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2017プレナスなでしこリーグ展望

リーグ開幕記者会見
リーグ開幕記者会見

西森彰=文・写真 金子悟=写真
 

開幕を今週末に控えるなでしこリーグ。まず25日(土)に2部が、翌26日(日)に1部が覇権を賭けた戦いのスタートを切る。


リーグ3連覇を狙う日テレ・ベレーザは、「選手はほとんど変わっていないが、昨シーズンまでの戦い方をベースにしていきたい」と森栄次監督はいう。チーム全体で見れば平均年齢約22歳の若いチーム。アルガルベカップに招集された昨季の得点王・田中美南が、年齢面でも、役割でも、ちょうど中心に位置している。

日テレ・岩清水
日テレ・岩清水

昨季MVPの阪口夢穂とともに、今季もチームをけん引するのが岩清水梓だ。「ひとつも楽な試合はない。目の前の試合をひとつひとつ勝って、その先の優勝を目指したい」(岩清水)。1部で唯一の30代キャプテンとなったが、常に背中を追ってきた加藤與恵のリーグベストイレブン連続選出記録(11回)に並び、今季は先輩超えに挑む。「(ベストイレブンは)チームの好成績あってのこと」とチーム成績が個人の評価は表裏一体と強調した。

一般的に、若さは脆さを含むケースが多いが、日テレの登録選手はほとんどがいずれかの年代で代表のユニフォームに袖を通し、大舞台を踏んでいる。2年連続でリーグを制し、勝者のメンタリティを身につけているのだから、まだまだ伸びしろは大きい。有吉佐織の長期離脱は心配だが、それを差し引いても主役の座は譲れない。

INAC神戸・髙瀬
INAC神戸・髙瀬

皇后杯優勝チームのINAC神戸レオネッサが、対抗一番手ということになるだろうか。キャプテンの髙瀬愛実が「毎年口にしているのですが目標はリーグチャンピオン奪還」と日テレに宣戦布告する。リーグ通算出場試合数145に対し、得点はその過半数にあたる81得点を挙げている。昨季は、ややゴールが遠かったが、リーグカップ、皇后杯を含めて、髙瀬がゴールを挙げた試合は全勝。この大型ストライカーの復活は必須条件だ。

大野忍、鮫島彩、田中明日菜ら、ドイツ組のレジェンドに加えて、指揮官が育成してきた中堅、若手にメドが立ってきた。澤穂希の退団で空番になっていた背番号「8」を、入団3年目の杉田妃和が継承している。松田岳夫監督は「まだまだ彼女たちには『もっと上手くなりたい』という欲が足りない」と苦言を呈する。若手に主力の自覚が芽生えれば、日テレのように劇的な化学反応が起きても不思議はない。

ここ3年は、正念場で迎えた日テレ戦を落として、リーグタイトルを失ってきた。今季も、その直接対決の行方がリーグの行方を占うものになるだろう。福元美穂加入後、皇后杯優勝まで公式戦11連勝。上り調子で締めくくった昨季の流れを引き継げるか。

浦和・猶本
浦和・猶本

昨年のタイトルホルダー2チームを、他が追いかける構図だが、吉田靖前監督から石原孝尚監督へ指揮権が移った浦和レッズレディースが面白そうだ。石原監督は、2013シーズンに、リーグ2連覇中のINAC神戸レオネッサを引き継ぎ、そのまま“四冠”を達成した。自身は「選手の成長を最優先にしたシーズンに」と控えめなコメントだが、目の前の試合にはこだわるタイプの指揮官。そうでなければ、年間タイトルを全て獲る離れ業はできない。

退団した後藤三知に代わり、新しくキャプテンマークを巻くのは柴田華絵。九州トレセン以来の関係である猶本光と、プレスカンファレンス前に行われたトークショーにも出席した。「チーム一丸となって全力でリーグ優勝に向かう」と柴田。プレシーズンマッチの成績も好調に推移し「優勝した2014シーズンの時に雰囲気が似ている」(猶本光)という。もちろん、プレシーズンと公式戦は全くの別物だが、好スタートを切れれば、一発あってもおかしくない。

