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初登頂は逃したけれど……。京都精華女子、インターハイ初挑戦を終える。

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文/西森彰  写真/金子悟・西森彰


 京都精華女子の越智健一郎監督は、初出場のインターハイで「てっぺんを目指す!」と宣言した。夏こそ全国初出場だが、一昨年、冬の選手権でベスト4は経験している。もっとも、当時は経験不足で準決勝から45分ハーフ(準々決勝までは40分ハーフ)になることも、試合当日に初めて知ったほどだった。それから1年半、全国の舞台に返り咲いた。

「激戦区から複数の強豪が出てくる冬の選手権では、体力的な部分も含めて、今のチームにベスト8を突破できる力はないでしょう。その点、インターハイは給水タイム付きの35分ハーフ。しかも今年から休養日あり。4試合勝てば優勝のここなら一発を狙えると思います」(越智監督)

 京都精華は、前年ベスト4に進んだ大商学園の残してくれたシードに入った。「全部、あっちの山に行け!」。指揮官の念力が通じたか。日ノ本学園、常盤木学園、藤枝順心の3強は、全て、逆の山へ。どんどんチャンスが広がっていく。


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「ドリブルとリフティングだけやっているチーム」(越智監督)は、どの選手もテクニックに絶対の自信がある。中でもキャプテン・谷口木乃実とともに「ウチのダブルエース」と頼りにする園田瑞貴の足技は飛び抜けている。ネイマールを意識した短髪をトレードマークに、天衣無縫なプレーも本家同様。今大会でも、切れ味鋭いルーレットなどを披露して、スタジアムを沸かせてきた。

「見ている人にも楽しんでもらいたいけれど、一番は、自分がやっていて楽しいサッカー。サッカーは楽しんでナンボだと思うし、監督にもそう言われています。自分が楽しまないともったいないでしょう」(園田)

 初戦の専大北上戦ではハットトリック。続く準々決勝の開志学園戦ではDF2枚をリフティングで交わし、GKの動きを見ながらのループシュート。これが決勝点になった。

「ゾクゾクしました。何となく入った決勝点じゃない。This is SEIKA! これぞウチのサッカーですよ」

指導する越智監督でさえ震える美技で、観衆を魅了した。

 準決勝の湘南学院戦でも「たぶん、あそこに走り込んでくれるだろう、と。計算ではなく感覚で」送ったパスで、金塚咲恵の先制点をアシスト。試合終了のホイッスルを聞いて「肺が潰れる!」と声をあげるほど、攻守に走り切った。準決勝までの3試合で4得点4アシスト。サガン鳥栖を模した、スカイブルーにピンクのユニフォームが決勝の舞台に進んだのは、「ナンバー10」の活躍あってこそ、だ。


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 決勝戦の相手は日ノ本学園。近畿大会決勝では0-3と敗れていたが、京都精華のイレブンは、全国の切符がかかった大阪桐蔭との準決勝で消耗しきっていた。その意味で当時の敗戦にショックは無く、むしろ「全国の決勝で真の決着を」というモチベーションにもつながっていた。

 駒沢陸上競技場での再戦。いつも、カジュアルな服装が目を引く指揮官は「ボクの格好がチャラいというだけで、ボクが叱られるのは構いません。ただ、選手があれこれ言われたらかわいそうだから、全国大会のファイナルまで行ったら、きちんとします」と口にしていたとおり、ジャージーに着替えて臨んだ。

 指揮官の服装はよそ行きでも、選手のプレーは普段着のまま。体力面での不利を認識し、ボールを回されても追いかけない。そして早い出足に押し込まれても、粘り強く味方につないでいく。最初の給水タイムまでは辛抱強い戦いで持ちこたえた。前から追い込んでくる日ノ本の選手も、終盤には疲れが出るはず。そこにエアポケットを生じる可能性がある。京都精華のイレブンは、一発のチャンスを狙い続けた。

 誤算というべきか。もったいない失点は前半の残りわずかとなった33分。ペナルティエリア内での連携ミスから、京都精華DFがボールを奪われ、池尻茉由の先制ゴールを浴びる。蹴って逃げようとしないチームゆえの宿命とも言える失点。その直後、イレブンの士気を高めるかのように、園田は左サイドをドリブルで持ち上がり、強烈な谷口のミドルシュートへつなげたが、ミスから許した失点は、大舞台の経験が少ない選手から集中力を奪った。



 ハーフタイムを挟んでも、両者の勢いは変わらなかった。いや、むしろその差は広がった。3つの接戦を制してきた日ノ本が、勝機を見出し、嵩にかかって攻めたてる。一方、今大会、初めて追う立場に回された京都精華は、園田を前線に回した瞬間、バランスが完全に崩れた。

 日ノ本学園7-0京都精華女子。個性派軍団初の頂上アタックは失敗に終わった。

 表彰式終了後、日ノ本と京都精華のメンバーが入り混じってフォトセッションに臨んだ。ファイナルの重みを経験した京都精華の選手らは「冬の選手権では逆の立場で記念撮影を」と心に期していることだろう。


サッカーダイジェストWebで、日ノ本学園・八坂芽依選手のコラムを担当しました。そちらもご覧ください。


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