的に仕掛け、得意の左足から何度か好機を作りあげた。飛ばした分だけ、最後はバテたが、力みの目立っていたチームメイトに自分を取り戻す時間を与えた。得点にこそ絡めなかったが、チームへの貢献は大きかった。

 そして、柴田は大量7名を送り込んでいる浦和レッズレディースの一員。6月にJグリーン堺で行われたアメリカ戦では第2試合に先発。チーム状態が良いとは言い難い中で、ひとり奮闘する姿は印象的だった。
 この日はトップ下で先発。仲田、田中美南にボールを捌いてサイド攻撃を促し、自らもメキシコゴールに迫った。そして、無得点が続き、田中陽、横山がウォーミングアップを始めた直後の32分、先制点を奪う。田中美南のパスをこれ以上ないタッチとターンでコントロール。相手DFが林立するゴール前でのシュートに持ち込んだ。ハーフタイムで交代を命じられたが、柴田個人としても、第2戦以降につなげる得点だった。

 後半から田中陽、横山を送り込んだ日本は、サンティアゴの守るゴールから4点を挙げた。内容は2年前とまるで違う。前大会は前がかり(というか前のめり)になって3点を奪ったが、その代償としてやはり3点を失っている。今回は、ほぼ全ての試合時間を支配し続けた。守備ではややバタつくシーンも見られたが、池田咲紀子の好守もあって、ロスタイムの1失点に抑えている。大会全体を考えればまずまずのスタートだ。
 やや気になるのが、そのロスタイムの失点と、個人技による得点への偏り。キャプテンの藤田は「第1戦の課題は既に共有しています。前の試合を振り返るより、次の試合に気持ちは向いています」と力強い。2戦目以降では大会の雰囲気にも慣れ、さらに素晴らしいサッカーが見られるはず。そこに期待したい。

【U-20日本女子代表】
  GK: 池田咲紀子
  DF: 中村ゆしか(87分/木下栞)、土光真代、高木ひかり、浜田遥
  MF: 藤田のぞみ、猶本光、田中美南、柴田華絵(H.T./田中陽子)、仲田歩夢(H.T./横山久美)
  FW: 道上彩花
【U-20メキシコ女子代表】
  GK: セシリア・サンティアゴ
  DF: アリアンナ・ロメロ、ビアンカ・シエラ、ケニア・サンチェス、バレリア・ミランダ
  MF: クリスティナ・ムリジョ、ナジェリ・ランヘル、ダニエラ・ソリス(58分/クリスタル・マルティネス)、タニャ・サマルシッチ、アリアナ・マルティネス(41分/ソフィア・ウェルタ)
  FW: ナタリア・ゴメスフンコ(77分/ジャミレ・フランコ)


【フットボールな日々】いま改めて思うこと

120821_01.jpg 取材・文・写真/中倉一志

 非常に辛く、悔しい敗戦でした。城後寿が1点を返した時に、久しぶりに記者席で大声を挙げてガッツポーズをしてしまいましたが、それほど力の入る、絶対に勝たなければいけなかった試合でした。勝負には勝ちもあれば、負けも引き分けもあり、どんな時でも、それを受け止めた上で次へ進まなければいけませんが、昨日の試合は、そういう問題を越えてしまったと感じています。クラブの問題として考え、手を打たなければ、行くところまでいく。そういう危機感を感じています。

 第27節・岐阜戦で連敗を4で止めはしましたが、その後2連敗。23節から続く7試合で20失点を喫して6敗。結果もさることながら、その失点の多さ、失点の仕方は、J2全体の傾向、個々の能力、戦術云々の問題を越えて、あり得ない状況にあります。古賀正紘がいつも口にするように、失点シーンのひとつ、ひとつの局面には理由はありますが、それ以前の問題として、何故、そういう状況が続いているのか、しかもそれが、何故、まったく改善されないのか、そこに本当の問題があります。