AC長野パルセイロレディースは、昇格初年度にまさかの優勝争いを繰り広げた。最大の武器は、オレンジに染められる南長野のスタンドだ。本田美登里監督からは「観客動員数で1位になったチームを、リーグとして表彰してもらいたい。そうすれば、ファン、サポーターも一層、サポートのやりがいが出てくるはず」との声も出た。

ポゼッション争いに慣れた他チームが面食らったのは、横山久美の攻撃力を最大限に活かした、タテに速いサッカーだ。ボランチの國澤志乃と両センターバック、GKで守る時間も長く、1試合平均約2点でよく抑えたと言えよう。今季は、さすがに他チームのマークも厳しくなってくるはず。「昨年は応援してくれるみなさんをハラハラドキドキさせましたが、今年はハラハラを少し減らしたい」(本田監督)。

オーストラリア女子代表の仙台・ケイリントン・フォード。2011年6月撮影。写真の女子ワールドカップ2011ドイツ ブラジル戦で16歳で代表デビュー。
マイナビに加入したケイリントン・フォード(オーストラリア女子代表)。2011年6月撮影。写真の女子ワールドカップ ドイツ 2011 ブラジル戦で16歳で代表デビュー。

地元で日テレにリーグ優勝を決められたマイナビベガルタ仙台レディースは、千葉泰伸監督が退任し、新たに越後和男監督が就任した。今季の戦術について問われた越後監督は「守秘義務もあるので」と核心をぼやかしたが「ロングボールが多かったので、少し下のボールをつなぐ準備をしてきた」とのこと。昨年よりも地上戦に力を入れている模様だ。

新キャプテンは田原のぞみ。川村優理が新潟Lに、高良亮子がスウェーデンに移籍した一方で、1.FC.ザーリュブリュッケンから入江未希が復帰した。最前線にはオーストラリアのケイリントン・フォード、ゴールマウスにはアメリカのブリトニー・キャメロンとふたりの外国人選手がいる。また日本人選手にも、高倉麻子監督就任後、なでしこジャパンに定着しつつある佐々木繭をはじめ、代表クラスは少なくない。世代交代を含めて、新監督がどのようにチームを作っていくか楽しみだ。

5年振りに新潟Lに復帰した川村。2012年12月撮影
5年振りに新潟Lに復帰した川村。2012年12月撮影

クラブの特性を「リーグ戦3位以内、皇后杯優勝」という目標であらわしたのが、アルビレックス新潟レディースの辛島啓珠監督だ。皇后杯では4回、決勝に進出しながら、リーグ戦では、毎年、序盤で苦戦を強いられ、その借金返済に追われる。これは練習場が雪に覆われ、ボールを使った練習が他チームより遅れる、地政学上の不利が大きい。18試合では、なかなか序盤のビハインドを跳ね返せないのだ。

今季、キャプテンを務める中村楓はアルガルベカップ帰り。「その不利も力に変えたい。広いグラウンドで練習できなかった代わりに、筋トレなどはしっかりできました」。ベテランの斎藤友里、ゲームメークを担当した山田頌子らが引退し、中盤の構成は変わった。今季も上尾野辺めぐみに頼るところは大きいが、新潟に帰ってきた川村優理、成長著しい八坂芽依ら、目に見えるプラス要素もある。前半戦を五分以上でこなしていければ(それが至難の業なのだが)、最後まで優勝戦線を賑わせてくれるだろう。

伊賀FC・杉田
伊賀FC・杉田

伊賀FCくノ一は、昨季途中から野田朱美監督が就任。得点力不足に悩んでいたチームを蘇らせて6位に滑り込んだ。今季のスタッフ陣には、岡山湯郷Belleなどで指揮を執った種田香織コーチが加わり、同時に湯郷ベルから大久保舞、作間琴莉、橋本祥子ら、高校女子サッカー選手権を賑わした若手も移ってきた。

昨季は、なでしこジャパン定着を狙う杉田亜未が、5ゴールでチーム内得点王になっている。経験のある櫨まどか、宮迫たまみ、大橋実生ら、新旧の選手が揃い、ディフェンス面では計算が立つ。今季の課題も「いかにして点を獲るか」。打ち合いにも耐えられる力がつけば、上位チームにも侮れない存在になるだろう。

ジェフユナイテッド市原千葉レディースは、昨季、リーグ戦では終盤まで残留争いに巻き込まれた。一方で、リーグカップではファイナルまで上がっており、代表GK・山根恵里奈も、「そこまで行けるのも、リーグ戦で苦しんでいるのも、自分たちの実力」と捉えている。競った試合をきちんと拾うことを目標に、今季は「年間10勝」がチームのテーマとなった。

そのためには、これまでの「よく走り、よく戦う」だけでは足りない。昨年を上回る攻撃力が不可欠で、菅澤優衣香が抜けた状況で、どう工夫してくるかが注目だ。こちらも主将がディフェンスリーダーの櫻本尚子から、大学を卒業した社会人1年生・上野紗稀に引き継がれている。

ノジマ・田中
ノジマ・田中

プレスカンファレンス閉会後、報道陣に「今年もよろしく!」と笑顔で声をかけていたのが、ノジマステラ神奈川相模原の菅野将晃監督だ。東京電力女子サッカー部マリーゼを率いていた名将が、休部を受けて新たに立ち上げたチームは、なでしこリーグに加盟後、初年度(2013年)から2部4位の好スタート。翌14年は、昇格戦線をリードしながら、終盤にひっくり返されて最終的には3位。

チームが変身を遂げたのは、一昨年の後半だ。ゲーム内容では上回りながら、勝負への執念でAC長野(優勝し、自動昇格)に大差をつけられた。「勝ち切っている相手と、勝てていない自分たちの力を真摯に受け止めなければいけない」。指揮官の決意に選手も応え、アウェーゴール差に阻まれた昇降格プレーオフでは「結果は出ませんでしたが、見る人に何かを感じてもらえるゲームはできたと思う」と熱い涙を流しながら、選手たちを称える指揮官の姿があった。そしてこれを糧に、昨季、14勝4分け無敗で念願の自動昇格を果たした。

プレスカンファレンス前のトークショーに浦和のふたりと共に出演した、高木ひかりと田中陽子は「監督は5位を目標に挙げていて、力量的にもそのあたりだとは思いますが、選手間の目標はあくまで優勝!」。サッカーのエッセンスは1部でも上位クラスにあり、2部で身につけた泥臭さが、さらに上のクラスでも発揮できれば、昨季の長野以上もありうる。

昇格組のもう1チームが、ちふれASエルフェン埼玉だ。一昨季、最下位で2部降格の憂き目にあったが、12勝1敗2分けでノジマに続く2位。昇格プレーオフでコノミヤスペランツァ大阪高槻を2連勝で降し、1年で1部に返り咲いた。就任1年目でノルマをクリアした元井淳監督は「2度とこのようなことがないように」と、1部残留を必須条件に掲げる。

キャプテンの中野里乃は、高校時代からサッカーへの意欲が旺盛な選手。ケガを乗り越え、昨季は、1部復帰への原動力となった。リーグでも屈指のスピードと運動量を誇る薊理絵が、攻撃にシフトできる時間帯を増やせれば、対戦相手もひるむはず。最良のチームバランスを見極めるためにも、初戦の日テレ戦が大切になってくる。


優勝、3位、5位、残留と、最終目標はそれぞれ異なるが、どのチームも目の前の試合に向けた闘志は変わらない。2年後の女子ワールドカップ・フランス大会、そして3年後の東京オリンピックを盛り上げるためにも、ファンやサポーターが見ていて楽しいゲームを、なでしこリーグのピッチで見せてもらいたい。

【なでしこ短信】皇后杯、INAC神戸が2連覇

優勝し皇后杯をかかげて喜ぶINAC神戸の選手たち
優勝し皇后杯をかかげて喜ぶINAC神戸の選手たち

金子悟=文・写真
 
 皇后杯は25日、千葉・フクダ電子アリーナで決勝が行われ、PK戦の末、INAC神戸が初優勝を狙った新潟を破り、2大会連続6度目の優勝を果たした。

後半、ドリブルで攻める新潟・大石(右)とマークするINAC神戸・甲斐。甲斐はこの試合を最後に引退し有終の美を飾った
後半、ドリブルで攻める新潟・大石(右)とマークするINAC神戸・甲斐。甲斐はこの試合を最後に引退し有終の美を飾った。