 こういう結果が出ている以上、トレーニングの内容を工夫することは必要です。ただし、雁の巣球技場での空気が試合に全くリンクしていないのも今シーズンの福岡の大きな問題点。以前のブログでも書きましたが、トレーニング云々以前に、チームとしてのありよう、ひいてはクラブとしてのありようの問題が、あり得ない状況を産んでいると判断すべきだと私は考えています。それは多分、チームの力に直接関係がないように見える部分。注意深くチェックしなければ見逃してしまいがちな部分。けれど、絶対に譲れない部分です。

 直面している問題の解決を現場だけに委ねるのであれば、おそらく、問題は解決しないように思います。クラブとチームは並行して存在している組織ではなく、チームは、あくまでもクラブの管下にある組織のひとつ。そこで起こった問題を現場が解決に努めるのは当然のことですが、現状をどのように捉え、どのような手を打つのかを、クラブとして明確にする必要性を感じています。手段ありきではなく、チームのありよう、クラブのありようの問題点を、クラブとしてどのように判断し、どのような意思表示をするのか。まずは、それが求められているように思います。

 どんなことでもそうですが、起こっていることをリセットするわけにはいきません。昇格云々という問題を越えて、クラブ史上最悪と言ってもいい状況を、クラブとして乗り越えなければいけません。それをせずに、目先だけを変えても、結局のところ、同じことが繰り返されるに過ぎません。いま必要なことは、クラブの力を総動員して、問題に真正面からぶつかること。そして、それを見える形で示すことだと思います。明けない夜はありません。それを支えようとしている多くの人たちもいます。強い意志を示して欲しいと願っています。


【フットボールな日々】問われるのは結果

取材・文・写真/中倉一志

 湘南との戦いで福岡に求められているのは、前節の勝利をつなげることができるかという、ただ1点にしかないと思っています。先のことを考えれば、内容を改善することも重要な要素ではありますが、残り15試合となった段階で、首位・甲府との勝点差が20、J1昇格プレイオフ出場権が与えられる6位との勝点差が16という現状の中では、福岡の立場は、J1昇格のために勝ち続けて相手の結果を待つというもの。勝たない限り、何も始まらないからです。

 しかし、迎える湘南は、現在J1昇格争いの真っただ中にいるチーム。福岡にとっては非常に難しい相手であることは間違いありません。その印象を「ハイプレッシャー。攻撃的。ハードワーク。とにかく前へ、前へと仕掛けてくるチーム。全員が動き回っているイメージがある」と西田剛は話します。特に厄介なのは、高い位置からプレッシャーをかけてボールを奪いに来るスタイル。ボールの支配率を高めることが生命線の福岡にとっては、湘南のハイプレッシャーを、かいくぐることができるか否かが勝敗の行方を握っています。

 ここまでの27試合を振り返れば、福岡が自分たちのリズムを刻めば、どんな相手であっても主導権を握ることは可能です。しかしながら、定められたスペースを互いに奪い合うサッカーというスポーツでは、両者の勢いは常に相対的なもの。どちらかが出れば、どちらかは下がらざるを得ず、現段階での両チームの状態を比較すれば、湘南のほうに分があるのは明らか。不用意に仕掛ければ、高い位置で奪われてピンチを招くことになりかねません。

 そういった状況の中で、福岡にとって求められているのは、いかに自分たちの時間を長くするかにあるのではなく、相手の時間帯をいかに辛抱強く凌ぐかにあると思っています。「自分たちが悪い時間に失点をしないということと、悪い時間帯でも点を取るというように、悪い時間帯をどのように過ごすかがポイント」と鈴木惇がにどうするかがポイントだと思う」と話すのは鈴木惇。その中で、耐えて見つけたチャンスの時に、積極果敢に攻め上がってゴールを奪うことが勝利への道です。

 押し込まれる時間が長くなる試合においてはミスも増えるかも知れません。しかし、互いにカバーしあい、慌てずに、そして冷静に試合を進めること。それが選手たちに求められること。思うようにいかない展開になっても、声をとぎらせず、選手の背中を押し続けることがサポーターに求められていること。そして、90分間に渡って、ピッチとスタンドが一体となって湘南と戦うことが、福岡に関わる全ての人に求められていることです。湘南との戦いは総力戦。一糸乱れぬ姿で勝利を掴みたいものです。



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