 前半、新潟がハイプレスをしかける。INAC神戸のパスミスを誘ってボールを奪うと、右サイドの佐伯、左サイドの八坂がペナルティエリアに切れ込んでシュートに持ち込むなどチャンスを作る。これに対し、INAC神戸はカウンターで応戦。中島のミドルシュートがクロスバーを叩き惜しいシーンを作るなど、前半は一進一退の攻防が続いた。

後半、ボールをキープするINAC神戸・杉田
後半、ボールをキープするINAC神戸・杉田

 後半、INAC神戸が動く。後半開始から、伊藤に代えて杉田を投入すると、「ボールの位置を高くできるよう修正した」(INAC神戸・松田監督)INAC神戸が攻勢に出る。これまで新潟に奪われていたセカンドボールを杉田が拾うようになると主導権はINAC神戸へ。そして、後半21分、INAC神戸は大野に代えて増矢を投入。松田監督は90分で勝負を決めにかかった。ところが、「ハードワーク、ひたむきさ、泥臭さがチームの特徴」(新潟・辛島監督)の新潟が体を張ってゴールを守ると、シュート10本を浴びながら無失点におさえ勝負は延長戦へ。

PK戦でシュートを止めるINAC神戸・武仲
PK戦でシュートを止めるINAC神戸・武仲

 延長戦に入っても両チームは決め手を欠き、無得点のまま迎えたPK戦。INAC神戸・武仲が、新潟の7人目のキッカーの渡辺のシュートを止めると、最後はINAC神戸・増矢が決めPK戦を5−4で制し、皇后杯2連覇を果たした。

【なでしこ短信】皇后杯、新潟とINAC神戸が決勝へ


試合後、サポーターにあいさつする新潟・八坂(左)と中村

金子悟=文・写真
 
 皇后杯は23日、準決勝2試合が行われ、今季3冠を狙う日テレに競り勝った新潟と、延長戦で仙台を突き放したINAC神戸が決勝に進んだ。


前半、左サイドをドリブルで突破する新潟・八坂(右)

 新潟は、動きの固い日テレに対し、左サイドの八坂のドリブル突破でチャンス作る。得点は奪えなかったものの、「前半を0−0で折り返せたのがこの試合のポイントだった」(新潟・辛島監督)ように、前半を無失点でおさえたことが、前回大会で新潟に敗れていた日テレに焦りを生んだ。


後半、競り合う新潟・中村(右)、日テレ・籾木(右から2人目)、新潟・阪口(左から2人目)

 日テレは後半、新潟の左サイドの攻撃に対応するため土光に代えて上辻を投入。しかし、日テレの対応策を尻目に、後半8分、新潟・八坂が右足で決め新潟が先制した。その後日テレは、トップにポジションを上げた阪口へボールを集め反撃を試みたものの、逆に中盤のスペースが空いてしまったことでボールを失い終始主導権を握ることができず、0−1で新潟に敗れた。


延長前半、競り合う仙台・川村(左)とINAC神戸・増矢(中央)

 INAC神戸と対戦した仙台は、15分にINAC神戸・道上に先制点を許すと21分にDF市瀬が負傷退場。このアクシデントで、ボランチの川村が1列下がり最終ラインに入る。川村が最終ラインに入ったことで仙台の守備は安定したが、これまで担っていた攻撃の指揮を執ることができず、ボールを前に運べず守勢に回る。しかし後半39分、その川村がコーナーキックから頭で決めて同点に。試合を振り出しに戻した。


前半、先制点を決めるINAC神戸・道上(中央)

 延長に入り、同点に追いついて勢いを増し攻勢を強めた仙台だったが、延長前半12分と同後半3分に、途中出場のINAC神戸・京川にゴールを奪われる。これまで守勢に回ってきたことで足が止まってしまった仙台に反撃の余力はなく、1−3でINAC神戸に敗れた。


延長後半、チーム3点目のゴールを決めて喜ぶINAC神戸・京川(右から2人目)

 前回大会と同じチーム同士の対戦となった新潟とINAC神戸の決勝は25日、千葉・フクダ電子アリーナで行われる。

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